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7章21話 星降る夜の奇跡


調査開始から二日目の夕方。それぞれが集めた情報を神殿で共有することになった。


「それじゃあ、順番に報告しましょう」

ケペトが司会を務める。


「まず、ネフティスさんから」


「はい」ネフティスが古い本を開く。「図書館で星の守護者について調べました」


「どんなことが分かりました?」


「星の守護者は、古代エジプトで『夜空の番人』と呼ばれていた存在。一人で全ての星を管理していたそうです」


「一人で全部?」

ハトホルが驚く。


「大変ですね」


「ええ。でも、それだけに強力な力を持っていたみたい」


「力?」


「星の光を操る力、星同士をつなぐ力、そして…」

ネフティスがページをめくる。


「星の記憶を保存する力」


星の記憶

「星の記憶?」

ホシが興味深そうに聞く。


「はい。星一つ一つには、長い年月の記憶が宿っているの。星の守護者は、その記憶を読み取り、管理する役割があったそうです」

「それで、記憶喪失と関係があるんですか?」

アケムが推測する。


「可能性は高いわね。もし星の記憶に何かが起こったら、守護者の記憶にも影響するかもしれない」

ホシが不安そうな表情を見せる。


「私の記憶が戻らないのも、星に何かが起こってるから?」


「その可能性があります」

ネフティスが頷く。


ラーの観察報告

「次は私の報告です」

ラーが立ち上がる。


「夜空の観察を続けていましたが、興味深いことが分かりました」


「どんなことですか?」


「星が消える順番に規則性があります」

ラーが空に指を向けて説明する。


「まず北の星座から消え始めて、徐々に南に向かって消えている」


「順番があるんですか?」


「はい。まるで何かが北から南に移動しながら、星を消しているような」


「何かって…」

セトが眉をひそめる。


「分からない。でも、このままのペースだと、三日後には全ての星が消えてしまいます」

みんなが緊張した。


「三日後…」

ケペトが呟く。

その時、ホシが急に立ち上がった。


「三日後…どこかで聞いたような」


「思い出したの?」

イシスが期待する。


「いえ、でも…三日という数字に、とても不安を感じます」


アケムの街での調査

「僕の報告です」

アケムが資料を出す。


「街の人たちに話を聞いてきました」


「何か分かりました?」


「はい。実は、一週間前から変なことが起こってたんです」


「変なこと?」


「夜中に、空から黒い影のようなものが飛んでるのを見た人が何人かいます」


「黒い影?」


「大きさはよく分からないけど、とても速く飛んでいたそうです」

アポピスが反応した。


「黒い影…私のような龍の姿か?」


「いえ、違うみたいです。もっと…形が不定というか」


「形が不定?」


「まるで煙のような、雲のような」

ホシがまた頭を押さえた。


「あ…また頭が…」


ケペトと愛の精霊の発見

「ホシ君、大丈夫?」

ケペトが心配しながらも、報告を続ける。


「私と愛の精霊は、動物たちに話を聞きました」


「動物たちは何か知ってるの?」

ハトホルが聞く。

「はい。特に夜行性の動物たちが、とても怖がっています」


「怖がってる?」

愛の精霊が光りながら説明する。


「『暗闇の化け物が来る』って言ってるんです」


「暗闇の化け物?」


「はい。星を食べる化け物だって」


「星を食べる?」

みんなが驚く。


「でも、その化け物がどこから来たのかは、誰も知らないんです」

ケペトが続ける。


「ただ、動物たちは『星の番人が守ってくれる』って信じてたみたいです」

「星の番人…」

ホシが呟く。


「それって、私のこと?」


記憶の断片

その時、ホシの目に涙が浮かんだ。


「みんなが…みんなが私を頼りにしてたのに」


「ホシ…」


「私、何も覚えてない。どうやって星を守るのかも、化け物と戦う方法も」


「大丈夫よ」

イシスが優しく手を置く。


「一人じゃないから」


「でも…」

その時、愛の精霊がホシの手に止まった。


「ホシさん、深呼吸してください」


「深呼吸?」


「はい。そして、心を空っぽにして」

ホシが言われた通りにする。すると、微かに何かが見えてきた。


「あ…」


「どうしたの?」

ケペトが聞く。


「星たちの声が…聞こえるような」


「星たちの声?」


「『助けて』って…『守って』って…」

ホシの周りに、薄っすらと光が生まれ始めた。


「これは…」

ラーが驚く。


「星の光だ」


星の守護者の覚醒

光はだんだん強くなり、ホシの体を包んでいく。

「ホシ君?」

ケペトが心配する。


「大丈夫です」

ホシが微笑む。


「少しずつ思い出してきました」


「本当?」


「はい。私は確かに星の守護者。そして…」

ホシの表情が曇る。


「化け物の正体も分かりました」


「化け物の正体?」


「『虚無の影』です」


「虚無の影?」


「星の光を食べて成長する、闇の化け物。本来は宇宙の彼方にいるはずなのに」


「それが地球に?」


「はい。私が…私が封印を間違えたんです」


封印の失敗

ホシが申し訳なさそうに説明する。


「一週間前、虚無の影を発見して、急いで封印しようとしました」


「でも失敗した?」


「はい。封印の術が不完全で、化け物は逃げてしまい、その反動で私の記憶が…」


「そうだったんですね」

ケペトが理解する。


「で、どうやったら倒せるの?」

セトが実戦的な質問をする。


「虚無の影は、光が苦手です。特に、愛の光には弱い」


「愛の光?」


「はい。星の光も愛の一種なんです」

ケペトが気づく。


「それなら、私の愛の力も使えるかもしれません」


「でも危険です」

ホシが心配する。


「虚無の影は、光を食べます。下手をすると、ケペトさんの力も吸い取られてしまう」


「それでも」

ケペトが決意を固める。


「星を救いたいです。動物たちも怖がってるし、夜空のない世界なんて寂しすぎます」


作戦会議

「それじゃあ、作戦を考えましょう」

ラーが提案する。


「まず、虚無の影はどこにいるの?」


「たぶん、一番星の多い場所」

ホシが答える。


「星座の中心…天の川のあたりです」


「天の川まで、どうやって行くの?」

ハトホルが聞く。


「私が龍の姿で運ぼう」

アポピスが申し出る。


「でも、空高くまで飛ぶのは危険かもしれないわ」

イシスが心配する。


「大丈夫だ」

アポピスが自信を見せる。


「星の近くまで飛んだことはある」


「本当?」


「ああ。昔、星に手紙を届けたことがあるんだ」


「手紙?」

みんなが興味深そうに聞く。


「クロノスからの手紙でな。『時の神からの挨拶』って書いてあった」


「アポピス、郵便配達もやってたのね」

ネフティスが笑う。


「やってたって言うほどじゃないが…まあ、そんなところだ」


愛の精霊の提案


「あの」

愛の精霊が提案する。


「私も一緒に行きます」


「でも、危険よ」

ケペトが心配する。


「大丈夫です。私、実は虚無の影のこと、少し覚えてるんです」


「覚えてる?」


「はい。私が憎しみの精霊だった頃、虚無の影に襲われたことがあるんです」


「襲われた?」


「でも、その時、どこからか愛の光が飛んできて、虚無の影を追い払ってくれました」

愛の精霊がホシを見る。


「きっと、ホシさんが助けてくれたんだと思います」


「私が?」


「はい。だから今度は、私がホシさんを助ける番です」


出発準備

「それじゃあ、今夜決行しましょう」

ケペトが言う。


「今夜?」


「はい。これ以上星が消えるのを待ってはいられません」


「でも、準備が…」

アケムが心配する。


「大丈夫」

イシスが微笑む。


「私たちの準備は、いつでもできてるわ」


「準備って?」


「愛よ」

ハトホルが笑う。


「愛があれば、何でもできるでしょ?」


「音楽もあるしね」

ハトホルがフルートを取り出す。


「音楽で応援します」


「私は魔法でサポートするわ」

イシスが杖を手に取る。


「俺は戦力として」

セトが拳を握る。


「僕は…」

アケムが考える。


「僕は、みんなの無事を祈ってます」


「それが一番大切よ」

ケペトが微笑む。


夜空への出発

夜になると、アポピスが龍の姿に変身した。


「準備はいいか?」


「はい」

みんなが答える。

ホシは星の守護者としての服装に着替えていた。星座の模様が入った美しい青い衣装。


「似合ってますね」

ケペトが褒める。


「ありがとうございます。でも、まだ全部は思い出せてなくて」


「大丈夫」

愛の精霊が励ます。


「必要な時に思い出しますよ」

龍の背中に乗ると、アポピスがゆっくりと空に舞い上がった。


「高いですね」

ハトホルが興奮する。


「でも、星が近くに見えて綺麗」

確かに、空高く上がるにつれて、星々が大きく明るく見えてきた。

でも、確実に数は減っている。


虚無の影との遭遇

天の川の近くまで来た時、それは現れた。

巨大な黒い影。形は常に変化していて、まるで生きている闇のよう。


「あれが虚無の影…」

ホシが緊張する。

影は星を一つ、また一つと飲み込んでいく。


「酷い…」

ケペトが心を痛める。


「星たちが苦しんでる」

その時、虚無の影がこちらに気づいた。


「来るぞ」

アポピスが警告する。

影が猛スピードで向かってくる。


「ホシ」

ケペトが手を握る。


「一緒に頑張りましょう」


「はい」


愛の光の攻撃

ケペトとホシが同時に力を発動した。

ケペトからは温かい愛の光、ホシからは星々の光。

二つの光が合わさって、虚無の影に向かっていく。


「うわあああ」

影が苦しそうな声を上げる。

でも、すぐに反撃してきた。暗黒の波が襲いかかる。


「危ない」

アポピスが身をかわす。


「思ったより手強いな」


「もう一度」

ホシが集中する。

でも、なかなか記憶が戻らない。


「どうして…どうして思い出せないんだ」


仲間たちの応援

その時、ハトホルがフルートを吹き始めた。

美しいメロディーが夜空に響く。


「音楽?」

虚無の影が困惑する。


「そうよ」

ハトホルが笑う。


「愛の音楽よ」

イシスも魔法を使って、光の粒を作り出す。


「みんなで力を合わせましょう」

セトも雄叫びを上げる。


「負けるかあ」

みんなの愛と友情が、光となってホシを包んだ。


「みんな…」

ホシの目に涙が浮かぶ。


「ありがとうございます」

その時、ついに記憶が蘇った。


完全な記憶の回復

「思い出しました」

ホシが立ち上がる。


「星の守護者としての全ての記憶を」

ホシの体が星の光で包まれる。


「虚無の影よ」

ホシが威厳ある声で言う。


「お前の好きにはさせない」

今度の攻撃は違った。

ホシの光に、みんなの愛が加わって、虹色の美しい光となった。


「これは…」

虚無の影が驚く。


「愛の光の完全版だ」

ホシが説明する。


「一人の力では作れない、みんなの絆で作る光」

光は虚無の影を包み込む。


「苦しい…でも…温かい」

影の声が変わった。


「あなたも、きっと寂しかったんですね」

ケペトが優しく語りかける。


「寂しい?」


「一人で宇宙をさまよって、誰にも愛されなくて」

光の中で、虚無の影の姿が変わり始めた。


影の本当の姿

光が収まると、そこには小さな星の精霊がいた。

「あ…」

みんなが驚く。


「私は…」

星の精霊が困惑する。


「どうして暗闇に飲まれていたんだろう」

ホシが優しく近づく。


「あなたは迷子の星だったんですね」


「迷子?」


「はい。故郷を見失って、寂しさのあまり闇に飲まれてしまった」


「そうだった…私、帰る場所が分からなくて」


「大丈夫」

ケペトが微笑む。


「一緒に帰る場所を見つけましょう」


星空の復活

星の精霊が元の姿に戻ると、飲み込まれていた星々が次々と空に戻っていく。

「わあ」

ハトホルが感嘆する。


「星が戻ってる」


「綺麗」

愛の精霊も嬉しそうに光る。

夜空が再び満天の星で埋め尽くされた。


「ありがとう」

星の精霊がお辞儀する。


「皆さんのおかげで、自分を取り戻せました」


「いえいえ」

ケペトが謙遜する。


「お互い様です」


「これからはどうするの?」

イシスが聞く。


「故郷の星座に帰ります」

精霊が答える。


「でも、時々遊びに来てもいいですか?」


「もちろん」

ホシが微笑む。


「いつでも歓迎します」


帰路

帰り道、みんなが満足そうだった。


「今回も良い解決でしたね」

ケペトが言う。


「そうですね」

ホシが答える。


「記憶も戻ったし、星も救えたし」


「でも一番良かったのは」

アポピスが言う。


「新しい仲間ができたことだ」


「新しい仲間?」


「ホシだよ」

セトが笑う。


「これからも一緒にいるんだろ?」


「え?」

ホシが驚く。


「私も仲間に入れてもらえるんですか?」


「当然よ」

イシスが微笑む。


「もう家族でしょ?」


「家族…」

ホシが嬉しそうに繰り返す。


「はい。お願いします」

こうして、また一人、大切な仲間が増えた。


神殿での祝賀会

神殿に戻ると、小さな祝賀会を開いた。


「ホシの記憶回復と星空復活を祝して」

ラーが乾杯の音頭を取る。


「乾杯」

みんなが声を揃える。


「でも」

ネフティスが考える。


「これで何人目の仲間?」


「えーっと」

ケペトが指折り数える。


「ラー様、イシス様、ハトホル様、ネフティス様、セト様、アポピス様、愛の精霊、クロノス様、そしてホシ君」


「人間は」

アケムが続ける。


「ケペト、僕、アケト、ネベト様」


「すごい大家族になったわね」

イシスが笑う。


「でも、いいことよ」

ハトホルが言う。


「愛は分け合うほど大きくなるから」


「そうですね」

ケペトが微笑む。


「これからも、みんなで愛と調和を広めていきましょう」


「おー」

みんなが手を上げる。


外では、復活した星々が美しく輝いている。

その中に、新しく加わった迷子の星も、幸せそうに光っていた。

今夜もまた、愛と友情の小さな奇跡が、テーベの夜空を照らしている。

そして明日もきっと、新しい出会いと冒険が待っているのだろう。

でも、どんなことが起こっても、みんなで力を合わせれば大丈夫。

そんな確信を胸に、ケペトは今日という特別な一日に感謝しながら眠りについた。


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