初陣 2
輩をやり過ごした僕らは、気を取り直して総務課の窓口に向かった。
総務課で僕らが討伐隊に参加する旨を伝えると、受付の女の人は名簿を取り出した。
その名簿には、「剣術者」と「想現法者」とある。
「あなたは剣術者として登録でいいですか?」
僕を見て、その女の人は言った。もちろんそれでいいのだが、もう一つの方が気になった。
「想現法って何ですか?」
ここまで来ておいて野暮な質問かも知れなかった。それでも、受付の女性は快く教えてくれた。
「剣術者援護のための技術の事ですよ」
「それって、私でも出来ますか?」
隣にいる葵が、僕も感じた疑問をさっと聞いた。
「想現法者として登録している人の多くは女性です。討伐決行までまだ日にちもありますし、今出来なくても間に合うと思いますよ」
聞いた途端、葵は僕の方を見た。僕が同意のつもりで頷くと、葵は参加します、と一言受付の人に言った。
「ありがとうございます。」
続けて彼女は、討伐決行が三週間後である事、剣術も想現法も教えている施設がある事を教えてくれた。
「葵、良かったの?」
一歩間違えば命に危険が及ぶ所に行く葵に、その意志だけは確認しておきたかった。中途半端な意志で行けば必ず命が危険に晒されるだろうから。
「旅に出た時点で覚悟は出来てるよ」
葵は僕を宥めるように言った。僕に心配させないためだろう。
「何もしないのは嫌だから、逆に出来ることがあって良かったよ」
「何もしないのが嫌」という言葉を、葵はこの世界に来てからよく繰り返す。それは僕に気を使っている所もあるだろう。この世界に来て、葵と行動するようになってから、もう3ヶ月以上経つ。僕はもう振られたことを過去のことに出来ているけれど、振った側の葵はずっと申し訳ない気持ちがあるのかも知れない。気にしなくていいよと言ってあげる人もいるのかも知れないが、僕は特に触れない方がいいと思っている。あえて過去の話を出すべきではないだろう。だから僕は、葵がその罪悪感を振り切れるまで、彼女の意志を尊重しようと思っている。
「明日から忙しくなるな」
「そうだね...」
外は夕陽が綺麗だった。今日泊まる宿まで、僕らは翌日からの緊張感を抱きながら歩いた。