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追憶の温泉ホテル  作者: Kidney Yaponskiy
13/13

13.支配人への手紙

 妻に旅行会社からきた予約確認メールを探してもらう。消してしまったのか、結局見つからなかった。


 あのあと、妻にも娘にもホテルの現状のことは話していない。聞いて得することは何もないし、怖がるのが明白だからだ。結局、カード払いにしたホテル代の引き落としは無かった。


 どういうことなのか自分なりに考えてみる。


 支配人は再建したと言っていたが、それは支配人の願望で、現状は再建までは至っていないのではないか。


 我々は支配人の気持ちの世界に宿泊し癒されて帰ってきた。ホテルに関わる人々からたくさんの活力をもらった。


 反対にホテル関係者には喜んでもらった。そう、ウィンウィンの関係だ。

 でも、あれは幻だったのだ。街の復興を目指す人たちの熱い思い。ある人は存命かも知れないし、ある人は鬼籍に入っているのかも知れない。


 それを調べても意味はない。私たちは、空想の世界から、現実に帰してもらった訳だから、それで十分だ。


 もしあのとき妻が歯ブラシやタオルなどの備品を持ち帰っていたら、今頃、どうなっていたのだろう。土産のきゃらぶきをホテルの売店で買っていたらどうなったのだろう。


 考えると少し怖くなる。


 そういえば、土産屋の女将が備品を持ち帰らないよう注意していた。外国人を引き合いに出してはいたが。ホテル名を知った時も、一瞬、表情が変わった。きゃらぶきを自分の店で買ってくれと言っていた。


 あの女将はホテルの本当の姿を知っていたのかも知れない。それで妻、娘と仲良くなったから、現実の世界に戻れるようアドバイスしてくれたのか。


 全くの他人でも、いずれかの縁で繋がった関係。出会いは大切にということか。妻と娘に救われたな。


 先週、ホテルの支配人宛にお礼の手紙を送った。電子メールではなく本物の郵便はがきだ。


 もう1週間経つが郵便は戻ってこないから、多分、届いたのだろう。



 いつか元気な返事が返ってくることを待っている。

 ホテルが復興することを信じている。


最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。

ガイドラインの違いで「~なろう」に投稿できなかった小説が

星天文庫に置いてありますので、もし宜しければ、そちらも

ご覧ください。

https://slib.net/a/24315/

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