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皆様、事件です。

えー。皆様、現場は大変な事になっております。どうぞ。


ギルマスの部屋には苛立ったラインズさんと今にも泣きそうな目を釣り上げているリースさん。呆れた顔で片手で顔を覆って俯いているカールさん。そして何故か俺。マジで帰りたい。


「本気を出したら3日後くらいには帰ってくる」のカールさんの言葉通り、帰ってきたリースさん。


俺のスケジュール的にはギルマスかカールさんの予定に合わせて一日交互で午前か午後の半日修行になる。今日は午後からカールさんの護身術を受けるはずだったんだけど。


いつも通りお昼過ぎ辺りに行って、もうすぐギルドに着く時だった。ギルドの扉と共にローブを着た長身の人が綺麗に吹っ飛んできてちょうど俺の目の前で転がった。

、、、ギルドまで、まだ5メートルくらいはあるんだけど、、、?


ギルドの扉があった場所には頭の血管が浮き出た、ものすごい顔したラインズさんが腕を組んで仁王立ちしてらっしゃる。


あぁ、この人がリースさんなんだろうな。人間びっくりしすぎると冷静になるもんだ。


おそらくリースさんであろう人もちょっとうめきながらすぐに立ち上がって埃を払っている。魔法が得意だろうと流石にAランカーだからなのかこれくらいじゃなんともないんだろう。


「リース。何か言うことは?」


「ただいま帰りました」


「、、、1ヶ月仕事を放棄するのは冒険者ギルド副マスターとして由々しき事態だ。」


「ただいま帰りました」


「確かに今までもいきなり姿が見えなくなることがあったが魔法の為の修行だと思う様にして見過ごしてきた。が、やはり魔法具の研究の方が向いている様だな?勧誘の話、こっちの耳にも入っているぞ。」


「ただいま帰りました」


「、、、本当にまだここに帰れるとでも思っているのか?」


「、、、ただいま帰りました」


「カ、カールさん!早く!こっちです!止めてください!」


奥からバタバタと受付嬢さんが叫びながら駆け回ってる音が聞こえる。


「ラインズ。ここではやめろ。周りに迷惑だ。、、、リース。お前もとりあえず中へ入れ。、、、その扉は持ってこい」


ギルマスはリースさんを睨んだままだったがギルドの玄関先での騒動に他の人もなんだなんだと集まりかけているからだろう。


あ。ギルマスとカールさんと目が合った。お願いだお二人ともこのまま見逃して、、、


「、、、ちょうどいい、お前さんも付いてこい」



ギルドマスターは俺が嫌いなのかな、、、?明らかに今カールさんが俺に触れないでいてくれたのに???あー終わったーーーー。リースさんが誰だよこいつみたいな顔で見てくるんですけどもーー?


「、、、はい」


その後はとりあえず受付嬢さんとたまたま中に居た冒険者の数人が扉を受け取って補強しにかかってるけどバキバキに割れてるところもあって「木工ギルドの人呼ぼう」って会話を横目にギルマスの部屋に連行される。できれば『俺が呼びに行きます』って立候補したい。うちの兄でも父でも引っ張ってくるから!


部屋の中に入ってギルマスはそのままデスクの椅子に座って腕を組んで喋らない。カールさんとリースさんはそれぞれ向かい合って応接席に座ってる。カールさんが隣を指さしてくれたのでそっと座ると前からものすごい視線が。


カ「、、、リース。流石に今回は長すぎだ。説明してみろ」


リ「その前にその子は?」


ラ「お前にそれを聞く権利があるのか?」


リ「、、、確かに今回は反省している。魔法具の研究で理屈は合ってるはずなのに正常に起動しない物があって意地になりすぎていた。」


カ「なぁリース。お前は別にここじゃなくても本当にやりたいとこに行けば良いんじゃないのか?あっちに行けばその魔法具のことだってとことん出来るんだろう?」


リ「リーダーと兄さん以外の下には付かないし、誰か知らない奴の上に立つ気も無い」


カ「、、、下とか上とかの話をしてるんじゃない。冒険者ギルドの副マスターだと、できないことの方が多いだろう?ここにくる時も散々言っただろう?」


リ「、、、反省してる」


ラ「お前、何がしたいんだ」


リ「……」


カ「、、、はっきり言うぞ。今回の件で流石に俺もどうかと思っている。本来なら副ギルドマスターは俺のはずだったからな。分かるだろ?」


だんだんリースさんが表情を崩して俯いていく。怖くて直視できなかったけど。青い長めの髪を後ろで括っている。黒く長いコートの様なしっかり目のローブを着ていて顔立ちは、『かっこいい』よりは『綺麗め』なイケメンだ。

え?この世界ではイケメンとかイケオジとか強面とかしか役職につけないの??顔か?この世界でも顔なのか?いや待てそもそも俺の日本人の感覚でスタイルのいい外人を見るとかっこよく見えるだけでこっちの感覚からしたら、もしかしたらこれが平均なのでは?とか俺が現実逃避しかけてるところにさらにギルマスが追い打ちをかける


ラ「俺としては、もうカールに頼もうと思っている。」


あー言っちゃったー。泣くのを我慢してるのか怒りなのか分からないが眼を充血させて顔をあげたリースさん。たぶん俺がいることで普段の会話ができないのだろうなとは薄々感じてるんだよね。この前カールさんが話してくれたからなんだけど。誰か知らない奴の前ではワガママ言えないんだろうな。、、、あれ、35歳だっけ??てかそもそも『これ』目当てでここに連れて来たなギルマスめ。


リ「俺が本当に目指しているモノは兄さん達も知ってるはずだ!どうしようもないこともな!!!」


シーンとなる部屋。たぶん魔法Sのことだよね…。


ラ「お前まだ35だろ。現役に戻ることも魔法具作りながら鍛えることだってまだまだ出来るじゃねぇか」


リ「それも何度も言った。【明けの雫】以外のチームに入るつもりも新しいチームを作るつもりもない。魔法具は趣味だ」


ラ「じゃあお前にとってここは何だ?片手間か?趣味以下か?」


リ「、、、」


うーーーーーーーーん。これは現代においては即効クビなんだろうけどなぁ。『趣味のために有給全部使います』ってある日メモ書きだけで休んだらそりゃあな。家族経営チックになってるからこう言う話の流れになるんだろうし。リースさん仕事はできるけど頑固だし研究肌だしまさしく魔法以外興味ないんだろうなぁ…。


「そもそもこの子は誰なんだっ!!」


てことで、ここで冒頭に戻るわけなんですけどね。

え、呆れてないで守ってくださいよカールさん。


カ「、、、この子は今年10歳になって冒険者ギルドから正式に招待状で勧誘したアレクだ。全魔法適正持ちの上、この歳で既に水と土に関してはBランク、他の魔法も最低値はD、スキルも鑑定やアイテムボックスなど計8個持ち合わせている【特異】だ」



「、、、はじめまして、、、アレクです」


うっ。全て事実だけど何か話を盛りに盛りましたみたいな紹介やめてカールさん!


「……」


リースさんも返事しないし、いたたまれなさすぎる。

余計なことは言わずぼんやり机を眺めとこう、、、。


カ「、、、今ラインズと俺とで基礎体力作りと体術を教えてるところだ。」


ん?あら?もしかしてこれは、、、


すっとリースさんが立ち上がってデスクの前のラインズさんのところまで行く。



リ「ギルドマスター、長く仕事を離れてしまい申し訳ありませんでした。」


頭を下げて謝るリースさん。もしや謝罪してなかったのか、、、


ラ「、、、普通謝罪が先だろう。何げない顔して何の報告も無しに自分の部屋に戻ろうたぁ良い度胸だ。」


えぇ、それは知らなかった。ブチギレも納得案件。


リ「彼への魔法指導、俺にやらせてください」


ラ「却下だ」


ひぇ。いきなり名指しな上に即答したぞ。え?てか却下なんだ??


ラ「どっちつかずでフラフラしてるような奴に任せられるわけねぇだろ」


リースさんは頭を下げたまま動かない。


ラ「、、、北の街クリューシュに5件ほど溜まっている依頼書があるそうだ。お前1人で全てこなしてこい。話はそれからだ」


リ「、、、今から向かいます。兄さん、よろしくお願いします」


ちょっと目が合ったけど軽い会釈だけで通り過ぎて、部屋を出ていくリースさん。何もしてないのに疲れたんだけど???


カ「アレク、すまなかったな。ラインズも謝れ」


ラ「、、、すまん」


「ダシに使われたことですか?それとも痴話喧嘩に巻き込んだことですか?」


ハハっと笑って見せて場の空気を軽く、、、なるわけないよねー。そうだよねーHAHAHA…気まづそうにしないでもろて…。


しばらくしていそいそとカールさんと地下へ向かう事になったんだけど「あ、訓練はするんですね。」って遠い目になったよね。チラッと玄関口を見たら木工ギルドで見かけたことある数人がちょうど新しいドアを持って来たところだった。だいぶ時間かかってたんだなぁって感じたよね。流石に兄や父は居なかった。


まぁ、家に帰ってから「何かあったのか」って兄に聞かれたけどね。笑って誤魔化しといたけど。とりあえず明日は2人とも忙しいらしいから久々の休日です。


よろしければブックマーク等よろしくお願いします。

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