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大王は神にしませば  作者: 赤の虜
第二章 王立術理院
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第三十九話 帰還

 


 日が明けて、無事休日中に王都に帰還したカリム達『珠玉の原石』は一切の寄り道をすることもなく、ギルドに向かった。

 音を立てて、ドシドシ入り、忙しそうに客対応に追われる美形の受付嬢とは違い、閑古鳥が鳴いている髭面のギルド長の姿を目にして、カウンターを叩きつける。


「なあんだ、お前らか。どうした? とうとう依頼に失敗でもしたのか? まあ、王立術理院の学生だけで構成された期待のパーティーとはいえ、お前らじゃあまだハイドリザードは早かったっていう話さ。そう落ち込むなよ。……ほれ」


 ギルド長はニンマリと笑って、手の平を見せ、暗に違約金を払えという要求してくる。

 非常に癇に障る態度にカリム達は顔を見合わせて、頷き合い、モンドがリュックを開き、ハイドリザードの討伐証明として一番代表的な頭部をギルド長の手に叩きつけた。


「ぎゃあああ! 何しやがるって……これはハイドリザードじゃねえか! なんだ、討伐してやがったのかよ」


 残念そうにしているギルド長に、モンドは続けて、拳くらいの薄緑の魔石をカウンターにそっと置いた。


「うん? それは魔石か……ってなんだよ、この色。風の属性持ちか。何の魔物の魔石だ?」


 カリム達は一斉にハイドリザードを指差し、カリムが告げる。


「ギルドが調査した上で、ハイドリザードだろうとは聞いていた。……だが、属性持ちだなんて聞いてなかったんだが……」

「げっ……風属性持ちのハイドリザードだったのか。となると脅威度が二段階は上げるぞ。元々あいつは六等級だから四等級相当、本当によく勝てたな!」


 すごい、すごいと褒めるばかりのギルド長に、アルタイラが頭にチョップをする。


「ギルドの調査不備で死にかけたんだぞ、先に謝りな、おっさん」

「おお、そうだった。すまなかった!」


 頭を下げ、謝るギルド長。

 しかし。


「俺は謝罪はいらんから、ギルドを寄越せ」

「いくらこっちの情報が少なかったからとはいえ、ギルドをやれるか! ガキの駄々じゃねえんだ。もっとまともな要求をしろ」

「ちっ、なら俺はギルド長秘蔵の武器で」

「あ、それいいな。じゃあ、俺も」


 タムマインが便乗し、モンドとアルタイラは謝罪だけで満足したようだった。

 最初は渋ったギルド長だったが、粘り強く文句を言い続けるとカリムにはウインドバードの羽と魔石を用いた魔弓、タムマインにはサンダーワイバーンの鱗でつくられたガントレットをくれた。

 

「くそう、俺の若い頃に手に入れたコレクションがあー」


 とギルド長は悲嘆にくれ、受付嬢達から騒ぐだけなら奥に引っ込んでいろと連れて行かれたが、カリムとタムマインの気分が良かった。

 期せずして、大金をかけても早々に手に入らないようなお宝を手に入れてしまったのだ。嬉しくもなるだろう。

 学院の正門を潜り、パーティー『珠玉の原石』の最後の活動は終わった。

 寮に戻る前に、名残惜しくなって、カリムは何とはなしに話しかけていた。


「今回の依頼、いつも以上に苦戦したけど楽しかった」


 皆が頷き、タムマインはギルド長にもらったサンダーワイバーンのガントレットを得意げに掲げて、アルタイラに見せつける。


「アルタイラ、見てろ。俺はこれを使いこなして、お前のピンチに駆けつけてやる」

「すぐ調子に乗るのはやめなさい。……まあ、期待しないで待ってるわ」

「いや、しろよ!」


 そこから、これといって話題が出ず、カリムが締めた。


「じゃあ、また」


 頷き、別れた。


 +++


 次の日。

 アルタイラとモンドは学院にホームルームになっても、一向に教室に現れることはなかった。

 ホームルームの後、慌ててカリムが教員を引き留め、尋ねると二人は今朝王都を去り、ブンガ領の故郷へと帰ったらしい。

 別れはカリムが思っているほど早かった。

 朝の授業には身が入らなかった。珍しくカリムは教員に指名されたとき、正解を解答できなかった。

 昼休みになり、王立術理院の庭でタムマインとカリムは昼食をとる。いつもはここにアルタイラとタムマインがいて、四人でワイワイと騒いでいたけれど、今日は静かだ。


「……武舞祭まで時間があるんじゃねえのかよ」


 首に下げたネックレスを掴み、タムマインは愚痴る。


「昨日、俺はモンドから少し事情を聞いたが、それほど予断を許さない状況だったということだろう」

「…………」


 タムマインはそれから黙々と購買のパンを四つ、あっという間に平らげてしまい、腰を上げ、食事中のカリムを見下ろす。


「時間がねえ」

「まだ昼休みが終わるには時間が随分あるぞ」

「違う、そういうことじゃねえ。俺はたとえどんなときでも、あいつが助けを求めたらいつでも助けにいけるくらい強くならないといけねえ」

「それで?」

「部活にもっと参加する。だから、一刻だって無駄には出来ねえ。武人の集いにはまだ俺が対処できねえ戦い方をする奴やカリムよりも上手い戦い方をする奴もいる。そいつらを片っ端から倒して強くなる。武舞祭も俺が優勝する」

「大きく出たな。当然のように俺も倒すということか?」

「ああ。……まあ、カリムにはいつも勝ってるから余裕だろうがな。前にもジュリアンって王族に負けてたし」


 カリムは食事を中断し、手でタムマインを追い払う。


「なら、早く行け」

「言われなくてもそうする。……これからはライバルだ!」

「ああ」


 タムマインが走って第二演習場のある方に向かっていった。姿が完全に見えなくなってから、カリムは一息吐いて、空を見た。


「俺はこれからじゃなくてずっとライバルだと思ってんだがなあ。……ああっ、腹が立つ!」


 カリムの怒声は周囲の学生を驚かせたが、カリムは気にも留めなかった。


「刻印術式だけだと限界がある。武舞祭は式符の使用は認められていない。ならば、理術を独学が進めるか? いや、それだと効率が悪い。……心当たりを当たってみるか」


 カリムらしく、不足している能力を補っていき、抜け目をなくすという方針で突き詰め始めていた。

 武舞祭まで残る期間は約一月。各々が強さを目指し、修練を積んでいく。

 そういえば、言ってませんでした。

 拙作を読んでいただき、おもしろいと思っていただければ筆者の励みになりますので、評価をしていただければ幸いです。終わり。

 (; ・`д・´)

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