4.形
6月も中旬を過ぎ熱くなってきました。
体調を崩されていないでしょうか。
私も運動は苦手なので家で一人小説を書いていこうと思います。
今回は短めになっています。
〜2◯20年6月〜
人になにもないように見せる。
いつも楽しそうにしているようにすれば誰も何も思わない。
僕はそうしてきた。
一櫻にもそうしてきた。
能天気でなんの悩みもないやつだと思われていたかった。
自分には楽しいことの記憶が残らない。
それ以外の嫌な記憶は気を抜いた瞬間に次々と降り掛かってくる。
本を読んでいれば起こらなかったから休み時間はほぼ読書時間だった。
いやいや部活に出て疲れて家に帰る。
家に帰っても弟たちが学校で起こした不祥事で親は怒っている。
家でも喋ることがなくなっていくのは必然だった。
喋らなくなった分、本を読むようになった。
たくさんの本を読むようになってからたまにおすすめの本を聞かれるようになった。
その人の性格とか趣味を聞いて好きそうな本のタイトルを教える。
感想を聞かれてもうまく言葉にできずネタバレになると言って言わないようにしていた。
本の中の言葉はいつもどこか心のなかに少しずつ落ちてくる。
自分が言えない何かと一緒に落ちてきてそれが消えることはなかった。
いつ溢れてしまうのか分からないまま本を読む。
光のない世界に色の分からない言葉が落ちてくる。
時折小さな光るものが現れるけど黒い人影が壊していった。
誰も何も信じない。
努力も報われることはない。
だから自分の一切を諦めるのが一番手っ取り早かった。
諦めるのが正解だったみたいに僕がなにかしないほうが物事がうまくいく。
人間関係も学校行事もそうなっていった。
お前はなぜ生まれてきたのかって神様にでも聞かれたら、死ぬためですって大声で叫んでやりたい。
ニュースで自殺や事故による死亡などを見るとなんで自分じゃなくて他のやつなんだって思ってしまう。
自分が誰かの代わりにいなくなれるのなら喜んでそうできるのに。
そんな考えとは裏腹に現実は何も変わらないまま過ぎていく。
作り笑顔と曖昧な返事だけが口から溢れるだけで誰も心配することのない世界で今日も一人本を読み続ける。
形にならない言葉はいつまでも使われることなく冷たくなっていった。
今回の話は久遠夏織の視点で書きました。
(わかっている方が多いと思いますが)
次の話は新しい人を出す...はずです、はい。
どんな感じになるかわかりませんが次話も読んでいただけると嬉しいです