終戦
――――ピシッ……。
「……ありゃ?」
そのひび割れる音を聞いて、リリアナは自分の頬に亀裂が入ったことに気づいた。
「魔力の使いすぎ? 限界来ちゃった? ――ま、でも」
螺旋状に放たれた闇の魔力は憐太郎の黒炎とほぼ互角、拮抗していた。
「――関係ないよね!」
体の限界など無視してさらに魔法の威力を高める。
「うっ……!」
徐々に押され始める憐太郎は苦悶の表情を浮かべる。
詠唱によって魔法の威力を高めてはいるが、リリアナの魔法は3属性複合に加え、練度も憐太郎より上。このままいけば、まず間違いなく押し切られる。
だが。
「リリアナ様!」
突如として割って入ったシスティがリリアナを抱きかかえ、その場を離脱する。
そのせいで、リリアナの魔法はキャンセルされ、憐太郎の魔法は誰もいない空に打ち上げられる。
「なにするの!!!」
戦いを邪魔されたリリアナはシスティに抱えられながら、激怒する。
「さっき言ったこと忘れたの? 邪魔するならあなたから殺すよ」
先ほどと同じくドスの効いた声で脅すリリアナ。
「構いません」
けれど、システィの反応は先ほどとは違った。
「私の命一つでリリアナ様を救えるのでしたら、どうぞ殺していただいて構いません」
迷いなく彼女はそう言い放った。
「…………」
ただ、それでも、リリアナを抱える彼女の手は震えていた。
「はぁ……」
だから、リリアナはため息をつきながら彼女の手をそっと握る。
「……分かった。今回は我慢する」
そのままリリアナは大人しくシスティに抱えられたまま、水上公園を後にする。
ただ、最後、遠く離れて小さくなっていく憐太郎の姿に目を向け、小さく呟く。
「また会いましょう。次は君の方から来てくれるといいな」
「……なんだ?」
去っていくリリアナたちの背を見て憐太郎もまた魔法の発動を止める。
「逃げたのか?」
「白撫がおかげだ。意識が戻ったら礼を言うといい」
プリムラが白撫を抱えながら、憐太郎の隣に戻ってきた。
「何が起きたのか分からないが、帰ってくれたのならそれでいい。それより、白撫は無事なのか?」
「傷の方はこちらで治してある。今はまだ体力が回復していないから、眠ったままだ」
「そうか。他のみんなは? 何か聞いてるか?」
「メイと燕時から連絡は来ている。どちらもそれぞれ対処したようだ。ただ、梗夜はそれなりの怪我を負ったらしいが」
「生きているなら、それでいい。で、プリムラは今まで何をしていたんだ? もう少し早く来てもらいたかったが」
「合コン」
「……ふざけているのか?」
「クラスの女子に頼まれたんだ。それに、二次会断ってこっちに来てやったんだ。感謝してもいいんだぞ?」
「……本音は?」
「しつこく誘ってくる男がいたから、憐太郎たちを口実に逃げてきた」
「オケー。相変わらず最低で安心した」
「お前が普段から面倒がらずに修行していれば、ここまでのことにはならなかったんだがな」
「それに関しては何も言い返せないな」
「…………」
「…………」
「変わらずだな」
「変わらないさ」
「聞いたんだろう。私のこと」
「聞いた」
「多少なりとも面白い反応を期待していた」
「この状態じゃなければな」
「残念だ」
「メイは?」
「知っている」
「聞いてなかった」
「彼女は気にするから」
「見かけによらないな」
「見かけ通りよ」
「知らなかった」
「知っていきなさい」
「…………帰るか」
「ええ」




