狡猾な詐欺師は笑って人助けをする
初めての投稿で小説を書いたのも久しぶりです。つたない文章ですが寛容に見ていただければ幸いです。
私は今、絶望のふちにいる……。
もう、だめだ。
何もかも終わってしまった。
会社はつぶれ、借金を抱え妻とは離婚。
私は一体どうしたらいいというのだ。
私はふと足元を見た。そこには、ロープが乱雑におかれていた。
「これを使い私に自殺をしろとでもいっているのか……。当然の報いかもしれないな」
私がロープを拾おうと腰をかがめた時、声がかけられた。
「もしもし、お困りのようですね。私が力になってあげましょうか?」
声のしたほうを見てみると20代前半ぐらいに見える一人の青年が立っていた。
何なんだこの男は。私の何が分かるというのか。
「いや困ってなどいないよ。親切にどうも」
私はこんな男にかかわってなどいたくなかった。早くこの状態から逃げたかった。
そして、一刻も早くこの世界とはわかれを告げたかった。
「そうですか」
男は少し残念そうに肩をすくめこの場を立ち去ろうとした。
さて、私も死に場所を探すとするか……。
「じゃあ、ごきげんよう。○×企業の元社長で元詐欺師のおじいさん」
「まてっ」
私が詐欺師だと。そんなことはない。といえるほど私の過去は胸を張れるようなものではなかった。
確かにこの青年の言うとおり私は過去に何度か詐欺をやっている。
しかし、なぜこの青年がそのことを知っているのだろうか。
「本当に困っていないのですか?今なら僕があなたを助けてあげましょう」
何を言っているんだこの青年は。
しかし、私はもうすぐ死ぬんだ。死ぬ前に多少何かがあたって何も変わらないだろう。
私はそう思いこの青年の戯言に付き合うことにした。
「そうか、君が私を助けてくれると。で、具体的にはどうしてくれるんだ」
「はい、まずこの契約書にサインをしてください。僕もボランティアではないのです。これは商売です」
そう言うと青年は紙を取り出し私に手渡した。
「ほう、商売と。で、君の商売はどういったものなのかな?」
私は青年の言う商売とやらが気になりたずねてみた。いや、好奇心とは恐ろしい。死を覚悟したものでさえとりこにしてしまうのだから。
「実は僕の商売は人に言えるような物ではないのですよ。まあ、お客様には話さなければいけないのですが。とりあえず契約書にサインをいただけますか、まずはそこからです」
そういうと青年は万年筆を手渡した。
私は契約書にサインをした。
それを見た青年はまた自分の商売とやらを話し始めた。
「これであなたは正式に僕と契約なされました。では、商売の話としましょう。あなたは詐欺にあったんでしょう。そこで僕が詐欺師となりとられたお金の分だけ取ってきましょう。もちろん手数料をいただきます。そうですね今回は、5割いただきます。それでは10日後ここに今と同じ時刻に会いましょう」
青年はそう言うと足早に立ち去ってしまった。
10日だと私はそこまで待つな気は無かった。
しかし、私は10日後の今ここにいる。
それは、あの青年が私の携帯に電話をれてくれたからかも知れない。
あの商売の話も多かったが世間話や私を励ましてくれた。
私は息子ができたようでうれしかった。
「どうも、こんにちは。あなたの口座に半分振り込んでおきました。それでは、さようなら。あ、そうだちなみにこのお金は河合運輸から盗った物ですよ」
私はこれからどうしたら良いのだろうか。
私も静かに歩き出した。
今回の仕事は楽だったな。
僕はゆっくりと歩き出したその先には一人の老人が立っていた。
「こんにちは、お困りのようですね。河合運輸の元社長さん」
僕はそこらの詐欺師とは違う。
人助けをしつつお金を稼ぐ狡猾な詐欺師だ。
最後まで読んでいただきありがとうございました。よろしければ感想をいただければ幸いです。