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流星の声  作者: 遠藤 敦子
流星の声 Ⅲ
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2

 それから顔を合わせて会話を重ねるたび、大地は次第に空に惹かれていることに気づく。大地は21歳の時に女子大に通う恋人と別れて以来恋愛からは遠ざかっていたけれど、当時の彼女に一目惚れした時の感覚を思い出した。空に彼氏や好きな人がいるかどうかということや、空本人のことをもっと知りたいという気持ちを大地は抱いていたのだ。同期のグループLINEがあるので空の連絡先は知っていても、自分から連絡する勇気はなかった。


 金曜日、空が珍しく定時で帰っている。大地は残業していたけれど、空に

「お疲れ様。大江さんが定時で帰るなんて珍しいな」

 と声をかけた。すると空は大地に

「彼氏が仕事終わりにご飯行こうって言ってくれて、夜ご飯食べに行くの」

 と幸せそうな声音で言う。彼氏、いたんだ……ーー。大地はショックで頭が真っ白になる。だが空本人に悟られないよう

「そうか。楽しんできてな」

 と平常心を装った。数分後、トイレから帰ってきた杉本チーフが大地と光司に

「お疲れ。こっちは立花、こっちは松浦のね」

 と飲み物を買ってきてくれる。光司にはペットボトルのコーヒー、大地にはペットボトルの麦茶が渡された。杉本チーフがみんなに飲み物を買ってきてくれるのはよくあることだけれど、今日の麦茶は大地にとって励ましてくれるような味がする。空本人にはいつも通り接するつもりではあるが、彼氏がいるのであればもう諦めようと大地は考えた。



「松浦くん突然ごめん。私、彼氏と別れた」

 2ヶ月後、大地の元に空からLINEが来る。話を聞くと空は彼氏に振られた側だそうで、「お前のこともう好きじゃなくなった」と言われたそうだ。きっと私に飽きたか、他に好きな人できたんだと思う。空はそう言っていた。

「じゃあひまわり見に行こうよ」

 大地は空を元気づけるつもりで誘う。みんなで、とも、俺と一緒に、とも言わなかった。どちらで捉えるかは空次第だと思っていたからだ。

「いま予定わからないしまた言うね」

 空からはそのように返ってくる。土日祝休みで予定がわからないとは? 大地の頭にはハテナマークが浮かぶ。なんとなく脈なしかなと大地は悟った。


「私10月で会社辞めるんだ」

 とある9月の夕方に、空からLINEが来る。公園のベンチで、クレーム対応に嫌気がさしたのだろうかと大地は考えた。空はもう杉本チーフに退職したいと伝えてあるそう。大地は本当に空がいなくなってしまうのだと、寂しい気持ちになる。

 その時猫がベンチに飛び乗り、大地の隣に座って擦り寄った。元気がない大地の様子を見て励まそうとしてくれたのだろう。大地はそんな猫の気持ちを汲み取り、嬉しくなって猫の頭を撫でた。

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