担当の教官、水谷との出会い
挿絵を追加してみたのですが、
同じ挿絵ってムーンライトノベルズと小説家なろうに同時には投稿できない!?のか、うまくいかず 別々にみてみんに投稿をしてみました。
狐面そのものは可愛らしさを意識しましたが、構想を現実の絵にすると
ホラーじゃないのにホラーみたいになってしまいました……
完成した状態の絵を3枚重ねて、2枚を削って一番下の画像をチラ見せしているので(実際はそれ以上ですが)雑な絵の割には中々大変でした…
ここは、海の底だ。そう感じるほど、地上へと向かう“エスカレーターのようなもの”は長く感じられた。地中深くから地上へといざなう“それ”は、この世界ではなんと呼べばいいのだろう。
「どうしよう……」
目覚めたら、見知らぬ場所にいた。どんな状況なのか、自分が何者であるのかさえわからない。鏡の前に立ってみると、そこには、柘榴石のように赤い長いウェーブの髪に、長い睫毛に鮮やかな青の瞳。豊かに張った胸もとからくびれた腰、肉感的なお尻に、すらりと伸びた長い手足……をした、とびきり美しい女が映っていた。
「緋宮 蓮華……」
ベッドサイドに置かれていたIDカードらしきものには、顔写真つきでそう記載されていた。日付表示のある時計も、文字も何もかも、前世と同じ世界ではないかと錯覚しそうなほど よく似ている。
蓮華が今こうしてエスカレーター?に乗っているのも、ベッドサイドに置かれていた、今日のタイムスケジュールのなかに「担当教官による面談」の記載があったためだ。
IDカードを見せ、空港で搭乗口に向かう前に受ける保安検査のようなボディーチェックを受けた後で、小型バスのような車へと誘導された。座席の周囲には窓がひとつもなく、中からは外の様子が全く見えない。どこに連れていかれるのか……不安を感じはしたものの、しばらくするとバスは止まった。運転手は蓮華に降りるよう促し、「そのコンビニ、道路挟んだ正面にあるビルの地下の店ですよ」と、教えてくれた。
――――
指定されたカフェバーの扉は開けられていた。カウンターやテーブル席にほかの客は一人もいなかったものの、オープンキッチンの側に、落ち着いた雰囲気の女性を見かけて蓮華がホッとして息をついた時だった。
もふっ!
「きゃ!?」
突然、右耳~肩にかけて、やわらかい感触が押しつけられて、蓮華は思わず声をあげた。
(な、何?)
タオル生地で肌触りは心地よい。……そのためか、恐怖心は感じなかった。ちらっと見ると、手作りらしいクマのぬいぐるみの顔が横にあった。
(どうして、クマがここに?)
数秒の沈黙の後、ぷっ……くすくす、と、誰かが笑う気配がした。
「ごめんごめん、ビックリさせちゃったね。」
これでも、かわいい縫いぐるみを選んだんだよ~。と言って現れた男を見て、蓮華は固まった。
(お面!?)
声をかけてきた初対面の人間が、仮装イベントでもなんでもないのに、仮面をつけている……というのは、なかなか衝撃的である。それでも怖い印象がなかったのは、男がつけていた白い狐の半面は目の縁取りはやわらかいピンク色で、優しく可愛らしい雰囲気だったせいかもしれない。全体的に小さめで、頬や口元の表情はちゃんとわかる。
「素顔を出したくない理由があって……」
失礼なのは分かってるけど、ごめんね、と男は頭を下げた。
「僕は水谷と言います。とりあえず、この時間はウチの貸し切りにしてあるので。お好きな席にどうぞ。緋宮蓮華さん。」
狐面をつけた男は、蓮華の担当教官だとと名乗った。
テーブル席の正面に腰かけた水谷は、左手の指で右肘をトントン……と叩いている。
(何か、気になることをしてしまったのかな……。)
面接、ではなく面談である。それでも少しだけ、距離感のようなものが開いたような気がして、蓮華は心細いような気持ちがして戸惑った。
(正直に打ち明けた方がいいのかな。)
狐面の向こう側で、水谷がどこか遠いところを見ている気がした蓮華は、 記憶がないことで、不適切な対応をしてしまったのかもしれない、と思ったのだ。
「すみません……実はわたし、(記憶が)ちょっと混乱してるみたいで、自分がどういう状況なのか……」
不安げな蓮華の様子に水谷はふと顔をあげると、蓮華を見て、なんとも形容しがたい微笑みを浮かべた。
「……いいよ、大体、わかったから。」
それじゃ、説明を始めるね……と、水谷はすっ、と蓮華の目の前のテーブルに資料を置いた。
―――――
資料に目を通すなかで蓮華に理解できたのは、以下である。
①自分が前世で暮らしていたような、ふつうの社会……「表社会」ではなく、その裏で密かに存在する「アンダーグラウンド」と呼ばれる世界の住人であること。
②(表社会の)秩序を脅かす存在から、表社会を守る“番犬”と呼ばれる組織が存在し、そこが(転生後の)新たな自分が、これから生きる場所であるようだということ。
③表社会の“番犬”と呼ばれる組織の職務は、主に、表社会を脅かすような犯罪行為に走るアンダーグラウンドの人間や組織を取り締まり、制圧することであること。
④アンダーグラウンドと呼ばれる世界には、表社会から流出してきた銃器などのほかに、表社会ではほぼ存在しないものとして扱われる、超能力のようなもの……“特殊能力”を持つ人間も多く存在し、その“能力”を、犯罪行為に悪用する個人や組織も後を絶たないようである……ということ。
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胸の谷間を伝って腹のあたに虫が入ったのが分かった。大きいゴキブリのような虫の姿を想像するとそれだけで気がおかしくなりそうで、必死に自分をごまかした。誰かの悲鳴が聞こえる。
……説明を受けた、あの時は、まさか任務初日にこんな事態になるなんて想像してもいなかった。
「水谷さんが、……反対してたわけ……だ、」