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2章4話 太陽の女神様は厳しいお姉さん


翌朝、ケペトは鳥のさえずりよりも早く目を覚ました。窓から差し込む朝日がいつもより明るく、力強く感じられる。


「わあ…今日の太陽、とてもきれい♪」

左手首の蓮の痣が、朝日に反応してほんのりと温かくなっている。昨日ラー様とイシス様に会ったことは夢のようだったが、この温かさが現実だったことを教えてくれていた。


身支度を済ませて神殿の清掃を始めると、いつもより花々が生き生きと咲いている。動物たちも元気いっぱいで、白い猫は嬉しそうにケペトの周りを駆け回っていた。


「みんな元気ね♪ やっぱり昨日のことは本当だったんだ」

朝の祈りを捧げながら、ケペトは心の中でラー様とイシス様に感謝した。すると、どこからともなく温かい風が吹いてきて、まるで返事をしてくれているようだった。


アケトとの朝食

「おはよう、ケペト。今日もええ天気やな」

アケトが朝食を準備しながら声をかけてきた。テーブルには焼きたてのパンと果物、そして香り高いハーブティーが並んでいる。


「おはようございます!本当に気持ちのいい朝ですね♪」


「そうやな。なんか昨日から、世界全体が明るくなったみたい。ケペトも嬉しそうやし」

アケトの観察眼に、ケペトは少しドキッとした。まさか神様たちとの出会いがバレているわけではないだろうが…


「えへへ、良いことがありそうな予感がするんです♪」


「そうか。ケペトがそう言うときは、たいてい本当にええことが起こるからなあ」

二人で朝食を食べながら、ケペトは今日の予定を確認した。午前中は神殿の業務、午後は街の子どもたちに歌を教える予定になっている。


「そういえば、昨日イシス神殿の方で変わったことはなかった?」

アケトの質問に、ケペトは慌てそうになった。


「え、えっと…特に変わったことは…」


「いや、なんかイシス神殿の花がすごく美しく咲いてるって、他の神官さんが言ってたんよ。それに、街の人たちも元気になったみたいやし」


「そ、そうなんですか?」

ケペトは胸をドキドキさせながら、曖昧に答えた。まだ神様たちとの出会いを話すのは早いような気がしていた。


午前の神殿業務

朝食後、ケペトは神殿の日常業務に取りかかった。お供え物の準備、花の水替え、参拝者の案内など、やることはたくさんある。

でも今日は、すべての作業がとても楽しく感じられた。花々は美しく、参拝者の人たちも笑顔で、神殿全体に穏やかな空気が流れている。


「ケペトちゃん、おはよう♪」

神殿にやってきたのは、昨日会った街の少女、リナだった。お母さんと一緒に参拝に来ている。


「リナちゃん、おはよう♪ 今日も元気ね」


「うん!なんだか今日はとっても気持ちがいいの。お花もきれいだし、お日様も暖かいし♪」

リナの言葉に、ケペトは嬉しくなった。きっとラー様とイシス様の力が、みんなを幸せにしてくれているんだろう。


「そうね。きっと神様たちが見守ってくれてるのよ」


「神様って、本当にいるの?」

リナの純粋な質問に、ケペトは微笑んだ。


「もちろんよ。いつも私たちのそばにいて、優しく見守ってくれてるの」


「会ってみたいなあ」


「きっといつか会えるわよ。心の優しい子には、神様も会いたくなるものだから」

リナは嬉しそうに笑って、お母さんと一緒に神殿の奥へ向かっていった。


正午の太陽と特別な呼び声

正午が近づくにつれて、太陽の光がどんどん強くなっていく。でも昨日と違って、暑すぎず、優しい温かさだった。

ケペトが神殿の中庭で花の世話をしていると、左手首の痣が急に温かくなった。


「あれ?」

見上げると、太陽の光の中に美しい人影が見えた。金色に輝く髪、威厳ある立ち姿…間違いなくラー様だった。


「ケペト」

心の中に、ラーの声が響いてきた。


「ラー様?」


「今日は特別な日よ。あなたに、私の神殿で修行をしてもらいたいの」


「修行…ですか?」


「そう。あなたの力をもっと上手に使えるようになってもらうために」

ケペトの胸がドキドキしてきた。神様の修行なんて、一体どんなものなんだろう。


「でも、私なんかで大丈夫でしょうか…」


「大丈夫よ。私が責任を持って教えてあげる。それに、イシスも一緒よ」

太陽の光の中に、もう一つの人影が現れた。青と白のドレスをまとったイシス様だった。


「ケペトちゃん、一緒に頑張りましょう♪」

イシスの優しい声に、ケペトの不安が和らいだ。


ラー神殿への招待

「それでは、私の神殿にいらっしゃい」

ラーがそう言うと、ケペトの周りが眩しい光に包まれた。目を閉じて、次に目を開けると…


「わあ…!」

そこは、見たことのない美しい神殿だった。金色に輝く壁、天井には太陽の絵が描かれ、床は虹色のタイルで敷き詰められている。まるで太陽の中にいるような、温かくて明るい空間だった。


「ここが私の神殿よ。どう?」


「とても美しいです!まるで宝石箱の中にいるみたい♪」

ケペトの素直な感想に、ラーは嬉しそうに微笑んだ。


「ありがとう。この神殿は、私の心を映したものなの。明るく、温かく、希望に満ちた場所」


「ラー様の心って、とても美しいんですね」


「でも、時々迷うこともあるのよ。完璧でなければならないって思いすぎて、一人で抱え込んでしまうことも」

ラーの表情が少し曇った。


「昨日のイシスとの件も、私が一人で判断しようとしたから起きてしまったこと」


「でも、最後はちゃんと仲直りできましたよね♪」


「それは、あなたがいてくれたおかげよ」

ラーは優しくケペトの手を取った。


「あなたには、人の心を繋げる不思議な力があるわ」


最初の修行:光を感じる

「さて、まずは基本的な修行から始めましょう」

ラーはケペトを神殿の中央に案内した。そこには美しい祭壇があり、永遠の炎が燃えている。


「太陽の力の源は『光』よ。まずは、光を感じることから始めましょう」


「光を…感じる?」

「そう。目を閉じて、心を落ち着けて。そして、周りにある光を感じてみて」

ケペトは言われた通りに目を閉じた。最初は何も感じられなかったが、だんだん温かいものが体を包んでいるのがわかってきた。


「暖かい…」


「いいわね。その温かさが、光の力よ」


「不思議です。目を閉じているのに、明るい感じがします」


「それが大切なの。光は目で見るものだけじゃない。心で感じるものでもあるのよ」

しばらく続けていると、ケペトの左手首の痣がほんのりと光り始めた。


「あら…」

ラーが驚いたような声を上げた。


「どうしたんですか?」

目を開けたケペトは、自分の手首が光っているのを見て驚いた。


「すごいわ。もうあなたの中で光の力が反応している」


イシスの到着とサポート

「あら、もう始まってるのね♪」

美しい声と共に、イシスが神殿に現れた。手には美味しそうなお弁当とお茶の用意を持っている。


「イシス様♪」


「お疲れさま、ケペトちゃん。少し休憩しましょう」

イシスが用意してくれたお弁当は、見た目も美しく、とても美味しかった。魔法でできているのか、食べると体の疲れがすっと取れる。


「美味しい〜♪ イシス様のお料理は本当にすごいです」


「ありがとう。愛情をたっぷり込めて作ったのよ♪」


「イシス、いつもありがとう」

ラーも感謝の気持ちを込めて言った。


「どういたしまして。お互い様よ♪」

三人でお茶を飲みながら、ケペトは改めて神様たちの優しさを感じていた。


修行の続き:心の光

「さて、次の修行に移りましょう」

休憩が終わると、ラーは立ち上がった。


「今度は、あなたの心の光を感じてみて」


「心の光?」


「そう。人はみんな、心の中に光を持っているの。あなたの光は特に美しいから、きっとすぐにわかるはず」

ケペトは再び目を閉じて、今度は自分の心に意識を向けた。

すると、胸の奥から温かいものが湧き上がってくるのを感じた。それは、アケトさんや街の人たち、そして昨日出会ったアケムさんへの愛情だった。


「みんなが幸せでいてほしいって思う気持ち…これが私の光ですか?」


「その通りよ。愛情こそが、最も美しい光なの」

ラーの声に、ケペトの心がさらに温かくなった。


「でも、時々不安になることもあります。私なんかで、本当にみんなを幸せにできるのかなって」


「それは当然の気持ちよ。私だって、時々不安になるもの」

ラーが優しく答えた。


「大切なのは、完璧を目指すことじゃない。心を込めて、精一杯やることよ」


初めての光の共鳴

「それじゃあ、試してみましょう」

ラーは祭壇の前に立った。


「私の光と、あなたの光を合わせてみるの。きっと素晴らしいことが起こるわ」


「でも、やり方が…」


「難しく考えなくて大丈夫。ただ、私のことを思いながら、あなたの優しい気持ちを向けてくれればいいの」

ケペトは深呼吸して、心を落ち着けた。そして、ラー様への感謝の気持ちと、世界への愛情を込めて、手を差し出した。


すると、ラーの手から美しい金色の光が現れ、ケペトの手からは虹色の光が現れた。二つの光がゆっくりと近づいて、触れ合うと…


「きれい…!」

神殿全体が、今まで見たことのない美しい光に包まれた。金色と虹色が混じり合って、まるで宝石のようにキラキラと輝いている。


「素晴らしいわ、ケペト!」

ラーが感動で目を潤ませていた。


「私一人の光では、こんな美しい光は作れなかった。あなたがいてくれたから」


「私も…ラー様がいなかったら、こんなことできませんでした」

二人の光が作り出したその美しさに、イシスも感動していた。


「本当に美しい…これが調和の力なのね」


修行の成果と新たな理解

光が静まると、神殿の中がとても穏やかな雰囲気に包まれた。今まで以上に温かく、優しい空間になっている。


「ケペト、あなたの力は本物よ」

ラーが確信を込めて言った。


「私たち神々の力を調和させるだけじゃない。力そのものを美しくしてくれる」


「そんな…私は何も特別なことはしてないです」


「それが素晴らしいのよ。自然に、心から人を思いやる気持ち。それが最も強い力なの」

イシスも頷いて言った。


「私たちが学ぶべきことも多いわね。完璧を目指すより、心を込めることの大切さを」


「イシス…」

ラーが少し恥ずかしそうに微笑んだ。


「私、今まで一人で完璧にやろうとしすぎていたわ。でも本当は、みんなで協力する方がずっと素晴らしいのね」


人間世界への帰還予告

「そろそろ、人間の世界に戻る時間ね」

ラーが空を見上げて言った。太陽の位置から、午後の時間が近づいているのがわかる。


「え、もうそんな時間ですか?」

ケペトは少し寂しそうな表情を見せた。神様たちとの時間は、とても楽しかったからだ。


「大丈夫よ。また会えるから」


「今度は、他の神々たちも紹介するわね♪」

イシスが楽しそうに言った。


「ハトホルは、きっとあなたを気に入ると思うわ。同じくらい明るくて可愛いから」


「楽しみです♪」


「でも、今日学んだことを忘れないでね」

ラーが真剣な表情で言った。


「あなたの力は、あなたの優しい心から生まれている。その心を大切にして」


「はい、わかりました!」

ケペトは元気よく答えた。


神殿がまた眩しい光に包まれて、気がつくとケペトは元の神殿の中庭に戻っていた。でも、左手首の痣は今まで以上に温かく、心の中にはラー様とイシス様の言葉がしっかりと刻まれていた。

空を見上げると、太陽が優しく微笑みかけているような気がした。



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