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追憶の温泉ホテル  作者: Kidney Yaponskiy
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6.昭和レトロ

 あっという間に予約していたホテルに着き、チェックインの手続きをする。大袈裟なシャンデリアに照らされたロビー、「国際観光旅館」の札も懐かしい。


 フロントにいた自分位の年齢の男性は、ホテルの支配人だろうか。チェックインシートを出したのはその妻か。

 昔はたくさんの従業員がいたのだろうが、今はほとんど家族経営になっているのだろう。従業員も客もまばらだ。


 部屋に着くと沢沿いの窓を開け景色を眺める。沢の反対側に見えるホテルは廃業したのだろうか、この時間でも灯りが点っていない。

 自分の側のホテルでは団体客の宴会が始まったのだろうか、騒がしい声がする。


 荷物を放り出すと、娘はお茶請けのきゃらぶきを食べ始め、妻がお茶を入れた。

 座椅子に座り、なんとなく湿っぽい部屋を眺める。部屋の調度品は現代風ではない。ガラスコップとその横にあった栓抜きも昭和を感じる。


 ノスタルジーに浸る間もなく、妻と娘は浴衣に着替えると大浴場に向かった。自分は部屋に備え付けの冷蔵庫を開け、何も入っていないことが分かると館内散策を開始した。


 ホテルのフロント、ロビー、ジュークボックス、土産の売店、食事場所のダイニング、ゲームコーナー等、時代に取り残されているようだった。大浴場に向かった妻と娘は部屋の鍵を持っていないので、自分は自販機を見つけると早々に部屋に戻った。


 手に入れた缶チューハイを開けて、改めて部屋を眺める。今となってはホテルより、家のほうが近代的で清潔だ。


 大規模なホテルは改装することが難しく、多くの旅行客は昔のようにホテルに贅沢さを求めることはしない。


 では一体何を求めるのか。


 自分の場合は癒しだが、当時を知らない若い世代は、見たこともない古い設備で、果たして「癒される」のだろうか。

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