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鼻毛

作者: 明家叶依

 あー、駄目だ……集中できない。言いたい、言っていいのか? これ。

 いやいやいや、言った方が本人の為だよね。でも、逆に怒られるかもしれない。なんで会議の前にちゃんと確認しないかなあ……


 鼻毛……。


 私は頭をフル回転させ、考えないようにしているが、如何せん目に付く位置に上司が座っていて、会議に集中できていない。さりげなく何本か出ていれば、ああ鼻毛出てるなあ……で済むのに、長いのが一本出ているだけでなぜあそこまで面白いんだ。

 今はまだ別の社員が話していて、そっちを向くことで回避できている。だが、次は上司の番だ。どうにかして頭の中で別のことを考えろ。

 昨日奮発して買ったお肉……美味しかったなあ。やっぱり値段が高いだけある。いや、あれは美味い……。


 駄目だ、鼻毛のせいでろくな感想が出てこない。

 社員が話し終え、上司の番になる。立ち上がり、周りに視線をやり自分に意識が向いた所で話し出した。

 ……はあ、なんとか乗り切った。

 ここ数年で一番疲れたかもしれない。まあ、笑わなかったし……大丈夫だろう。そう、安心しているときに話しかけられた。


「たちばな、お前トイレ我慢してたろ、ぷるぷるしてたぞ」

 上司だ。

 まず女性にそういう発言はどうなのか、というのはおいといて……トイレじゃねえよ。

 私は、心の底からそう叫びたい。

 まさか、笑いを堪えてる時に体が揺れてるなんて知らなかった。表情に出さないことに必死で他のことを気にしていられるはずもない。私は「ばれてました?」と適当なことを言ってその場を回避する。


 自分のデスクに座って、仕事を開始しようとしたときに考える。

 このまま、誰も指摘しなかったらあの鼻毛はどれだけ成長するのだろうか。少し見てみたいが、やはり気づいた人が言ってあげるのが優しさだと私は思う。

 でも、めんどくさい人なんだよなあ……あの人。両手で頭を掻きながら考える。

 私も覚悟決めるか……。

 一つの決断をする。


 パソコンですぐに文字を入力し、即座に印刷する。それを封筒に入れ、上司の前まで行き話しかける。

『右の鼻から、鼻毛、出てますよ』

 用紙にそれだけ書いて、私は提出した。

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