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7. 再会

カルディアは石化した。魂が口から出ている、そんな表現がぴったりだろう。


「なんかね、ルビーネが、自律神経っていう通路を使うと、こっちに来れるって、教えてくれたの。」


そう言うと、マタ王はにっこりと微笑んだ。


「まだよく…わかんないんだけど、いつもは駄目だけど、レム睡眠っていう、時間の間、何もやる事がなければ、遊びに行っても、いいって。でも…あんまり遠くに、行っちゃ駄目だって。」


まだ言葉の拙いマタ王が、得たばかりの知識を一生懸命伝えている。


「ほんと!?じゃぁ、時々マタ王ちゃんとこうして会えるんだね!?やったぁー!」


ポルモネはそう言って、マタ王を抱え上げた。マタ王は一瞬驚いた顔をしたが、すぐにキャッキャとはしゃぎだした。視界の端に、物凄い殺意を放つカルディアが見えたが気にしない。


ルビーネは「では」と、早々と切り上げさせて戻ろうとしたのだが、マタ王は「ちょっと待って」とそれを制止し、降ろしてもらったポルモネからカルディアの元へ行った。


後退るカルディアの手を捕まえると、マタ王はにっこりと微笑んだ。


「カルディア…よね?…ね?言ったでしょ?こんなに早く、会えたわ。私、これからも、あなたに、会いに来る。この記憶が、絶対、消えないように。だから、たくさん、お話しましょうね。」


そう言うと、カルディアをふんわりと包み込むように抱き締めた。



◇◇◇◇◇



「ありがとう」


ポルモネは、カルディアの肩にポンっと手を置く。


「良いものが見られたよ」


あれからマタ王は、この城を営む王としての教育の一環として、各計器の基本操作手順について、実践を交えながらルビーネの指導を受けるという理由で戻っていった。計器を作動させる際、その信号受信にポルモネとカルディアが司令塔に待機している必要があるため、2人もまた、元いた場所へと戻ってきていた。


「まさか君があんなになっちゃうなんてさ。いつからなの?その胸焼けする程の熱い想いは。」


マタ王が手を握れば、トマトに負けず劣らず色鮮やかに、マタ王が抱き着けば、何とも形容し難い色香を放ち、マタ王が我が身から離れれば、その愁いに満ちた表情に魅惑を感じずにはいられなかった。


(あのカルディアを吊るして歩けば数多の女の腰が砕けるぞ。多分。)


肩に乗ったポルモネの手を払い除けた今のカルディアには、そんな欠片は微塵もない。何とも面白い。


「ふざけたこと言ってないで、さっさと定位置に着け。」


カルディアは、ヘッドホンを装着すると自分の席に着き、モニターや他の計器を入念に点検する。マタ王とのやり取りは受信のみなので、不備があると後々厄介なことになる。


城の内部はそれぞれの設備が判別できる程度に薄い色素があるものの、スケルトン仕様なので各部屋の様子が見える。ただ、至る所生い茂っている“神経細胞”という名の海藻類や、無数に張り巡らされ枝分かれしたチューブ型の血管(トンネル)に視界が遮られるため、正確な監視にモニターは不可欠である。


ポルモネも(ようや)く席に着きつつ、「はぁーい」とヤル気のない返事一つ、ヘッドホンを後頭部から耳に当てる。ポルモネの計器はカルディアのそれとは異なり、マタ王との通信用マイクや、先に一騒動あった緊急起動レバーなど少し複雑になっている。いかんせん、基本は受信が中心なので、あくまでもマタ王の意思に逆らう場合の警告用だ。


「ポルモネ」


「なぁに?」


「わかってるよな?」


カルディアは、隣で「テストテストーマタ王ちゃーん」とマイクに向かって指をコツコツやっているポルモネに釘を刺した。


「あいつに余計なことは一切言うな。」


ポルモネはハハッと軽く笑い、大丈夫大丈夫と掌をひらひらさせた。


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