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賭博者

作者: じょなさん

神は、いる。

僕はそう確信している。

努力で解決できる問題はそう多くはない。

大半は運。

この世界で勝つためにはより多くのくじを引くしかないのだ。


くじにも種類がある。

勝ったら、自分の労力と時間を提供することによって一定の収入が得られるくじ。

外れたら破産する可能性のあるくじ。

永遠に引き続けることが可能だが、勝てる可能性がほぼ0のくじ。


この世界はくじで構成されている。

そして、僕は現在交際相手が欲しい。

交際相手という名の資産を手にしたい。

そのために僕はくじを引く。


SNSでフォロワーにDMを送信する。

「通話してみたいのですが」

ここから通話できるのは、一握りだ。

作業を効率化するために僕は一つの、プログラムを組んだ。


それはRPAに少し似ているものかもしれない。

まず、ロボに"可愛い"という定義を記憶させる。

僕が"可愛い"と定義する顔の画像を20枚ほど送り、大体の共通点を学習させる。

そして、ロボは僕が定義する"可愛い"女の子を探す。

そして、見つけたらフォロー。フォロバされたら「通話してみたいのですが」というプログラムを組ませる。

そこから先は、僕が手動で行う。

こんなことをもう何千回、いや何万回とトライした。


パチンコで言うところの、ハマり状態に等しいものだろう。

これ以上同じことを繰り返しても無駄だと分かっている。

マッチングアプリも試したがこのSNS「ブルーバード」が一番会える。

通話ができたら、あとは流れはスムーズだ。

通話→関係構築→会う→交際

これが、通話→関係構築→交際→会う

になることもある。

関係が構築できる手っ取り早い手段はやはり通話だ。

というか通話さえもできないとその子と関係を構築するのは難しいだろう。

顔が見えない文字だけの会話で何がわかる。

僕はとにかくロボに通話を誘わせた。


くだらない。

馬鹿げている。

だが僕は飢えている。

彼女という資源に枯渇している僕は、精神的に弱りそうになったらコンカフェやガールズバー に赴く。

"女性"に話を聞いてもらうことで多少の鬱憤は、解消できる。

もちろんこれが気休めにしかならないし、いくらコンカフェ嬢やガルバキャストに話を聞いてもらったところでその子との関係が発展するわけではない。


僕は、店内でまるでおもちゃについて語る幼稚園児が如く、店員に語った。

10分。僕が店に滞在した時間は10分。

ドリンクは、注がなかった。誰かと話したいわけじゃないから。ただ話を聞いて欲しかっただけだから。

この行為を配偶者や友人にしたら確実に嫌われるだろう。

しかし、10分。

込み上げる言葉という言葉を1人の少女にぶつけるだけだ。

眼前のキャストは苦笑いで僕の話を聞いて「すごいねー」と淡々と言っていた。

それで満たされるのか?自問自答した。

それで本当にいいのか?と。


・・・

コンカフェまでの交通費やチャージ料金、ドリンク代、この金を他に有効活用できる手段は他にあるだろう。

具体的には、…パチンコ…。

パチンコというくじを僕は引く。

CRA海物語3R。

近所のパチンコ屋の3Rは、1回転目でいきなり当たり3000円分勝ったことがある。

しかも3日連続で勝ったことさえある。

だから僕は今日も行う。負けた。

1000円の負け。

翌日も打った。翌日は500円だけ賭けたが、これも負けた。


運がないのだろう。

もちろん、"今のところ"は、収支はプラス。

連日勝ち続けたため、少しだけ余裕があるんだ。

しかし、僕の脳裏に一つの言葉がよぎる

"働け"。僕は働きたかった。

現場仕事の末、肺を潰し、業務継続が困難になった。その時は、それが思い切り業務に支障をきたすため、業務を辞めざるを得なくなった。

続けたかった。体も心も限界を迎えていたが、それでも僕は…続けたかった。

体を壊してからは休職に休職を重ねる日々だった。

もしかしたら…なんてことはなかった。

現場の状況や痛みは、増すばかりだった。

メンタルも壊れかけだったかもしれない。

突然涙が止まらなくなることさえあった。

吐き気で食事が食べられなくなることもあった。


やめたのだからこれ以上グチグチ言うのは流石に女々しい。やめよう。


現在は就職活動という"くじ"を引いている。

就職活動は、人生で何度も経験があるからそこまで苦ではない。

唯一苦と思うのは、やはり"採用見送り"だ。

死ぬほど業界研究して、頭捻って考えて作り上げたES、職務経歴書…それなりの給料を狙うと弾かれる。


それこそ、一社だけ即内定をもらった所があるがコンプライアンスがクソ過ぎた。

あと労働環境を見せてもらったが思いの外劣悪だった。

だから僕は、期待値の低い「外資系」企業に応募することにした。

交際相手を見つけるという部分において優位に働くだろうと予想。


しかしだ。

しかしである。受からない。

書類でほぼ弾かれるが、たまに書類選考が通ることもある。

んで、一次面接で弾かれる。マジで何でだよ。悔しさを噛み締める。

人生をどこで踏み間違えたのかを僕は存じ上げてないが、とにかく、悔しい。


僕の現在は、錯乱状態に等しいものだと言える。

こうしてメンタルが削られていく中、保有していた暗号資産は下落。

ただただタバコの量が増える。

そして、交際相手にも別れを告げられ、僕はもうおかしくなってしまいそうだった。


ただ、手元にはショートピースがある。

1本28円のこのタバコだけは、心を和ませてくれる。

そして、僕は今日も神頼みをするのだった。


「今日こそはくじが当たりますように」


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