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8章22話 神殿の大騒動


星空の復活から一週間。ホシが仲間に加わって、神殿の生活はより賑やかになっていた。


「ホシ君、それ逆よ」

ネフティスが朝食の準備を手伝うホシに声をかける。


「え?どっちが逆ですか?」


「お皿の向き。模様が上になるように置くの」


「こうですか?」


「そう、それで正解」

ホシは真剣な顔でお皿を並べ直している。星の守護者としての記憶は戻ったが、日常生活の細かいことはまだ慣れていない。


「ホシ、完璧主義すぎるぞ」

セトが笑いながら見ている。


「でも、きちんとやりたいんです」


「気持ちは分かるけど」

イシスが優しく言う。


「もう少し肩の力を抜いても大丈夫よ」


朝のハプニング

「おはようございます」

ケペトが庭園から戻ってくる。


「花の様子はどう?」

ハトホルが聞く。


「とても元気です。でも…」


「でも?」


「愛の精霊が花と遊びすぎて、ちょっと疲れ気味みたいです」

確かに、愛の精霊はふらふらと飛んでいる。


「あー、楽しかった」

愛の精霊がふらつきながら言う。


「でも、ちょっと回りすぎたかも」


「大丈夫?」

ケペトが心配する。


「はい、ちょっと休めば…あ」

愛の精霊がふらついて、ラーの髪の毛に絡まってしまった。


「うわ」

ラーが驚く。


「取れない…」


「待って、無理に引っ張らないで」

イシスが慌てる。


「髪が抜けちゃう」

みんなでラーの周りに集まる。愛の精霊は光る玉の状態で、ラーの髪にしっかりと絡まっている。


「すみません、ラー様」

愛の精霊が申し訳なさそうに言う。


「体が言うことを聞かなくて」


「大丈夫だ」

ラーが苦笑いする。


「でも、どうやって取るんだ?」


解決策を探る

「オイルを使えば滑りやすくなるかも」

イシスが提案する。


「でも、愛の精霊は光でできてるから、オイルが効くかしら?」

ネフティスが首をかしげる。


「それより」

ハトホルが考える。


「愛の精霊、小さくなることはできる?」


「やってみます」

愛の精霊が集中すると、少し小さくなった。でも、髪の絡まりはそのまま。


「うーん、だめですね」


「それなら」

ホシが提案する。


「星の光で髪をサラサラにするのはどうでしょう?」


「星の光でサラサラ?」


「はい。星の光には、色々な効果があるんです」

ホシが手をかざすと、キラキラした光が現れた。でも、


「あ、だめだ」

ホシが慌てる。


「この光は髪を固くしちゃいます」


「固く?」

ラーが不安になる。


「大丈夫です、すぐ元に戻ります。でも今は逆効果ですね」


アケムのアイデア

「あの」

アケムが手を上げる。


「僕、似たような経験があります」


「似たような?」


「子供の頃、蜂蜜が髪にくっついて取れなくなったことがあって」


「蜂蜜?」

みんなが興味深そうに聞く。


「その時、母がお湯で温めながら、優しくほぐしてくれたんです」


「お湯か」

セトが考える。


「でも、愛の精霊にお湯をかけて大丈夫なのか?」


「試してみる価値はあるわね」

イシスが頷く。


「愛の精霊、お湯は平気?」


「分からないですが、やってみます」


入浴作戦

こうして、ラーと愛の精霊の合体入浴作戦が始まった。


「お湯の温度はどう?」

イシスが確認する。


「気持ちいいです」

ラーが答える。


「愛の精霊は?」


「私も大丈夫です。なんだか温泉に入ってるみたい」


「温泉?」

ハトホルが笑う。


「愛の精霊って、温泉知ってるの?」


「最近覚えました。ケペト様が『気持ちいい』って言ってたので」

みんなが微笑ましく見守る中、イシスが慎重に髪をほぐしていく。


「少しずつ取れてきてるわ」


「本当?」


「ええ。もう少しで…あ」

ついに愛の精霊が髪から解放された。


「やったー」

愛の精霊が嬉しそうに飛び回る。


「ありがとうございました」


「良かったです」

ラーがほっとする。


「髪も無事だし」


ネフティスの隠れた趣味

騒動が落ち着いた午後、ケペトは図書館でネフティスを見つけた。

「ネフティスさん、何を読んでるんですか?」


「あ、ケペト」

ネフティスが慌てて本を隠す。


「何でもないわよ」


「何でもないって…」

隠された本をちらりと見ると、『恋愛小説集』と書いてある。


「恋愛小説?」

ケペトが驚く。


「ち、違うの!これは研究よ、研究」


「研究?」


「人間の感情を理解するための学術的な…」

ネフティスの顔が真っ赤になっている。


「別に恥ずかしいことじゃないですよ」

ケペトが微笑む。


「恋愛小説、面白いんですか?」


「それが…」

ネフティスが小声で言う。


「とても面白いの。主人公が一途で、相手の男性も素敵で」

目をキラキラさせながら話すネフティスを見て、ケペトは新鮮な驚きを感じた。


「知恵の神様にも、そういう一面があるんですね」


「当然でしょ」

ネフティスが少しムッとする。


「神様だって、恋愛には興味があるわ」


「そうですよね」


「でも」

ネフティスが恥ずかしそうに続ける。


「他のみんなには内緒にして」


「分かりました」

ケペトが笑う。


「でも、今度おすすめを教えてください」


セトの料理修行

夕食の準備時間、台所では別の騒動が起こっていた。


「セト、それは塩じゃなくて砂糖よ」

イシスが慌てる。


「え?また間違えたのか?」


「今度はラーじゃなくてセトの番ね」

ハトホルが笑う。


「俺だって、頑張ってるんだぞ」

セトが言い訳する。


「この前のパン屋で勉強したんだから」


「でも、基本的なことから覚えないと」

イシスがため息をつく。


「基本的なこと?」


「まず、調味料の区別から」

イシスがいくつかの調味料を並べる。


「これが塩、これが砂糖、これが胡椒」


「見た目が似てるじゃないか」

セトが文句を言う。


「だから味見をするのよ」


「味見…」

セトが恐る恐る塩を舐める。


「しょっぱい」


「そう、それが塩」

次に砂糖を舐める。


「甘い」


「それが砂糖」


「なるほど」

セトが納得する。


「でも、いちいち味見するのは面倒だな」


「慣れれば見た目でも分かるようになるわ」


「そうか?」

その時、アポピスが現れた。


「何をしてるんだ?」


「セトに料理を教えてるの」


「料理か」

アポピスが興味を示す。


「私も教えてもらおうかな」


「アポピス様も?」


「ああ。最近、みんなの料理を見てて、作ってみたくなった」

こうして、料理教室が始まることになった。


料理教室開催

「それじゃあ、簡単なものから作ってみましょう」

イシスが提案する。


「何を作るんだ?」

セトが聞く。


「野菜炒めはどう?」


「野菜炒め?」


「ええ。野菜を切って、炒めるだけ」


「簡単そうだな」


「でも、油断は禁物よ」

まず、野菜を切ることから始まった。


「セト、人参が厚すぎるわ」


「厚い?これくらいじゃダメか?」


「火が通りにくいの。もう少し薄く」


「アポピス様は上手ですね」

ケペトが感心する。

アポピスは几帳面に、同じ大きさに野菜を切っている。


「昔、時間があったからな。丁寧にやることは覚えた」


「でも、時間がかかりすぎてない?」

ハトホルが見ている。


「丁寧なのはいいけど、お腹が空いちゃうわ」


「そうですね」

ホシが同意する。


「星の管理も、効率性は大切でした」


炒める段階

野菜を切り終えて、いよいよ炒める段階。


「まず、フライパンを温めて」

イシスが指示する。


「どのくらい温めるんだ?」

セトが聞く。


「手をかざして、温かく感じるくらい」

セトが手をかざす。


「熱い」


「それは温めすぎよ」


「じゃあ、このくらいか?」


「それでいいわ。次に油を入れて」

アポピスが慎重に油を注ぐ。


「これくらいでいいか?」


「多すぎるわ」

イシスが慌てる。


「そんなに入れたら、油っぽくなっちゃう」


「難しいな」

アポピスが困る。


「料理は繊細な技術が必要なのか」


「慣れよ、慣れ」

ハトホルが励ます。


「私も最初は失敗ばかりだったもの」


愛の精霊の応援

「頑張って」

愛の精霊が応援する。


「でも、私も手伝いたいなあ」


「愛の精霊にできることある?」

ケペトが聞く。


「うーん」

愛の精霊が考える。


「愛情を込めるとか?」


「愛情を込める?」


「はい。愛情を込めて作った料理は、絶対美味しくなるって聞いたことがあります」


「それはいいアイデアね」

イシスが賛成する。

愛の精霊がフライパンの周りを飛び回る。


「愛をこめて、愛をこめて」

すると、不思議なことに料理からいい香りがしてきた。


「おお」

セトが驚く。


「本当に美味しそうな匂いがする」


「愛の力って、すごいんですね」

ホシが感心する。


完成と試食

ついに野菜炒めが完成した。

「どうですか?」

セトが緊張しながら聞く。

みんなで試食してみる。


「美味しい」

ケペトが微笑む。


「愛情がこもってます」


「本当?」

セトが嬉しそうにする。


「俺にも料理ができるのか」


「もちろんよ」

イシスが頷く。


「練習すれば、きっと上手になるわ」


「アポピス様のも美味しいです」

ハトホルが褒める。


「丁寧に作った分、味が優しいですね」


「そうか」

アポピスが照れる。


「料理も悪くないな」


ラーの失敗談

「そういえば」

ラーが話し始める。


「私にも料理の失敗談があるんだ」


「ラー様にも?」

みんなが興味深そうに聞く。


「昔、人間界に行った時に、一人で料理に挑戦したことがあってな」


「どんな料理を?」


「スープを作ろうと思ったんだ」


「スープ?」


「ああ。でも、火加減が分からなくて」

ラーが恥ずかしそうに続ける。


「つい、太陽の力を使ってしまった」


「太陽の力?」


「そうしたら、一瞬で水が蒸発してしまって、鍋が真っ黒になった」

みんなが爆笑する。


「それは大変でしたね」

ケペトが笑いながら言う。


「ああ。それ以来、料理は控えめにしている」


「でも、今度は一緒に作りましょう」

イシスが提案する。


「みんなでやれば、失敗も楽しいわ」


ホシの星座料理

「そういえば」

ホシが思い出したように言う。


「星の世界には『星座料理』というものがあるんです」


「星座料理?」


「はい。星座の形に料理を並べて作る、芸術的な料理です」


「面白そうですね」

ハトホルが興味を示す。


「今度教えてください」


「でも、地上の食材でできるかなあ」

ホシが心配する。


「大丈夫よ」

ネフティスが励ます。


「工夫すれば、きっとできるわ」


「それじゃあ、今度みんなで挑戦してみましょう」

ケペトが提案する。


「星座料理パーティー」


「いいですね」

アケムが賛成する。


「きっと楽しいと思います」


夜の団らん

夕食後、みんなでのんびりと過ごしていた。


「今日は色々なことがありましたね」

ケペトが振り返る。


「愛の精霊の髪の毛事件に」


「料理教室に」


「ラー様の失敗談まで聞けて」


「毎日が勉強になるな」

セトが言う。


「新しいことを覚えるのは楽しい」


「そうですね」

ホシが同意する。


「仲間がいると、学ぶことも楽しいです」


「でも」

アポピスが考える。


「俺たちって、普通の神々とは違うよな」


「違う?」


「普通の神々は、もっと威厳があって、人間と距離を置いてるものだ」


「確かに」

ラーが笑う。


「私たちは人間と一緒に料理をしたり、髪の毛に精霊が絡まったりしてるからな」


「でも、それがいいんじゃない?」

ハトホルが言う。


「堅苦しいより、みんなで楽しい方が」


「そうですね」

ケペトが微笑む。


「私も、こういう日常が大好きです」


明日への期待

「明日は何をしようか?」

イシスが聞く。


「心の調和会があります」

ケペトが答える。


「今度は、ホシ君の星座の話をしてもらいましょうか」


「僕が?」

ホシが驚く。


「でも、人前で話すのは緊張します」


「大丈夫よ」ネフティスが励ます。


「私たちがついてるから」


「それに」

愛の精霊が付け加える。


「愛情があれば、きっと上手くいきますよ」


「そうですね」

ホシが決意する。


「やってみます」


「その調子」

セトが背中を叩く。


「俺たちも応援するからな」

窓の外では、ホシが守っている星々が美しく輝いている。

今日もまた、小さな出来事の積み重ねで、特別な一日になった。

明日もきっと、新しい発見と笑顔が待っているだろう。

そんな期待を胸に、みんなは今夜も幸せな気持ちで眠りについた。


深夜の小さな出来事

真夜中、ケペトは少し喉が渇いて起きた。

台所に向かう途中、図書館から小さな光が漏れているのに気づく。


「誰かいるのかな?」

そっと覗いてみると、ネフティスが恋愛小説を読みながら、一人でにやにやしている。


「あ、主人公がついに告白した」

小声でつぶやいている。


「頑張って、頑張って」

ケペトは微笑みながら、そっとその場を離れた。


みんなには、それぞれの小さな秘密や楽しみがある。

それもまた、家族の温かさの一部なのかもしれない。

水を飲んで部屋に戻る途中、星空を見上げた。

ホシが守る星々が、今夜も平和に輝いている。


「おやすみなさい」

星に向かって小さく手を振ると、星がまたたいて応えてくれたような気がした。

こうして、神殿の平和な夜は更けていく。

明日もまた、愛と笑いに満ちた一日が始まることだろう。


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