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流星の声  作者: 遠藤 敦子
流星の声 Ⅲ
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 4月1日。新年度がやってきた。大阪市内では桜が満開となり、いたるところに咲き誇っている。3月に大学を卒業し、松浦(まつうら)大地(だいち)は今月から社会人になる。そんな大地はマンション管理会社のハーモニーハウジングに入社することが決まっている。

 入社式を経て研修があり、それから各部署に配属されるそうだ。同期はどんな人か。上司や先輩はどんな人か。研修後はどの部署に配属されるか。大地は期待と不安で胸を躍らせながら入社式を迎えた。新卒で入社した男性は大地と勝野(かつの)佑哉(ゆうや)竹村(たけむら)稜生(りょうせい)の3名、女性は大江(おおえ)(そら)川崎(かわさき)凪沙(なぎさ)小川(おがわ)琴音(ことね)の3名だ。


 2週間の研修を経て、それぞれの配属先が決まった。佑哉と凪沙は賃貸営業、琴音は解約精算、稜生は共用部管理、大地と空は室内修繕管理の部署に配属されることになる。大地と空が配属された部署ではお客様から室内修繕に関する相談を受け、工事業者と連携をとりながら進捗管理も行うが、電話越しに怒鳴られることも多々ある。ある日大地がとった電話で、年配の男性が

「エアコンの修理をしてもらえるって話になってたのにあれから何にも連絡ないんだけど。担当の男の人じゃ話にならないから上の人と変わってもらえる?」

 と理詰めするような口調で言ってきた。あいにくその上司は外出中なのでまた折り返す旨を大地が伝えると、男性は

「ふーん、必ず今日中に折り返すように言っといて。ところで、お兄さん名前なんて言うの?」

 と返す。

「わたくし、松浦と申します」

 大地の返答に男性は

「松浦さんね。名前覚えたわ。何かあったら松浦さんがこう言ってたって電話で言うから」

 と捨て台詞のような言葉を吐き、電話を切った。


「……大丈夫だった? さっきの人、10分以上喋ってたみたいだけど」

 斜め前の席にいる空が大地に声をかける。

「さっきのオッサンまじでだるかった。名前聞いてきて『松浦さんね。名前覚えたわ』とか言ってきたし」

 大地は思わず本音を漏らした。直属の上司である杉本(すぎもと)チーフこと杉本(すぎもと)常雄(つねお)と大地の教育係である3年目の正社員の立花(たちばな)光司(こうじ)がタバコ休憩で席を外しているのをいいことに、大地と空は雑談に興じていたのだ。大地は空が自分の気持ちをわかってくれたような気がして嬉しく思った。

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