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プロローグ 『一色薫は選べない』
『富・名声・力。 この中のどれか一つを君に与えると言ったら、君は何を望む?』
目の前の俺と同じ顔をしたそいつはそう言って、幼い俺に問うてきた。
不思議な夢だ。いつの記憶だ? まるで思い出せない。
『どれもが誰もが欲するものだ。ヒーローにだってなれるだろう。さて、君はどれが欲しい?』
真っ白な服を着たそいつは、試すように問いかける。
その黒髪の男に、幼い俺は少しも迷うことなく答えた。
『なにもいらない。じぶんの力じゃなきゃ意味がない!』
そいつの目を真っすぐ見つめ返しながら――
『おれはいつか強くなって、優しくてカッコいい、本物のヒーローになるんだ!』
この選択がいずれ大きな悲しみを生むとも知らずに、希望に満ちた目をした少年は言い放った。




