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追憶の温泉ホテル  作者: Kidney Yaponskiy
3/13

3.家族

 帰宅してひととおり主夫の仕事が終わると妻に相談する。


「親離れする前に温泉を見せてやりたい。綺麗な温泉でなくて構わないから勉強のために。」


 勉強という言葉に妻は反応した。


「別に行ってもいいけど用意が面倒くさい。」

「これなんかどうかな、カニの食べ放題だって。」

「カニなんて新宿で食べたほうがよっぽど安いし美味しい。」

「一泊1万5千円からあるらしい。」

「きちんと調べてよ。もっと安いところあると思うよ。」


 うまくいった。結局、安い宿を妻が探すことになった。


 翌日、休日出勤から帰宅すると、妻がネット検索の成果を示した。


「このプランが一番安い。ホテルもそんなに悪くなさそう。」

「カニの食べ放題がついてるんだ。こんな山の中でカニが取れるんだろうか。」

「取れる訳ない。人寄せのために無理して買ってる。」

「それでもひとり1万円は異常に安い。」

「じゃあ、これで良いのね。子供の予定が入ってない再来週の土日に予約入れるから会社行かないでね。」

「わかった。それまでに仕事が終わるようにする。」


 なんとなく聞き覚えのあるホテル名だった。前に行ったかも知れない。


「ここの温泉は確か子供の時に1回、入社したての部内旅行で1回行ったことある。」

「どんな感じだった?」

「ホテルが川沿いにたくさん立ち並んでいて歓楽街って感じだった。」

「子供が遊べるところあるの?」

「駅から歩いて行けるところには何もない。市内まで出れば何でもある。沿線には鉄道会社でやってるレジャー施設があった気がする。それと、スキー場が一山超えたところにあったけど今もあるかなあ。」

「11月じゃスキー場やってないし、あたしも子供もスキーやらないでしょ。アウトレットとかないの。」


 子供がアウトレットで楽しむとは思えなかったが、この際はどうでもいい話だ。


「高速道路でもっと奥に行かないとない。確か会社で行ったときは、電車で行ってどこにも寄らずに帰ったと思う。」

「まあ子供の勉強のためだし、カニがあるならいいか。」


 商談をひとつ取りまとめた。

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