学校で教わったことといえば。
「拝啓 私は取り返しのつかないことをしてしまいました。
人は死んでしまったら、もう話すことも、喧嘩することもできません。
だからこそ、この言葉を贈りたいと思います。
授業中に寝てるくらい寝るのが好きなら、一生寝るのを手伝うよ。
これくらいしか君にしてあげることはできない。悪いな。」
庭先の「青いポスト」に溜まった郵便をまとめて眺める。
今日はまだあの手紙は届いてないらしい。
郵便ポストはマメに確認する方だ。
もうこの時間からいっても授業には間に合わない。
今日は学校にいって、昨日喧嘩した太一に謝らなくてはいけない。
校門をくぐる。
白基調の靴ばかりが並ぶ下駄箱に自分の靴を入れる。
悪いことをしたら謝る。
そう教わってきたから。
今日は人に謝る。意味がわからない。
だからこそ実験しないといけない。
わからないことはちゃんと試していかないと。一つづつ確実にね。
12段の偶数の階段と13段の奇数の階段を上がる。
毎日毎日同じ段数の階段を上り下りするうちに、
意識して数えなくても数えるようになってしまった。
端っこの教室が僕ら2年4組が毎日の生活を共有する檻。
毎日毎日感覚が麻痺するくらい僕らはここで読み書き、人間を学ぶ。
人間は教育を受けないと人間になれない。
聞いてるふりの授業。わかっているようでわかっていない説教。
知っていようで知らないえらい大人たちの話。
授業が終わった後に職員室にいく。
昨日担任の先生に言われたからだ。
要件は昨日の太一の件だろう。
きっと太一と話をして仲直りでもさせる気だろう。
職員室の扉を開ける。
失礼します。
「きたか。」
太一は先に中で待っていたようだ。
まあ「昨日の一件だが、とにかく君にも太一にも、
どちらに非があるとかではないけど、」
ひとまずお互い謝ったらどうだ。
はい。と太一。
「そうですね。」
悪かったな。
そういうとお互い気が晴れた。
実験結果はそういうことになる。
じゃあ、それだけだ。
「あとは頑張れよ。」
そういって僕らに1万円を渡した。
仲良く飯でも食ってこいということか。
先生は何もわかってないよ。
僕らのことじゃなくて人間のことを。
実験なんて如何にもこうにも操作できる。
それが。あー。人間の歴史というか。
そう。そういうこと。
メンドクセ。
じゃあな。
太一を後ろからぶん殴ってみた。
校舎の脇にあるさざれ石とかいうやつで。
実験その2。
実験結果;石は人の頭くらいには硬い。
次の日やっぱりニュースになって、
僕は初めに手紙を書いておいて良かったと思った。
過ちを犯したらまず謝ること。それは僕が先生に教わったこと。
だから、それを応用して、先に謝っといたこと。
太一はわからなかったかもしれないけれど、僕はちゃんと謝ったから伝わっているはず。
だって後日、テレビの報道番組が僕の手紙を読み上げていたから。
「「拝啓 私は取り返しのつかないことをしてしまいました。人は死んでしまったら、
もう話すことも、喧嘩することもできません。
だからこそ、この言葉を贈りたいと思います。
、、、、、、、、、、、、、、、、悪いな。」
僕らは授業中の勉強態度で喧嘩した。
僕その日のうちに手紙で謝ったが太一は謝ってないらしい。
「だって手紙が家に届いてないから。」
僕の家はどちらかというと「赤色の郵便ポスト」だ。
でも、今日も手紙は入っていない。
ちなみに太一の家のポストは
あー。
青色だったな。
ポストはマメに確認するからさ。
色なんてのは簡単に覚えちゃうよね。
マメに手紙を書いていれば太一もこんなことにはならなかった。
学校で教わったことはこうやって使う。
ありがたいことを教わった僕はきっと幸せものだ。
応用実験ができた。
ありがたい。