黒い絵
きにいらなくて、くろいクレヨンでぬりつぶした。しろいお花も、あかいお花も、あおいお花も、みんなくろくなっちゃった。くろって、つよいのね。ほかのなにいろにもならないのよ、すごいわ。──そう、思っていた時期があった。ぽたり、白の上に黒がおちる。じわり、広がったそれは、取ろうと思っても、もうとれない。黒は孤独ね。ほかの何にもなれやしない。だれかを染めることはできても、自分は変わることはできないの。仕方がないから、ほかの色を上から塗りたくって隠したわ。でもいくら演じたところで、わたしは黒。ほんとうのわたしは黒なの。白いわたしを黒く染めたあの人はもういないけれど、責めることはできそうにないわ。きっとあの人も、この孤独を味わっていたはずだから。白はまるで反対ね。ほかの何色にもなれるもの。きっとあなたは始まりで、わたしは終わり。黒に白を重ねたら、わたしも戻れるかしら。なあんて、そんなの、ゆめみたい。もし叶うならわたし、しんでもいいわ。
ああ、今夜も月がきれいね。