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「神崎は魔狩りとして、もう一人前じゃ。そろそろ弟子をとってもいい頃じゃろ」


「お義父さん、ダメです!」


「修業は他所でするもんじゃ。わがまま言うでない」


「お義父さーん」


 半泣きの我聞を気の毒そうに見ながら、神崎が「では、(おり)を見て僕から我歌さんに話をしてみますね」と提案した。


「うむ。わしからも、それとなく訊いてみる」


 そこに、ラフな格好に着替え終わった我歌が戻ってきた。


「お待たせー。神崎さん、久しぶりに稽古しよ! あれ? おとん、何落ち込んでんの?」




 翌日の夕刻。


 今日は別行動だった愛里沙から、我歌のスマホにメールが届いた。


 マッドドックスの大熊たちに捕まった。


 工場街の廃倉庫に我歌1人で来なければ、愛里沙がひどい目に遭わされるという内容が書かれている。


「あいつら!」


 我歌の瞳が怒りに燃える。


 我歌はすぐさま家を飛び出し、指定された倉庫に走りながら、スマホで電話をかけた。




 だだっ広いボロ倉庫に入った我歌を10人の男たちが迎えた。


「我歌ちゃん!」


 奥に居る男に後ろ手に捕まれた愛里沙が声をあげる。


「愛里沙ちゃん!」


「ごめんなさーい」


 愛里沙は半泣きだ。


 大熊と鉄パイプや木刀を持った7人の男たちが、我歌を取り囲む。


 残った1人の男は、倉庫の片隅に積み上げられたタイヤに座り、けだるそうに成り行きを見守っている。


 その右手には木刀が握られていた。


 細身で、眼付きが鋭い。


 20代前半か。


 シャツもパンツも黒で陰に溶け込み、肌の青白さが妙に際立つ。


「先輩の八岐迅(やまたじん)さんだ。念のために来てもらったのさ」


 大熊がニヤニヤして告げる。


「そんなん、どうでもええ! はよ、愛里沙ちゃんを放し!」


「お前はバカか? 大事な人質を放すわけないだろ? あの女を無事に返して欲しかったら、大人しくしてろよ」


 大熊の目配せで、男たちの包囲が(せば)まる。


「アンタら…根っからのクズやな。情けない! ウチは、こういうやり口はほんまに好きやない!」


「だから何だ? 今からお前に地獄を味あわせてやるよ!」


 大熊が我歌に右手を伸ばした。


 倉庫奥の八岐が退屈そうに欠伸(あくび)をする。


 大熊の指が我歌の胸元に触れる寸前。


「どりゃあーーー!!」


 女の大声がした。


 その直後、腐食でボロボロの倉庫の壁穴から、1人の女子が飛び込んできた。


 見事に前転で着地したその人物が、颯爽(さっそう)と立ち上がる。


「シュナイダー恵美、見参!」


 八岐以外の男たちが全員「誰?」と呆気にとられた。


「だりゃあーーー! 恵美キーーーーックゥ!」


 突如、走りだした恵美が、愛里沙を捕まえている男に向かって強烈なステップキックを放った。


 ミニスカートをひらめかせ、スラッと伸びた恵美の右脚が、ものの見事に男の顔面を(とら)える。


 意表を突かれた男は鼻血を撒き散らし、愛里沙を放して尻もちを突いた。


 その隙に恵美が愛里沙を連れ、倉庫の入口に逃げる。


「我歌! あとは任せた!」


 恵美がサムズアップで叫んだ。


 その刹那。


 我歌の右脚が大熊の股間を(したた)かに蹴り上げた。


「うげぇぇぇ!」


 大熊が悲鳴を発し、悶絶する。


 我歌の動きは流れるように続く。


 大熊の後ろに立つ男の喉を右裏拳で叩き、木刀を落とさせた。


 それを瞬時に拾い上げる。


 (かすみ)の構えを取って、残りの男たちをにらみ付けた。


「さあ、お仕置きの時間やで」










 








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