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追憶の温泉ホテル  作者: Kidney Yaponskiy
7/13

7.夕食

 食事時間前には大浴場に行った妻と娘が戻ってきた。自分も浴衣に着替えてダイニングに向かう。


 夕食は予め調べていたとおり、ビッフェ式だった。思ったより宿泊者がいる。宿泊者の多くは家族連れだ。


 早速全員でカニを求めてコーナーに向かう。他の宿泊者たちもこれが目当てなのだろう。あっという間にカニはなくなり、従業員が空になった皿を取り替える。


 カニを皿にのせてテーブルに戻ると、従業員が酒の注文を聞きにくる。


「ビールを瓶で下さい。コップは2つ」


 子供用のジュースは飲み放題なので、妻と自分用の飲み物だけを注文する。

 子供はポテトフライとフルーツばかりを食べている。普段、高価なものを食べさせていないので、こんな時、食べられるものが少ないのだ。


 妻は娘に少しでも元が取れるよう高価な食材のものを食べて欲しいのだが、子供には何が高価なのか分からないし、その有り難さも理解できなかった。


 ひとしきり家族でホテルのこと、大浴場の印象を話す。女性用の浴場は沢に沿ったガラス張りできれいだったらしい。浴槽は泳げるほど広く、ほとんど貸し切り状態だったそうだ。


 カニを食べ終わると、次の食材を探して皿を持ってテーブルを回る。鮎の塩焼きがあったので、それをいただき、ついでに日本酒を注文する。


 妻用にはワインを注文したが、露骨に嫌な顔をされた。


「飲み物を頼んだら安いホテルを苦労して探した意味が無いじゃないの。返してきてよ。」


「このホテルもカニとか出して、経営的に大変な苦労してるんだから、少しでも貢献してあげようよ。酒代が唯一の儲けなんだから。こういうホテルが無くなったら、もう、遊びに来ることも出来なくなってしまうし。」


「そうね、頑張ってくれてるんだから、まあいいか。でもあなたのお小遣いからにしてよね。」


 妻はホテルの地道な努力が分からない。


 バブルが崩壊し団体客がいなくなった今、大規模なホテル経営がどのくらい難しいのか、それでも笑顔で客を迎え、笑顔で送り出す。サービス業ではない自分でも、ホテルの苦労が判る。


 日本酒でしたたかに酔うと、部屋の鍵を妻に預け自分は大浴場に向う。ダイニングの舞台では、いつの間にか歌謡ショーが始まっていて、妻と娘はそれを観覧することになったからだ。

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