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決戦 3

  攻撃は、午前2時に始まった。

鉄砲隊が一斉に門に向け射撃した。

その後反撃はなかった。

見張りで立っていた数名のシミラはその攻撃で倒れたようだった。

それを皮切りに、歩兵隊と騎馬隊が一斉に門に突入する。

僕もその流れの中にいた。

村に入ると、そのまま教会に向かった。

教会はシミラの指揮所となっている。

そこをまず抑え、それからシミラの出方を見る予定だった。

しかし、シミラは身を隠す場所として教会以外にも建物を破壊せずその殆どを残しており、僕らの進軍は村の中心部に向かうに連れて慎重になっていった。

そして、村に突入してから家が増えて来たと思う頃。

先頭の歩兵隊は、左右の建物から射撃を受けた。

数人がそれに倒れたようだった。

ここは戦場なのだと、僕には倒すべき相手がいるのと同時に、狙われている身なのだと改めて思った。

きっとこの場に来るまで、心のどこかでは軽く考えていたのかもしれない。

僕は恐怖で過呼吸になりそうだった。

隣にいた隊長が、そんな僕の背中を叩いて励ます。


「大丈夫だ、油断するな」


必死に心を落ち着かせる。

そうだ、僕は戦いに来たんだ。

旅の仲間と生きて帰るために。


隊長の指示で、鉄砲隊は先ず建物に隠れるシミラに向かって、手当たり次第に射撃を命じた。

反撃はなかった。

それを機と見て、隊長は総攻めを指示した。

教会に向かって馬を走らせる。

周りで、歩兵隊の人が倒れて行くのが見える。

だが、僕は無我夢中で走った。

隊長に付いて行きながら、片手に剣を持って全力で馬を走らせた。

そのまま教会に突っ込もうとした時、ドアを突き破ってシミラの人数が飛び出して来た。

乱戦になる。

僕はその中で、ただ必死に剣を振った。

何人かシミラを斬った。

「人」という単位で表現したのは、シミラの姿があまりに人だったからである。

まるで人を斬っているような気持ちになった。

とは言っても、その気持ちに飲まれる訳にはいかない。

シミラには、こちらが同類だという意識は全くない。

彼らからすれば僕はただの「敵」であって、撃つべき対象でしかない。

そんな状況で相手を斬ることを躊躇えば、僕が斬られてしまう。

ただ剣を握り、振り続けた。


やがて、兵は教会の二階に進んだ。

見渡す限りでは、兵の数は始めの三分の二ほどであった。

しかし、そこに意識を向ける余裕はない。

シミラ側の援軍、つまり今僕らの本陣を撃とうとしている軍隊が下りてくる前に、この教会を取り返さなければならない。

ここからは勢いがなければいけない。


二階に進んだ所で、シミラ側から一斉射撃を受けた。

周りの人数は、ひとり、またひとりと当たり前のように倒れて行く。

僕の馬も弾を受けてしまい、暴れる馬を前に、僕はなすすべなく投げ出されて地面に叩きつけられた。

一瞬、もうダメだと思った。

倒れてしまった僕を、シミラの歩兵の1人が狙おうとしていた。

立つのが間に合っても、シミラは僕よりも大きい体躯で、僕はあっという間にねじ伏せられるだろう。

そう思った瞬間から、涙が止まらなくなった。

ここまで来て、それでも生き残れないのか。

あと一歩だというのに。


そんな時、仲間の顔が浮かんだ。

葵もレイスも、少ない人数しかいない本陣の部隊の一員として死に物狂いで戦っている。

その姿が思い浮かんだ。

身を呈して戦ったマイナの姿も思った。


いや、違う。

俺は生き残るんだ。

馬が無くなったくらいでめげるな。

不思議な力が、僕を包んだ。

斬りかかろうとしていたシミラの腕を払い、真正面から剣を突き刺し、その剣を支えにシミラの体に蹴りかかる。

シミラは、呆気なく倒れた。

それから、何故かすぐに剣を構え直せた。

そのまま、僕らの部隊の突入に紛れて奥に突っ走る。

きっとこれが、僕が本気になった姿なのだろう。

火事場の馬鹿力とでもいうのだろうか。

気付けば、目の前に敵の指揮官がいる。

不意を突かれた彼は、必死に僕と距離を置こうとした。


「逃げるなあああああ!!!」


足に剣が当たり、彼は倒れる。

すると、僕の仲間の軍勢の数人が彼を抑えてとどめを刺した。

僕も態勢を崩していたから、彼らがいなければ失敗していただろう。


勝った...。


そう思ったが、指揮官は直ぐに態勢を整える指揮をした。

全力で奪い返したこの教会を、今度は死守しなければいけない。

まだ続くのかと思ったが、それがシミラとの戦いに勝つという事だった。

奪い返した後、相手が退くまで守らなければならない。

冷静になって、当たり前のことだと思った。

僕らの部隊のうち鉄砲隊は、教会の窓などの隙間から銃を構えた。

僕らはその後ろから武器を持って、外の様子を伺った。


奪還してから、2時間以上経過した。

市街の建物の隙間からシミラの軍勢が銃を構えているのを、隊長の指揮する鉄砲隊の数名が見つけた。

が、隊長はすぐには攻撃を命じなかった。

相手に隙ができる機を見ている。

それからの睨み合いが、おおよそ1時間ほど続いた。

教会から、突然発砲音が聞こえた。

階下の鉄砲隊だった。

シミラはそれを攻撃の合図としたのか、一斉に軍を動かし、教会に向かって突入を図ってきた。

途端、隊長が攻撃を指揮した。

銃を撃つ音は、まるで雷のように地響きを交えながら、辺り一帯を包んだ。

山にある僕らの陣にも、聞こえたであろう。

敵の軍勢は、おそらく山に奇襲に行った全てがここに押し寄せている。

ともかく、これが一騎打ちということになるだろう。

止まぬ一斉射撃だが、その合間を抜けてシミラの人数は教会に押し寄せて来そうだった。

あまりにも数が多すぎる。

僕らは、そのシミラを迎え撃つべく階下に降りた。

鉄砲隊を守り、なるべく犠牲を出さずに教会を守り抜くためには、僕らは侵入してきたシミラの人数を確実に仕留めなければいけない。

おそらく、これが最後の戦いになるだろう。

剣を握り教会の扉の前に立つ。 

シミラは、それからすぐに扉を突き破って侵入して来た。

迎え撃つ僕らの軍勢は、はじめは扉付近でシミラを食い止めていた。

が、あまりにも多いその数に攻撃が間に合わず、やがて中で乱戦になった。

鉄砲隊は何としても守る。

僕はその役目に忠実になった。

どれだけ斬ったか知れない。

自軍でも倒れた人の数は多いが、指揮官がほぼ倒れたシミラは負けを悟ったのか引き始めている。

乱戦になって、2時間以上経っていた。

撤退する敵を村の外に、最終的には人間の領地から追わなければならないため、僕の隊長とその部隊はほぼ追討に向かった。

それから1時間して、山にあった本陣の司令部は教会に移った。

山の部隊が下りて来たのである。

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