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主人公はモブになりたい  作者: 関山 竜
1/2

1日目

※ この物語はフィクションです。

実際の人物、団体等とは

一切関係ありません。



・・・モブになりたい。急にどうしたと思われるかもしれないが、まあ聞いて欲しい。


俺はどうやら、主人公気質らしい。

というのも、俺は母の腹の中にいた時、謎の女神というものに選ばれたと告げられた。


また、物心つく前から色々な稽古を親にさせられ、10歳の頃には軽く世界を一つ救った。


しかし、それくらいではまだ終わらなかった。


中学生になってから、その主人公気質は悪化した。


旅行の際、怪しいゴムの実を食べそうになったり(食べてない)、


日影になれと命令されたり(なっていない)、


世界中に散らばったなんちゃらボールを集めかけたり(一つ目を見つけてやめた)、


というように、明らかにどこかの主人公のような体験をしてしまいかける場面がよくあるのだ。


誰しもが主人公になりたいと思う中、一番主人公になりたくない俺がこの気質を持っているのはおかしいと思う。


言っておくが主人公は良いことより辛いことの方が多いぞ(自論)。


まあなんやかんやあった結果冒頭に戻るわけだ。

「モブになりたい」この一言に尽きる。


苦労せず、いつもただ口だけ笑っている目のないモブに。

そんなことを思って窓...ではなく先生と黒板を見る。窓なんか見るのは主人公かヒロインだけでいい。


俺は丸々高校の二年生。この高校ではなるべく目立たず、トラブルを避けて来た。出来ることなら友達も完璧なモブだけにしたいが、俺の気質上それは無理だと知っていた。


しかし、俺の周りには俺の願望を伝えているから、多分いまの俺は主人公から離れていると思う。そのはず。そうであって欲しい。


そう思いながら今日もまた学校に登校する。曲がり角では毎日カーブミラーを見る。


誰か来ていないか確認するためだ。誰か来ていたらゆっくり歩いてフラグを立てないようにする。それが習慣だ。


(おっと、女子高生が走ってきてるな。ぶつからないように...ってあれ?あの制服うちの学校のだ。転校生か。けどこっちは学校の反対側...迷子だな。)


(仕方ない、彼女より先にでてぶつからずに、道案内してやろう。)


タッタッタッ (角を曲がる)


俺「あの、すみません。」


転校生「(?)はい、なんですか?」


俺「あなた、丸々高校の生徒ですよ

ね。」


転校生「...なんでわかったんです

か!?」


俺「俺も同じ高校だからですよ。学校はこっちじゃないんです。迷っているなら案内しますよ。」


転校生は少し驚いたような顔をした後、少し考えてもう一度こちらを向いた。


転校生「お願いします!」


俺「はい、それじゃあ行きましょうか。」


相手と自分の敬語が気になったが、初対面なんてこんなものか。と納得し、歩き出す。


道中、転校生は独り言のように俺に話しかけていた。


俺「着きましたよ。」


学校に着くと、転校生の顔はパッと明るくなり、目をキラキラさせた。

その顔を見て、少し微笑ましく思った。それと同時に、彼女が美人だと気がついた。


美しく輝く金色の髪、少し大人びて見える澄んだ青い瞳、白い肌。血色の良さを表す赤い唇。おまけにスタイルもいいときた。ハーフかな?


今気がついた。自分がどれだけ他人を見ていなかったかを。


俺「それじゃあ俺はここで。」


俺がそう言うと、我に返ったかのように見えた彼女は、笑顔のままぺこりと頭を下げ、「ありがとうございます」とだけ言って、中に入って行った。



俺「おはよー」

俺が教室に入ると、さっきの転校生の話が、そこら中から聞こえて来た


友達A「おはよ蒼輔(そうすけ)。それより聞いたぞ〜。お前が噂の美人転校生と登校してたって話。」


こいつは友達A...ではなく、拓郎 光沢 (たくろう こうた)仮の友達である


光沢「お前目立たないモブになりたいんじゃなかったのかよ。」


俺「俺も曲がり角で無視しようか迷ったんだけど、余りにも方向音痴だったもんでついつい案内してしまった。」


光沢「お前それまずいぞ。」


俺「何がまずいんだ?」


光沢「いや実はさ、その転校生、うちのクラスに転校するんだわ。」


驚きと絶望のあまり声が出なかった。

これは間違いなくこの流れだ


回想


キーンコーンカーンコーン

先生「席につけ〜。お前らのことだからもう知ってると思うが、今日このクラスに転校生が来る。」


一同喜びの叫び


先生「それじゃあ入れ〜。」

ガラガラ(転校生現る)

一同「おーーー!!」「帰国子女だー!」


転校生「あ、貴方はさっきの!」


俺を指差し驚く転校生


回想終わり


本当に回想通りになった。


琴島 アリス (ことしま ありす)


転校生の名前だ。


男達「アリスちゃん今日お昼一緒に食べよう!」「僕も!」「俺も!」


アリス「ごめん私蒼輔くん達と食べるの。また今度ね。」


男達「は、はい!」


全く困ったもんだ。琴島さんの人気なら他の人とお昼食べてくれると思っていたのに。

なぜ断るーーー!!!!俺は目立ちたくないってのに。それに蒼輔「くん」って。

恐ろしいな転校生


お昼


アリス「蒼輔くん、今朝は助かったよ。ありがとう。」


俺「ああ、いいよあれくらい。」


委員長「それにしてもまさか荒井(あらい)くんが転校生を道案内するなんてね〜。優しいんだね荒井くん。」


彼女は委員長...でもあるが、正式名称(名前)は 小山 春香 (こやま はるか)

誰にでも優しくいい顔をしている美人なため、多くの男子が勘違いし、告白して振られている。


彼女もよく見たら美人だ。

その髪は黒く、一見暗いイメージに反して、目から伝わるあかるさは、眩しすぎるくらいだ。また、長く黒い髪は彼女の肌をより白く見せた。

当然のごとくスタイルは良い。

文が少し長いって?何言ってるんだ、俺にはこれくらいしか言えないんだ。他の男子に言わせたら軽く原稿2枚分書ける(らしい)。


おっと忘れていた。俺はまだ自分の名前を言っていなかったな。

俺の名前はもう出ているが、


荒井 蒼輔 (あらい そうすけ)


2歳年下の妹と、3歳年上の姉がいる。両親は2年前、俺が高校生になる前に死んでしまい、今は妹と二人暮らしだ。姉は別居である。こんなのはどうでもいいとして、昼休みに戻るぞ。


春香「それにしてもまさか荒井(あらい)くんが転校生を道案内するなんてね〜。優しいんだね荒井くん。」


光沢「本当だよな〜。あの目立ちたくないランキングトップの蒼輔が転校生となんて。」


俺「だって学校の真反対に向かってるようなヤバめの方向音痴転校生なんていたら流石の俺も放っておけないよ。」


アリス「(笑いながら)酷いよ蒼輔くん。朝の紳士はどこ行っちゃったの〜。」


俺「悪かったって、琴島さんの方向音痴は上の中だから安心してな。それと、春香と光沢が俺に関わってくる間、多分俺はただのモブになれないぞ。」


春香はともかくなぜ光沢も?と思われるかもしれない。実はこの男、クラスのムードメーカーである。何故俺に付きまとうのか、全くもって謎である。


光沢「ひっでえなー」

春香「酷いよー 」


酷いのはどっちだ。言いかけた自分が怖い。俺だってモブ友達を作ろうとした事はある。


でも声を掛けるといつも舌打ちで返され、どこかへ行ってしまう。


そりゃそうなるわな。クラス、いや、学校内でトップ級に可愛くて性格の良い美人2人にクラスの人気者ムードメーカーと昼飯を食うようなやつ、俺なら関わらない。俺も好きでこいつらと昼飯を食っている訳ではない。


ただ、こいつらが勝手に付きまとってくるだけだ。なんて言ったって誰も信じないだろうが。


春香「あ!もうお昼休み終わっちゃうよ!って荒井くんもういない!?」


光沢「本当だ!あいつ本当1人が好きだよな〜。俺たちももう行くか。」


アリス「そうだね。」



・・・一足先に教室に戻った俺は机に紙が入っていることに気がついた。紙の内容は次の通りだ

「放課後、校舎裏に来て下さい。

話があります。」


・・・行かなかった。どうせ告白だろう。そうじゃなかったらリンチされるに違いない。リンチはともかく、告白に関しては意味がわからない。


友達は作れる範囲でモブを選ぶし(三人を除く)、女子にはあまり近づかないし(二人を除く)、人気者には適度な距離を保っている(一人を除く)。


目立たない(モブ)と付き合うメリットなんて人気者との接点以外ないはずなのによく校舎裏に呼び出される。全くもって謎だ。


今日もその類だと思い、校門を出ようとした、その時だった。


( ! ? )


横から女子生徒が飛び出してきたのだ。飛び出してきた女子生徒は石につまづいて転んだあと、何事もなかったかのような笑顔でこちらを向いてきた


(なんなんだこいつ...)


???「こんにちは!私隣のクラスの、花蜜 恵美 (はなみつ えみ)です!」


俺「そうですか。それじゃ。」


関わっちゃいけない!おれの本能がそう言っていた。早くこの場を離れなければ!

(!?)

ガシ!(手を掴む音)

恵美「待ってください!話があるんです!」


俺「俺には話すことなんて何もないので早く帰らせてください!!!」


恵美「そうは行きません!どうせ校舎裏には来ないと分かっていました!あの手紙の主は私なんです!」


俺「そんなことは分かっている!分かった上で頼んでるんだ!手を離せ!」


恵美「離しません!だって貴方は勘違いをしている!私は貴方の秘密を知っています!」


その一言で俺は固まった。

(俺の秘密を知っている!?それって主人公気質のことだよな!?だとしたら何故?あの秘密は身内にしか言っていないし、身内には他言しないよう言っている。ボロは出していないばずだ!)

思考回路が物凄い速度で回転した。

そんな俺を見た彼女は落ち着いて手を離した。


恵美「ようやく話を聞く気になってくれたようですね。ここではアレなのでとりあえずお店にでも行きましょう。」


俺が頷くと、彼女はさっさと歩き出した。



彼女の後ろをついて行っている間も俺は考え続けたが、分からなかった。店に着いて中に入ろうとしたその時、俺はあるものを見た。


???「やめてください!」


チャラ男A「いいだろ〜。ちょっとくらい遊びに付き合ってくれても。」


???「お願いです!やめてください!」


委員長と転校生が絡まれていたのだ。不安と苛立ちを覚えていた俺は考えるのをやめた。


俺「恵美って言ったっけ?ちょっと俺の鞄もって待っててくれ!」


恵美「え?あ、あの、荒井さん?」


彼女の声を無視して、彼女に鞄を押し付け、チャラ男の所にダッシュした。

今の不安と苛立ちを、忘れたかった、というか、発散したかった。


俺「あの、困ってるんでやめてあげてください。」チャラ男の肩に手をかける。


おっと、いきなり殴るとでも思ったか?残念、俺もそこまで馬鹿じゃない。話し合いで解決するならそれでいいだろう。


チャラ男A「あぁ!?なんだてめえ。外野が入ってきてんじゃねえ!」


でたー!チャラ男Aの殴りかかり!

はたして荒井氏どうするのかー!


ガシ!

おっと荒井氏ー!なんと軽々拳で受け止めたー!

...疲れるからやめよう。実況の通り、俺はチャラ男Aの殴りを拳で受け止めた。


まあ当然だろう。なんせ10歳で世界を救ったんだ、チャラ男Aの殴りを受け止めるなんて飯を食うより簡単だ。


そしてチャラ男A、B、Cに殺気を出しつつ、笑顔でこう言う。


「最後です。やめてあげてください。」


チャラ男達は怯えて逃げて行った。正直、あいつらには感謝している。俺の憂さ晴らしを手伝ってくれたことを。


そして俺は、春香とアリスをの方を向いて、「大丈夫だったか?」と聞く。

お決まりだ。


俺「大丈夫だったか?」


春香

「ありがとう!」

アリス


抱きついて来たらどうしようかと心配になったが、そんなことはなく安心した。はあ、とため息を心の中でした時、後ろから聞きたくない声が聞こえてきた。


恵美「荒井さん、かっこいいです!」

ゼェ、ハァ、と息切れしながらさっきの重要人物(恵美)が訳のわからないことを言ってきた。


こいつとはちゃんと話をしなければならない。しかし、今はそれよりもまずすることがある。


俺「お前ら三人とも俺が家まで送って行ってやる。」


三人「???」


何故そんな不思議そうな顔をする?さっきあんなことがあったのに黙って家に返せるわけないだろ。


春香「でも、いいの?」


アリス「そうよ。全員を家までって、それじゃあ蒼輔くんの帰りが遅くなっちゃって、家族が心配するんじゃ、」


俺「その辺に関しては問題ない。」


両親はいないし、妹はしっかり者だから大丈夫だろう。


恵美「でも話はどうするんですか?」


俺「それは明日で頼む。」


恵美「わ、分かりました。」


全員納得はしていないみたいだが、関係ない。まずは一番近いであろう委員長の家に向かうことにした。


俺「それじゃあ行くぞ。」

三人はコクリと頷く。


おっと、勘違いするな、俺が委員長の家を知っているのは過去に勉強会で行ったことがあるからであって、ストーカー要素は1ミリも無い!


途中、アリスと恵美の住所を聞き、委員長の家に着いた。


俺「それじゃ、また明日な。」


春香「うん。今日は本当、ありがとうね。」


春香の上目遣いに少しドキッとした自分がいた。 流石美人、癒されてしまった。


続いてアリス、恵美と家を回り、ようやく帰れるようになった。


(全く、今日は疲れたな。もう6時だ。すっかり遅くなってしまった。花蜜 恵美、一体何者なんだろう彼女は。)


そんなことを思いながら家のすぐそばまで来ると、入り口の前に妹がいるのが見えた。流石に心配になったのか。


俺「おーい!悪い冬瓜(とうか)!遅くなったー!」

そう言うと、こちらに気づいた冬瓜(妹)がこっちに向かって走ってくる。


冬瓜「も〜遅いよ〜。何かあったのかと思ったじゃん!」

そう言いながらこちらを睨んでくる。


俺の妹、 荒井 冬瓜 (あらい とうか)。

先に言うが、ツンデレではない!ここ大事。妹と言うのは大体がツンデレだと思ったら大間違いだ。


冬瓜は考えのわかりやすい素直で純粋な可愛い妹なのだ。おっと勘違いするな、俺はシスコンではない。ここも大事である。


冬瓜「早く家に入るよ!」


俺「分かってるって。」


冬瓜は両親が死んだ影響で、一時期引きこもっていた。楽しみにしていた中学の入学式も休み、ずっと家にいた事もあって、家事に関しては完璧だ。今はちゃんと学校にも通い、文字通り完璧な妹だ。


まあ、もうわかると思うが、美人...というより可愛めである。予想通りだろう?それより見た目をイメージしやすいように見た目の説明をしよう。


(途中の重要人物の見た目を説明し忘れている気がするが...まあ気が向いたら説明しよう)


家は両親とも黒髪だった為、当然のごとく姉も俺も冬瓜も地毛が黒髪である。


冬瓜はよく髪型をツインテールにしているが、

基本的にどんな髪型も似合う。


目は俺と同じ黒色で、感情によって明るくなったり暗くなったりする。分かりやすいのだ


肌も影響を受けやすく、夏が終わると少し黒くなり、冬が終わる頃にはすっかり白くなっている。


身長は平均よりも少し低いが、小動物感があって俺はいいと思っている。

しかし、本人は自分の身長を嫌っている。


...こんなものでいいか?まあ妹の可愛さはもうわかってくれただろう。


冬瓜「いただきまーす!」

俺 「いただきます。」


帰るとすでに晩飯が用意されている。

晩飯を食べた後、妹は風呂に入り、俺はテレビを見る。妹が出てきたら今度は俺が風呂に入る。


あとは各々の時間帯に寝る。実に楽だ。

布団に入り、目を閉じる。


今日あった事を思い出し、ため息をつく。


恐らく俺の平穏な日常は、これから大きく変わっていくだろう。そう思って、もう一度ため息をつくと、俺は今日を終えた。

最後まで読んでいただき、誠にありがとうございます。

次の話は思いついたら多分書きます。

(人気の有無関係なく)

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