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最後の街 2

街は、世紀を跨いだように感じた。

住宅地は整然とひしめき合い、石畳の道は、街に入った瞬間から中心部までずっと続いていた。

山を下って数分歩くとリュンヌの街だが、街の入り口には象徴的な石造りの門があった。

ひょっとすると、この世界で一番大きな、進んだ街のように思えてくる。

大都会という言葉が似合う街である。

そんなリュンヌには馬車鉄道が街の隅まで通っており、この街の名物である温泉地へもそれで45分で着くらしい。

宿に荷物を置いたら、早速向かうつもりである。


「案外早く着きましたね」


「山下ってからは早かったよね」


葵もレイスも、街の様子に感動しながら、早く着いたことに安堵していた。

山頂からこの街の眺めを見た時は、着くのは夕方になるのではと思っていた。

しかし、下りの道は非常に整備されていて登りに比べて大分楽に行く事が出来た。

お陰で昼を少し回ったくらいの時間に着くことが出来て、温泉でゆったり出来る時間が増えたので幸いだった。


宿に荷物を置いて、3人で馬車鉄道に乗り温泉地へ向かった。

温泉は、僕らが下って来た山の地熱で湧いているらしい。

その効能は特に怪我や神経痛に効くらしく、さらに筋肉疲労や頭痛にも効く。

峠越え直後の僕らにはちょうど良い泉質だ。

葵と別れ、レイスと二人で男湯に入る。

湯は露天であった。


「温泉なんて、何年ぶりだろう...」


湯に浸かりながら、レイスが言った。

細身に見えて筋肉質な事に今更気付く。


「レイスは、旅してたんだよね?」


「そうですよ。でもちゃんと開かれた温泉地って世界でここともう一か所しかないんですよ」


そう語るレイスは、どこか楽しそうだった。

旅をしていた頃に想いを馳せているようだ。


「一人で世界中回るって、大変だよな...」


「まあ確かに、山越えは本当に苦労しますね...。でも、僕の芸で喜んでくれる人が居るんですよ。それが嬉しくて」


レイスの優しい人柄が垣間見える。

だからこそ、人の笑顔が好きだからこそ彼は前線に向かうと決めた。

その意志の強さも精神力も、僕には到底及ばない。

こんなに心強い仲間に恵まれて、僕は幸せだと心から思った。


「戦い、もう直ぐですね。」


「そうだな、緊張してるよ」


「確かに、怖いですよね」


でも、とレイスは続ける。


「その後の事を考えれば、その心も和らぎますよ」


怖い時は、その後に希望を持つ。

たとえ目の前のことに怖気付きそうでも、成功した後に待っている世界のことを考える。

レイスの強さは、そこにあるのかもしれない。

意味が無いと分かっていても、大抵は不安に呑まれそうになるものだろう。

きっと彼は一人で旅をしていた時、何度もそうなったに違いない。

だからこそ、その先を見る、前を向く強さを、彼は培ったのかもしれない。


「レイス、ありがとう」


「そういう事は終わった後にしましょうよ」


レイスは笑いながら、でもこちらこそです、と言った。


風呂を上がった後、僕ら3人は街の中心部にある飲食街で食事を取って宿に戻った。

1日目はそれで睡眠を取った。


2日目は、まず3人で街の観光スポットを回った。

この世界で初めて見る城はやはり西洋風の作りだが、堀が周囲を囲っており、防衛の最終要塞だった事がよく理解出来た。

仮にシミラに攻められ後退したら、ここが拠点になるのだろう。

そうならない為に、僕らは命を賭して戦わなければならない。

観光を終えた僕らは武具を揃えに武具屋に行き、それから夕食に向かった。

その時に、3人で無事に帰ることを誓った。

戦うことを決意して、肉を思う存分食した。


その後の事だった。

宿に戻って、部屋で外の景色を見ながら心を落ち着かせていた。


コン。


と、ドアが鳴った。

はい、と僕が応じると、ドア向こうから聞き慣れた声が聞こえた。


「雄貴、入ってもいい?」


ドアを開けると、葵が立っていた。

弱気になったのかと思ったが、真っ直ぐ僕の目を見ていたのでそうじゃないと直ぐ分かった。


「少しだけ、話したい事があって...」


何を話そうとしているのか、大体分かった。

僕はそれを、この旅の中ですっかり気にかけなくなってしまっていた。

別れたのだから、切り替えるべきだと自分に言い聞かせて来た。

結果として、この世界での生活に必死になっている内に気にならなくなった。

それでも、僕には知っておく義務があるだろう。


葵が僕に別れを告げた理由。


至って平常心を保ちながら、僕は葵を部屋に招き入れた。

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