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摩擦 3

夜になって、待ち合わせの店には僕が一番初めに着いた。

幸い店の客はまばらで、話しやすい席も空いていた。

気持ちが晴れるよう、明るい窓際の席に座った。


葵とマイナの様子から考えて、仲を戻せない事はないなと思っていた。

ふたりとも申し訳ない気持ちがあり、葵もこれからを頑張る決意でいるからだ。

ただ、葵は、理由がないと自分の心の内を曝け出せない性格だから、そこをうまく引き出す必要がある、とは思っている。

互いにわかり合おうという気はあっても、口にしなければ何も進まない。

葵が心の内を話さないのは人の気持ちを優先しすぎる性格から来ているけれど、それが障害になる事もある。

僕の役割は、葵の気持ちを素直に引き出してあげる事なのだと思っている。

それが二人の和解を促すよい方法だと思う。


僕が店に入って程なく、二人も来た。

別々だったが、来た時点で二人は向き合う気持ちなのだろう。

僕は2人の仲裁が役目だ。


「来てくれてありがとう」


僕が、気まずいであろう二人の緊張をほぐす為に第一声を言う。

二人は、それから沈黙した。

場を進める為に、僕が切り出す。


「今日は、ふたりの練習が止まってるって聞いて、何があったのか聞きたくて来てもらったんだけど」


するとすぐに、マイナが口を開いた。


「仲介してもらっちゃって申し訳ないね」


「気にしないで」


それから、少し沈黙した。

二人とも、気まずさから何をどう話せばいいか分からないようだった。


「葵...」


マイナが切り出す。

それから、僕の方を一瞥した。

僕はうなずく。マイナを後押ししたつもりだった。


「私、葵に申し訳ないこと言ったと思ってる。必死になってるのを分かってて、それでも感情的になって」


マイナは、真っ直ぐに葵を見ながら言った。

その声は落ち着いて、まるで包み込むようだった。

葵は、その声が孕む包容力に背中を押されたように話した。


「わたしの、私の不甲斐なさでずっと足を引っ張ってた。私の方こそ、ごめんなさい」


我慢していた感情が、堰を壊して溢れてくる様に、葵の涙に変わった。

きっと彼女は自分の事を責めたんだろうなと、側にいながら思った。

だとすれば、この涙は悪い涙ではないだろう。


「葵、また私と連携技の練習、してくれる?」


「私でいいの?」


「葵と出来るのが、一番心が入ってくるから。きっと他の誰がやるよりも強い技になるよ」


葵は僕の目を訪ねる様に見た。

僕が言いたい事はひとつだった。


「葵、頼む。葵なら出来るよ」


葵は向き直って、マイナを見て


「お願いします」


そう言うと、涙を拭いながら頭を下げた。

マイナもそれに応じて頭を下げる。


「こちらこそ」


それから、ふたりは僕にありがとう、と言った。

僕は何もしてないよと言いながら、頭を下げた。


「明日からまた頑張ろう」


うん、と応じる姿に、ふたりが前に進めると確信した。

それから夕食をとって、それぞれの部屋に戻った。

清々しい睡眠は久々だった。

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