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決戦

 早朝のまだ薄暗い街の中を、僕らは最低限の食料と武具とを持って出た。

この街が北に位置しているという事を実感するほど、風は冷たかった。

ここから目的地へはおよそ半日。

最新の情報は前線に最も近いリュンヌには届いていたので、前日に聞いた。

その情報によれば、僕ら人間側は占領された村から10キロ程の所に小高い山があり、そこに陣を敷いて様子を伺っているらしい。

僕らがここに来るまでに起こった武力衝突は6回。

そのうち2回は村を奪還する為に仕掛けた攻撃で、残りはシミラが陣を前進する為に行なった攻撃だという。

その4回の進攻でも、陣は後退していない。

というのも、シミラは戦争に対して慎重であり、奇襲で兵力の低かったその村を占領してからははっきりとした軍事行動は起こしていない。

4回あった攻撃も、陣を突いてすぐに引くという、守りたいのか攻めたいのかが曖昧模糊な戦い方であった。

ならばこちらが攻めて一気に村を奪還すれば良いと思ったが、シミラはそれが狙いらしい。

直近の戦争の記録でも同じような状況があった。

その時人間側は、陣を突いて後退するシミラの部隊に追い討ちをかけた。

追い討ちをかけた部隊はそのまま谷間に導かれ、そこで一斉攻撃を受けてほぼ全滅し、人間側は陣をリュンヌまで後退した。

今回の戦術もそれが狙いであろうと、誰もが見ていた。


 道中の、標高が最も高い山の頂上で小休止した。

多分これが、戦陣に着く前の最後の休憩だろう。

そこは見晴らしの良い空き地で、木の株を再利用したベンチが幾つか置いてあった。

水分を取りながら、3人で山の麓の先に見える街を見た。

街は教会をはじめ所々が破壊されているのが、遠目からでもよく分かった。


「あの街は、シミラがいる所ですね...」


深刻な声で、レイスはその街がシミラの占領下であると言った。

あの街も、元は人が住んでいたのである。

シミラは今そこに陣を敷き、こちらの出方を伺っている。

向かっているのは、その村を奪還する為の陣地である。

これからは、今まで以上に命の危険に晒されることになる。

葵とレイスは想現法の使い手として、陣に向かっている。

ひょっとすると、僕よりはまだ命の危険はないかも知れない。

想現法を使う場合、戦いの場から少し距離を取るからだ。

しかし、僕は剣士としてその場に向かう。

命を賭して戦うという言葉通り、命懸けである。

だから、この時間は葵とレイスとの最後の旅になるかも知れない。

今眠っているマイナと、共に歩く2人との最後の時間だと言えるかも知れない。

ここまでの旅路、僕は彼らが仲間だったからこそ続けられたのだと思う。

彼らと共に笑い、励まし合い、色々な街を訪ねて来れて、本当に良かった。

必ず生きて帰る。

それは自分で誓っているから、生きて帰れるように行動するつもりだ。

でも、それは運命が決めてくれるだろう。

仮に死ぬ運命なら、それには抗いたいが。

戦いの場に着いたら、逃げられないだろう。

むしろ、逃げようとすれば死ぬだろう。

相手に背中を見せればそれが隙になり、わざわざ殺してくれと相手に言っているのと変わらない状況になる。

きっと、生きた心地などしないのだろう。


この道中を、僕は最後の旅路になると思いながら歩いた。

自然は優しくその道中を導いてくれた。

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