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鉄塔の噂  作者: スギ
1/1

変な噂を調査してみた

こんにちは

「お前、今年蟹食ったか?」


そんな事が耳に入り込んでくる。


「そんなの高くて食えたもんじゃないわ」

「いやいや~高いが食う価値はあるぞ?」


いつも鶴谷は一般人にはそう簡単にできないような事をさもできるかのように言ってくる。


「そんなのあそこの蟹屋で食えるだろう」

「いやあそこの蟹屋食ったことあるか?生臭すぎて食えたもんじゃない」

「そんなことないだろーうまいぞ?」


いい加減にして欲しい。嫌がらせがしたいなら他の人にしてくれ、鶴谷武夫。


「あ、そういやさ、あの噂聞いたか?」

「なんだよ、どうせ胡散臭い噂ことだろ?」


鶴谷には『あの噂聞いたか?』から始まる話はいつもしょうもない事だと言う法則がある。


「いやまあ聞けよ、ここの近くにススキだらけの川あるだろ」

「あるけど」

「その中に立ってる鉄塔の根本が開くというんだよ」

「はあ」

「その中は空間が歪んでて中に入ると美しい世界が広がっているって言うんだ」

「ほら胡散臭い!」

「胡散臭くてもロマンはあるだろー」


本当に言い方が如何にも作り話という感じだった。

にやけた表情で唾を飛ばしながら興奮した様子で言ってくる。


「どうせ中学生から流れた噂だろ、それ」

「それがどうしたっていうんだよ。本当にあったら調査してみたくないか?」


まあ、少しは興味があった。

昔は屈指のオカルト好きで、変な本まで大量に集めてあった。

一体その鉄塔世界にはどんな世界が広がっているのだろう、この時僕は少し興味を惹かれ始めていた。



大学の講義を聞いているとつまらな過ぎて心理の扉が開きそうになる。

講義とは全く別の話題を頭から引っ張り出していると1週間前の事が引っかかった。

例の鉄塔世界だ。

あの時はそんなオカルトチックなものに俺は騙されない、と振り切ったが

やはり引っかかっていた、引っかかっていた自分がいた。

どんどんそのことで頭が一杯になってゆく、その記憶に能が侵されてゆく。

もうその時にワクワクで胸がいっぱいになった。

勝手に表情がにやけ始めた所で講義は終了した。


「おーい」

「よお鈴村」

「お前講義中ずっとにやにやしてたぞ。いいことでもあったか?」

「いやーちょっとね」

「言えよー」


鈴村はいつもダルがらみしてくる奴だ。

性格は決して悪くはないが持ち前のファッションセンスの無さとダルがらみで嫌われている。

そして自分に利益がある話が出ると詐欺だと分かっていても引っかかる意味のわからない奴だ。

そこでこの前聞いた話を鈴村に話した。


「うわーロマンある」

「まあちょっとね」

「もし行くなら俺も連れてってくれない?」

「行かないから安心しな」


行かないとは行ったもののオカルトに興味がある以上興味は湧く。

そこで今日の5時にその鉄塔に単独で行くことにした。

そのススキだらけの川というのは誓とは言え電車で3駅行ったところにある。

現地に着き、鉄塔に近づく、その鉄塔の根本を見てたが

何もなかった。

ほら嘘だったんだお前は騙される馬鹿な奴だ、

脳内で罵る声が聞こえる。

さっきまでは気持ちが高ぶり、体が浮くような感じだったのに今はヘドロの中に沈んでいく虫のような気持ちだ。

ヘドロのような気持ちを払い除けながら鉄塔から離れていく。

その時、ほんの少し嫌な感じがした。

本当に少し、心の耳を済ませないと感じることが出来ないくらい

後ろを振り返ったが何も無い。

何だったのだろう。

結局よくわからないまま家に帰った。


ありがとうございました

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