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第7話
「先祖がそこの藩に仕えていたことがあるということを、なんとなく聞いたことがあるような、ないような……」
兄はなにやら記憶が定かではないらしい。
自分はそれを聞いたことがないため、黙って聞いていた。
「もしかしたら、その話は本当のことだったのかもしれません」
そういって、柄を外して中を俺らに見せてくれる。
詳しい刀の作りはしらないけども、最低限俺らにわかるように教えてくれていた。
「……ここに、刀の銘が彫られています。『永享四年六月 造鉄 光重』となっています。永享4年6月は、いまでいうところの1432年6月から7月くらいのころになります。造鉄とは「くろがねがつくる」とここでは読みます。光重はこの刀の銘ですね。くろがね、というのは美作国にある砂賀藩でその刀剣類の一切の作成を担っていた鉄一族の長のみが使用することができる名前です。刃紋や拵えなどからもおそらくはその一派である鉄一派による作刀で間違いがないでしょう」
いろいろと教えてくれているが、結局分かったのは砂賀藩の偉い人が作った刀、ということだけだった。