8章23話 ホシの初挑戦
翌朝、ホシは緊張で早起きしてしまった。
「おはようございます」
神殿の中庭で星空を見上げている。
「あら、ホシ君。早いのね」
イシスが洗濯物を干しながら声をかける。
「はい。今日の心の調和会のことを考えてたら、眠れなくて」
「緊張してるの?」
「とても」
ホシが苦笑いする。
「みんなの前で話すなんて、初めてで」
「大丈夫よ」
イシスが励ます。
「あなたの星の話、きっとみんな喜ぶわ」
その時、愛の精霊が現れた。
「ホシさん、おはようございます」
「おはよう、愛の精霊」
「今日は頑張ってくださいね。私も応援してます」
「ありがとう。でも、何を話せばいいか分からなくて」
「星のことなら、何でも知ってるじゃない」
イシスが言う。
「それが問題なんです」
ホシが困った顔をする。
「知りすぎてて、何から話せばいいか…」
朝食での相談
朝食時、みんながホシの相談に乗ってくれることになった。
「簡単な話から始めたらどう?」
ハトホルが提案する。
「簡単な話?」
「そうよ。難しい星座の説明じゃなくて、星にまつわる楽しい話とか」
「楽しい話…」
ホシが考え込む。
「星の世界にも面白い話はあるんですか?」
ケペトが興味深そうに聞く。
「あります。でも、人間の皆さんに分かってもらえるかどうか」
「分からなかったら聞けばいいのよ」
ネフティスが言う。
「そうそう」
セトが同意する。
「完璧に話そうとしないで、会話を楽しめばいいんだ」
「会話を楽しむ…」
「そうだ」
アポピスが頷く。
「俺も最初、人間と話すのは緊張したが、慣れてしまえば楽しいものだ」
「アポピス様でも緊張したんですか?」
「もちろんだ。『混沌の神』なんて言われて、どう話しかけていいか分からなかった」
みんなが笑う。
「でも今は、すっかり打ち解けてますね」
ケペトが微笑む。
「それはみんなが温かく迎えてくれたからだ」アポピスが照れる。
練習開始
「それじゃあ、練習してみましょう」
ラーが提案する。
「練習?」
「ええ。まず私たちを相手に話してみて」
「でも、皆さんはもう星のことをご存知で…」
「知らないふりをするわ」
イシスが笑う。
「『星って何ですか?』から始めましょう」
こうして、神殿の中庭で星の話の練習が始まった。
「えーっと」
ホシが立ち上がる。
「星は…星は…」
「リラックスして」
ハトホルが励ます。
「深呼吸して」
ホシが深呼吸する。
「星は、夜空に輝く光です」
「もう少し具体的に」
ネフティスがアドバイスする。
「どんな光なの?」
「あの…とても美しくて、温かい光です」
「温かいの?」
セトが興味を示す。
「はい。星の光には、愛情が込められているんです」
「愛情?」
ケペトが身を乗り出す。
「はい。星は、見上げる人を幸せにしたいと思って光ってるんです」
「素敵ですね」
ホシの表情が少しずつ自然になってきた。
星の家族の話
「星にも家族があるんですか?」
愛の精霊が質問する。
「あります」
ホシが嬉しそうに答える。
「星座は、星の家族なんです」
「家族?」
「はい。北斗七星は七人の兄弟星、カシオペア座は美しいお母さん星と子供たちの星座です」
「それぞれに個性があるの?」
ハトホルが聞く。
「もちろんです。お兄さん星は責任感が強くて、妹星は好奇心旺盛で」
「まるで人間みたいですね」
アケムが感心する。
「そうなんです」
ホシが興奮してくる。
「星も人間も、基本的には同じなんです」
「同じ?」
「愛し合って、支え合って、時には喧嘩もして」
みんなが興味深そうに聞いている。
「星も喧嘩するんですか?」
ケペトが笑いながら聞く。
「します」
ホシが真剣に答える。
「流れ星は、実は星同士の喧嘩なんです」
「え?」
「喧嘩した星が、怒って空を飛び回ってるんです」
流れ星の真実
「でも、流れ星って願いを叶えてくれるって言うじゃない」
ハトホルが指摘する。
「それが面白いところなんです」
ホシが笑う。
「怒って飛び回ってる星を見て、人間が『綺麗』って言うでしょう?」
「はい」
「それを聞いた星は、急に恥ずかしくなって、喧嘩をやめちゃうんです」
「恥ずかしくなる?」
「はい。『怒ってる姿を見られた』って」
「可愛いですね」
ケペトが微笑む。
「で、恥ずかしくなった星は、お詫びに願いを叶えてくれるんです」
「そうだったんですか」
「だから、流れ星に願い事をすると叶うんです」
みんなが感心している。
「ホシ君、もうすっかりリラックスしてるじゃない」
イシスが指摘する。
「あ、本当だ」
ホシが驚く。
「いつの間にか、緊張がなくなってました」
「話してる内容が楽しいからよ」
ネフティスが言う。
「自分の好きなことを話してると、自然になるものよ」
準備完了
「それじゃあ、もう準備はできたわね」
ラーが満足そうに言う。
「でも、今日来る人たちは初めての方もいるから、少し緊張するかも」
セトが心配する。
「大丈夫」
愛の精霊が励ます。
「私がホシさんの周りを飛び回って、緊張をほぐしてあげます」
「ありがとう」
「それに」
アポピスが付け加える。
「俺たちもついてる。何かあったら助けるからな」
「皆さん、ありがとうございます」
ホシが深々と頭を下げる。
「頑張ります」
心の調和会開始
午後、王宮の庭園に人々が集まってきた。
「今日はホシさんの星の話があるって聞いたんですが」
ミラが楽しそうに言う。
「はい」
ケペトが答える。
「とても面白い話が聞けると思います」
「楽しみです」
ネベト王女も来ていた。
「ホシさん、初めてですよね?」
「はい。緊張してます」
ホシが正直に答える。
「大丈夫ですよ」ネ
ベトが微笑む。
「私たちはとても優しい聞き手ですから」
参加者が全員揃ったところで、ケペトが司会を始めた。
「それでは、今日はホシさんに星のお話をしていただきます」
「よろしくお願いします」
みんなが拍手する。
ホシが前に出る。最初は少し震えていたが、愛の精霊が周りを飛び回ると、だんだん落ち着いてきた。
星の話開始
「皆さん、こんにちは」
ホシが挨拶する。
「こんにちは」
みんなが答える。
「今日は、星のお話をさせていただきます」
「星は、皆さんが思っているより、ずっと身近な存在なんです」
「身近?」
一人の男性が聞く。
「はい。実は、星は皆さんのことをよく見ているんです」
「見てる?」
「そうです。夜空から、『今日も一日お疲れ様』って言ってるんです」
参加者たちが興味深そうに聞いている。
「でも、星の声は聞こえませんよね?」
女性が質問する。
「聞こえませんが、感じることはできます」
ホシが答える。
「星空を見上げて、ほっとした気持ちになったことはありませんか?」
「あります」
何人かが答える。
「それが、星からのメッセージなんです」
星座の家族の話
「星座は星の家族だって聞いたんですが」
ミラが質問する。
「はい」
ホシが嬉しそうに答える。
「例えば、北斗七星は七人の兄弟です」
「兄弟?」
「はい。一番端の星がお兄さんで、真ん中の星が末っ子です」
「性格も違うんですか?」
「もちろんです。お兄さん星は真面目で、末っ子星はいたずら好きです」
子供たちが喜んで聞いている。
「いたずら好きって、どんないたずらをするんですか?」
一人の子供が質問する。
「時々、明るさを変えて人間を驚かせるんです」
「え?」
「『あれ?あの星、昨日より明るくない?』って思ったことありませんか?」
「あります」
何人かが答える。
「それが末っ子星のいたずらです」
みんなが笑った。
流れ星の話
「流れ星についても教えてください」
ネベト王女が質問する。
「流れ星は、実は星同士の喧嘩なんです」
「喧嘩?」
みんなが驚く。
ホシが朝の練習通りに、流れ星の話を始める。
怒って飛び回る星、それを見て「綺麗」と言う人間、恥ずかしくなってお詫びに願いを叶える星。
「そうだったんですか」
「だから、流れ星を見つけたら、まず『綺麗ですね』って声をかけてあげてください」
「声をかける?」
「はい。そうすると、星もきっと喜びます」
「今度やってみます」子供たちが目を輝かせる。
質問タイム
「星にも感情があるんですね」
一人の老人が感心する。
「はい。星も人間と同じで、嬉しい時もあれば悲しい時もあります」
「悲しい時はどうなるんですか?」
「光が弱くなります。でも」
ホシが優しく続ける。
「そんな時は、みんなで励ましてあげるんです」
「みんなで?」
「他の星たちが、周りで明るく光って励ますんです」
「素敵ですね」
「星の世界も、愛と友情で成り立ってるんです」
ケペトが感動している。ホシの話は、まさに愛と調和の物語だった。
星と音楽
「星と音楽に関係はありますか?」
ハトホルが質問する。
「あります」
ホシが嬉しそうに答える。
「実は、星は歌を歌ってるんです」
「歌?」
「はい。とても美しい歌を」
「聞こえないんですか?」
「人間の耳には聞こえませんが、心で聞くことができます」
「心で?」
「静かな夜に、星空を見上げて、心を空っぽにしてみてください」
「そうすると?」
「微かに聞こえてきます。星たちの子守唄が」
ハトホルが興奮する。
「今度、星の歌に合わせて演奏してみたいです」
「きっと素晴らしい音楽になりますよ」
ホシが微笑む。
成功への道筋
話が進むにつれて、ホシはどんどん自信を持ってきた。
参加者たちも熱心に聞いていて、質問もたくさん出る。
「星にも恋愛はあるんですか?」
若い女性が恥ずかしそうに聞く。
「もちろんあります」ホシが笑顔で答える。
「二つの星が近くで光ってるのを見たことありませんか?」
「あります」
「それは恋人同士の星です」
「まあ」
女性たちが喜ぶ。
「でも、星の恋愛は永遠なんです」
「永遠?」
「はい。何億年も一緒に光り続けます」
「羨ましいですね」
「でも、人間の恋愛も素晴らしいですよ」
ホシが言う。
「短い時間だからこそ、一瞬一瞬が輝いているんです」
調和会の締めくくり
「それでは、最後に皆さんで星に向かって挨拶をしてみませんか?」
ホシが提案する。
「挨拶?」
「はい。『いつも見守ってくれてありがとう』って」
まだ明るい昼間だったが、みんなで空に向かって手を振った。
「ありがとう」
「いつも見てくれて」
「今夜もよろしくお願いします」
すると、不思議なことが起こった。
昼間なのに、一瞬だけ星がまたたいたように見えた。
「あ」
何人かが気づく。
「星が光った?」
「昼間なのに?」
ホシが嬉しそうに微笑む。
「星たちも喜んでくれてるみたいです」
大成功
調和会が終わると、参加者たちがホシの周りに集まってきた。
「とても面白い話でした」
「星を見る目が変わりました」
「今夜は星空をじっくり見てみます」
「また星の話を聞かせてください」
ホシは感動していた。
「ありがとうございます。皆さんに喜んでもらえて嬉しいです」
「ホシさん、すごく上手でしたよ」
ミラが褒める。
「緊張してるって言ってたのに」
「途中から楽しくなっちゃいました」
ホシが笑う。
「皆さんが真剣に聞いてくださるので」
仲間たちの感想
神殿に戻る道で、仲間たちがホシを褒めちぎった。
「素晴らしかったわ」
イシスが言う。
「星の話、こんなに面白いものだったのね」
「俺も知らないことばかりだった」
セトが感心する。
「流れ星が喧嘩だったなんて」
「でも一番良かったのは」
ケペトが微笑む。
「ホシ君が楽しそうに話してたことです」
「楽しかったです」
ホシが答える。
「最初は緊張したけど、みんなが興味を持ってくれるので」
「それが一番大切なのよ」
ハトホルが言う。
「自分が楽しいと、聞いてる人も楽しくなる」
「そうですね」
「今度は星座料理の話もしてみたら?」
ネフティスが提案する。
「今日の成功で、自信もついたでしょう?」
「はい」
ホシが頷く。
「今度は、もっと色々な話をしてみたいです」
夜の星空観察
その夜、みんなで屋上に上がって星空を見た。
「今夜の星、いつもより明るく見えませんか?」
ケペトが言う。
「本当ね」
イシスが同意する。
「ホシの話を聞いた後だと、星が生きてるように見える」
「そうでしょう?」
ホシが嬉しそうに言う。
「星たちも、今日の調和会を見ていてくれたんです」
「見てた?」
「はい。人間の皆さんが星に興味を持ってくれて、とても喜んでます」
確かに、夜空の星は特別に美しく見えた。
「あ、流れ星」
愛の精霊が指差す。
一筋の流れ星が空を横切った。
「今のは喧嘩かな?」
セトが笑いながら聞く。
「いえ」
ホシが微笑む。
「今のは『ありがとう』のメッセージです」
「ありがとう?」
「星たちからの、今日の調和会へのお礼です」
みんなが感動した。
「素敵ですね」
ケペトが呟く。
「星と人間も、心で繋がってるんですね」
こうして、ホシの初挑戦は大成功に終わった。
そして、新しい仲間の活躍を見て、みんなの絆もさらに深まったのだった。




