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大王は神にしませば  作者: 赤の虜
第一章 雲散霧消
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第十二話 霧狸の社探検隊とキング・ライダー⑦

うーん、なかなかキング・ライダーが終わらない( ;∀;)

 ノルトリムを木陰に隠し、カリムとタムマインはキング・ライダーの隙を伺う。

 警戒を続けるキング・ライダーは追って来ることはなく、静かに襲撃者の動向を待っていた。霧狸によって視界が良好なカリムやタムマインと違って、キング・ライダーには周囲全てが霧に包まれており、追跡は愚策であった。

 しかし、それでもカリム達にとっては格上の相手であることに違いはない。初対面のときにしても、仲間の山賊を殴り倒した動きは師であるガルムほどではないけれど、底知れない実力差を感じさせた。 

 実力差を自覚した弱者は慎重になるものだ。むやみやたらと特攻しても、自分には計り知れない動きで対応され、気づけば負けているなんてよくあることだ。

 幸いカリムとタムマインはガルムという格上との修行で、少なくともその感覚を身に染みて感じたことがあるので、慎重だった。

 けれど、だからこそ動けないジレンマに囚われてもいた。これが結果的にキング・ライダーの集中力を消耗させているとは二人は気づかないだろう。仮に気づこうとそれでもまだ実力差を埋めるほどのアドバンテージにはならないので、気づく必要もないけれど。

 

「やっぱりあの虎はズルいだろ。同年代の怪力野郎といい、魔物に騎乗した山賊といい、運がない」

「おい、虎をペットした山賊と並べるな。俺は普通枠だ」

「才能のある奴はみんなそう言うんだよ、クソ野郎」

「口喧嘩してる場合じゃねえだろ。どうすんだよ、あいつら。何か作戦考えろよ。天才君」

「酷い嫌味を言われたな。どうしようもないだろ。情報も足りない。とりあえず、余裕を持って奇襲、情報が出揃ったら対応を決める。行け、肉壁」

「お前も来いよ。流石に一人だと死ぬ」

「…………」

「冗談じゃねえからな。命賭けてるんだからマジでお前も来いよ!」

「当たり前だろ、馬鹿」

「野郎……」


 二人は二手に分かれてから、駆け出した。一方向から向かっては虎が操る白炎の餌食になるだろうことは容易に想像できたからだ。

 そして、当然ながらカリムは手には投擲用の石を用意している。

 格上を相手にするとき、相手の間合いの外から攻撃できる手段があるというだけで、戦闘の組み立てが少し楽になる。日頃からタムマインやガルムと格上相手が多いので、こういった思考が身につき始めたカリムである。慣れもあり、命中精度もなかなかに成長している。

 虎の目を狙って、渾身の一投を放つ。

 しかし、虎は口から白炎を吐くことで、投石を防ぐ。

 次いで反対方向からタムマインがキング・ライダーに斬りかかるも、槍を片手で薙ぎ払われ、一蹴されてしまう。

 

「通用しないか」


 カリムは冷静にキング・ライダーと虎の戦闘能力を分析していく。

 ただし、地面に落ちている石を虎かキング・ライダーの目を狙って投擲し続けながら。

 キング・ライダーと虎は見えない射手の投石に対応しながら、しぶとく飛び掛かってくるタムマインへの対応に追われた。


「ええい、鬱陶しい! 木剣持ったガキがともかくさっきから石を投げてる奴は覚えておけよ。絶対にただじゃおかねえからな!」

 

 キング・ライダーが叫んだタイミングで、カリムは攻撃をしながらタムマインと回収し、一度距離をとる。

 虎はどうやら白炎のブレスを吐くことができるらしい。また、この白炎は口から出してから、球体などにして一定時間維持することもできるようだ。射程距離は長いと考えていいだろう。

 そして、キング・ライダー。意外だったのはこの男だ。粗野な印象しかなかったが、山賊とは思えないくらい流麗な槍捌きで、タムマインをあしらっていたし、死角からの投石も全て槍で弾いていた。芸達者すぎる。

 

 カリムとタムマインは互いに感じた情報を共有していく。カリムは遠距離攻撃の対応から、タムマインは近距離攻撃の対応から、印象を伝え合う。


「虎にしても、キング・ライダーにしても、奇襲への察知能力と対応能力が異常だ。攻撃の組み立ては複雑にしないとかすり傷すらつかないかもしれない」

「だろうな。真っ向勝負は絶望的だ。霧のせいで明らかに反応が遅れているのに防御が間に合ってやがる。何よりキング・ライダーの対応が早い。何で魔物より人間の方が反応早いんだよ」

「なるほど。となると、分断は絶対条件として……キング・ライダーは俺が請け負うよ。お前は虎を頼む」

「……まあ、それしかねえか。でも、大丈夫か? あいつ、本当に強いぞ?」

「霧に紛れて遠距離攻撃続けるに決まってるだろう? 早く虎を倒してこい」

「無茶言うなよ……俺の相手も火を吐く虎なんだけど」

「俺がやられたら、キング・ライダーがそっちに向かうだろう。そこがお前の最後だ」

「いや、粘ってくれよ」

「善処はする。……絶望的だが」


 話し合って、カリムとタムマインは石を片手に、もう片方に木剣を持っていた。


「まさか、カリムの戦い方をすることになるとはな……」

「俺達のアドバンテージはこの濃霧と霧を見通す目だけだ。最大限に利用するなら、遠距離攻撃で崩して分断するしか勝ち筋はない」


 さっき同様にカリムは投石で的確に虎とキング・ライダーの目潰しを狙うが、弾かれる。

 違うのはここからだ。

 近距離まで近づいたタムマインが斬りかからず、至近距離で大きめの石をキング・ライダーの腹に投擲し、叩き込んだ。

 ただでさえ、霧で視界が悪い中、至近距離で怪力のタムマインの投石をくらったキング・ライダーは虎から落ちることになった。

 そこに間隙を縫うようにカリムの投石がキング・ライダーの元に向かおうとした虎を足止めする。そして、タムマインは体勢が崩れたキング・ライダーに木剣を押し込み、がむしゃらに虎とキング・ライダーを引き離しにかかる。

ノルトリムを救出したように、セナを避難させることは出来なかった。しかし、距離は離すことには成功していたので、カリムは後でセナに謝ろうと決め、今は戦いに集中することにした。


「魔物退治頼んだぞ」

「見かけ詐欺の槍使いだが生き残れ」


 そこから、両者の相手をそれぞれ入れ替わった。

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