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大王は神にしませば  作者: 赤の虜
第一章 雲散霧消
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第十話 霧狸の社探検隊とキング・ライダー⑤

 いきなりバトルするのもなんだかなぁと思って、先にキング・ライダー側から書いてみました。

 濃霧の中、ホワイトタイガーに跨った大柄な男が、深々とため息を吐く。片手には槍を持ち、視線は常に周囲を伺うことを止めない。


「出られねえ。まったく出口が見当たらねえ。おいおいおい、これはどういうことだ? ええ、どう思うよ、テンマ?」


 白い毛皮の防具を身に纏い、頭をポリポリと掻いた後、相棒の背中を撫でながらキング・ライダーは語りかける。

 このホワイトタイガーは彼の刻印術式である『操魔術式』によって従え、長く連れ添ってきた魔物であった。

 種族はホワイトフレイムタイガー。白炎を操る虎で、キング・ライダーの地元であるアマガハラ王国カイルガ領の一帯に君臨していた危険度の高い魔物であり、従えたときの苦労と長い年月を共にしたがゆえに愛着のある相棒だった。

 そんな相棒は気持ち良さそうにキング・ライダーの手に頭を擦りつけるばかりで、話など聞いていなかった。所詮は魔物。神威獣である霧狸のようにはいかない。とはいえ、必要最低限の指示は聞いてくれる。

 

 キング・ライダーが辟易としている理由は単純だった。

 行きはカリム達の後を追って、すいすいと来ることができたのに、帰りは一向に霧狸の森から脱出できなかったのだ。

 後ろで気を失ったソーカルド領領主の三女セナ・ソーカルドを見て、キング・ライダーは不満そうに鼻息を吐く。

 小遣い稼ぎのつもりだったのに、こんなところで足止めなど災難だと思わずにはいられなかった。

 

「この森ってこんなに大きかったんですね。行きは気づきませんでした」


 媚びるように笑みを浮かべる部下に、キング・ライダーは天を仰ぎ、再びため息を吐く。


「そういうことじゃあねえんだよ。ちょっと考えたらわかるだろうが……ここは霧狸の森。そして行きは楽に来たのに、帰りはなかなか戻れない。つまり、神威獣が何かしているんだろうぜ」

「マジですか! 霧狸っていやあ黒珠の神威獣ですぜ。最下級の神威獣にそんな芸当ができるなんて思えませんがねえ……」


 訝しげに呟く部下の頭をキング・ライダーは軽く叩く。しかし、大柄のキング・ライダー基準なので部下は騎乗しているフォレストウルフから落ちかけていたが。


「何を馬鹿言ってやがる。アマガハラ王国は神威獣なしだと成り立たねえ。神威獣は偉大なのさ。国が勝手に決めたランクなんざ当てにするな。黒穴近くの高濃度魔素に身一つで順応してるんだ。守られないと狂って死ぬ魔物や人間と同等なものかよ」

「へえ、そうだったんすね」


 上の空の部下を見て、やはりこいつらとは会話する意義がないと舌打ちするキング・ライダー。

 彼は焦っていた。

 予定外の神威獣の妨害は、いつ終わるかなんて想像がつかない。神威獣との正面衝突なんて以ての外だ。加えて、先ほどからテンマの嗅覚や聴覚に任せて脱出を試みても、どこにも辿り着かない。つまり、キング・ライダーの意思で脱出する目途がない。止めに間もなくこのソーカルド領を襲う魔物のスタンピードである。

 今まで様々な修羅場を潜り抜け、ときには複数の刻印騎士に囲まれても生き残ったキング・ライダーをして、スタンピードに巻き込まれた経験はない。不安に思うには十分だった。

 

「幸運が舞い込んできたと思ったんだがなあ……釣り餌だったかもしんねえな」


 一寸先は霧。

 どこもかしこも真っ白で、足場だけは木々のせいでとにかく悪い。

 ここは依然として、霧狸のテリトリー。

 木々が揺らぐ音がして。

 大地を踏みしめ、駆け出す音がして。

 彼が使役するフォレストウルフと部下が一人、ぼんやりと大地に沈む。

 生死は不明。しかし、どちらにしても意識は飛んでいるようなので、戦力には数えない。

 深い深い霧の中、残されたのはキング・ライダーとホワイトフレイムタイガーのテンマ、そして人質のセナだけになった。もう一人の人質は連れ去られたか、大地に投げ出されたか、判断はつかない。

 テンマは音から襲撃者が立ち去ったであろう方向を割り出し、その判断にキング・ライダーも従って、槍を構える。


「さて、神威獣の妨害の後は何が出るやら……。人の枠を出ない奴なら、鬱憤晴らしに命をもらおうか!」


 キング・ライダーと襲撃者が会敵する。


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