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大王は神にしませば  作者: 赤の虜
第一章 雲散霧消
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第十一話 霧狸の社探検隊とキング・ライダー⑥

キング・ライダー一行襲撃まで。今度はカリム側から。(-_-メ)

 辺り一面、白一色。

 勢いつけて駆け出そうものなら、突如現れた木々と正面衝突しかねない森の中を二つの影が駆けていく。

 一人は白髪の少年、カリム。

 もう一人は黒髪短髪の目つきの悪い少年、タムマイン。

 二人は迷いなく森を駆けていく。足は羽でも生えているかのように軽く、視界は踏み出す一歩が安全であることを認知していた。

 そこから少し先に、黒珠の神威獣であり、この森の主である霧狸が一歩ごとに「キュッキュッ」と小気味よく声を出しながら先導役を務めている。

 

 そして。

 先導役の霧狸が足を止め、木々に隠れながら、促すように顔を振る。

 促されるままに木々に隠れて伺うと、ギリギリ見えるところにキング・ライダーとその部下一人、そしてカリム達の目的である人質のノルトリムとセナの姿が見えた。

 短時間で森の中心部から出口付近まで一気に駆け抜けてきた二人だったが、息は上がっていなかった。

 二人は確信している。どうせ霧狸様が助けてくれているのだろうと。

 完全な思考停止だが、今はそんなことを考えている場合ではないので構わないだろう。


「キュッキュ!」


 仕事はしたから、あとは頑張ってね!

 とでも言わんばかりに霧狸は軽やかに踵を返し、森の奥へと戻っていった。


「ありがとうございました、霧狸様」


 カリムとタムマインは短く、そして気づかれないように小声ではあったけれど、霧狸へと心から感謝を告げた。


 キング・ライダー達の姿を確認し、少し様子を伺っていた二人はあることに気がついた。


「おい、カリム。さっきからあいつら何やってんだ?」

「さあな。まあ、大方予想はつくが……」


 カリム達はキング・ライダー達を発見してから、ほとんど移動する必要がなかった。

 というのも、キング・ライダー達がさっきからずっと円を描くように同じところをグルグルと回っているのだ。これでは追跡する必要すらなく、逆に不審に思い、様子見すらしてしまったほどである。


「迷いの森を客観的に見ると、ああなるということだろう」

「神威獣ってとんでもないんだな」


 失礼だと思ったカリムだったが、彼も確かにとんでもないと思ってしまったので、注意は出来なかった。

 二人は心の底から、霧狸が敵でなくて良かったと安堵した。

 一生森の中を迷い続けるなど、悪夢以外のなにものでもない。

 とはいえ、だ。

 いつまでも放っておくというわけにはいかないだろう。

 今は神威獣が好意的に協力してくれているけれど、その気まぐれがいつまでも続くと思えるほどカリム達と霧狸には絆はなかった。彼らにとって、神威獣は完全な上位存在であるので、そんな図々しい考えを抱くことができなかったのだ。

 だから、計画を立てる。あの只者ではないであろうキング・ライダーを相手に無策に特攻なんてしない。体格で負け、技量も相手が上で、挙句に魔物の騎乗しているのだ。油断できる要素なんて全くなかった。

 これは修行ではなく実戦である。必要なのは蛮勇ではなく確かな勝利だ。


「霧を利用しない手はないよな」

「当たり前だ。正面から戦ったら一合も耐えられん。霧に紛れて奇襲一択だ。これで確実に相手を減らす必要がある」

「誰を狙う? 初撃でキング・ライダーを倒すか?」

「いや、キング・ライダー以外……出来ればフォレストウルフと騎手をまとめてやりたい」


 カリムの考えに、眉をひそめるタムマイン。


「おい、カリム。まさか……姉の命を優先しようってわけじゃねえだろうな?」


 剣吞な雰囲気の仲間に、カリムは舌打ちする。


「違う。姉さんだけ助けても意味がない。前にも言っただろう? 俺達は庶子だ。そして、その中でも目を懸けられているのは弟のサワリムだけだ。仮にここでセナに何かあろうものなら、領主に首を斬られるだろうよ。そして、家のアレは抗議すらせず、むしろ是非ともやってくれとでも言うんじゃないか」

「……すまん。変な言い掛かりだった」

「いや……俺も感情的になっていた。この状況でする話じゃあなかった」


 それから二人はキング・ライダー達の様子を見ながら話し合い、計画を立てる。

 

 

 ――――。

 霧を味方につけ、木剣を握りしめ、奇襲する。

 ちょうどキング・ライダーが部下の頭を叩き、互いに騎乗する魔物との距離が空いて頃合いだった。

 狙うはキング・ライダーの部下とフォレストウルフ。背中にはカリムの姉であるノルトリムが乗せられているので優先順位はノルトリムを助けた後にフォレストウルフ、山賊となる。

 タムマインが先頭を進み、カリムは後から進む二段構え。

 しかし、仕掛けるのはカリムが先だ。

 事前に拾っておいた石を手首のスナップを効かせて、キング・ライダーとテンマに投擲。ホワイトフレイムタイガーのテンマが白炎の壁を築き、四方を警戒している。

 その隙にカリムは次の石をフォレストウルフの目元に投擲し、命中させる。

 突然の激痛と視覚の一部を奪われ、フォレストウルフは山賊とノルトリムを振り落とす。

 ノルトリムの小さい体躯が地面に打ちつけられる前にタムマインが滑り込む。


「あぶねえ! タイミングが早いんだよ、カリム!」

「悪い! なんかいつもより身体が軽すぎて、計算が狂った!」


 タムマインに謝りながら、カリムは暴れるフォレスト・ウルフの喉元に木剣を突き出し、首を傾げながら、フォレスト・ウルフを倒す。


「やっぱり身体能力がおかしいな。急所とはいえ、木剣がフォレストウルフに突き刺さるなんて、こんな力は俺にはない」


 そして、同じように首を傾げている者がもう一人。


「山賊……飛んで行っちまった」


 タムマインは魔物から落っこちた山賊の腹に蹴りを叩き込んだのだが……。

 山賊は文字通り、飛んで行ってしまったのだ。

 日頃から、カリムから散々怪力だの言われているタムマインだったが、流石に成人男性を蹴りで吹っ飛ばすレベルの怪力ではなかった。あくまで大人並に力強い子どもというだけだったのだ。


「「薄々思ってはいたが、霧狸様……身体強化もつけてくれたのか」」


 いつもと違う身体の感覚に戸惑いつつも、カリムとタムマインはノルトリムを連れて、ひとまずキング・ライダーから距離をとった。


「さて、神威獣の妨害の後は何が出るやら……。人の枠を出ない奴なら、鬱憤晴らしに命をもらおうか!」


 残るはキング・ライダーとテンマのみ。

 しかし、最初からこのコンビをどう攻略するのかが問題である。


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