ミーコ16歳
僕たち3人はとある家の前に来ていた。
六角形のゲルのような部屋がいくつも連結されている。
質素ながらも町の中ではもっとも大きな家のようだ。
「ここが吉原健太さんの生活拠点、『憧れのマイホーム』となります。家賃は月額14万円となりますが契約しますか? ちなみに『いいえ』の場合は野宿生活となります」
「契約で!」
月額14万円という生々しい話に面食らったが、チョコと野宿生活はいやだ!
借家なのに『マイホーム』って矛盾しているがまあそこは置いておこう。
「中でミーコが待っているよ。ケンちゃん入りましょう!」
僕はチョコに手を引っ張られながら家に入る。
中に入ってみると六角型のゲル1つが意外と広いことがわかる。
日本間に換算すると6畳ぐらいだろうか。
それが10数部屋あるから家賃14万円は格安かもしれない。
玄関スペースの奥がリビングになっている。
リビングからはキッチン、ダイニングをはじめ、各部屋へ続いている。
部屋の仕切りには、ロールカーテンのようなものが巻かれている。
「ミーコ、ケンちゃんが来たよー!」
チョコが手を振った先には、ミーコがいた。
というか物陰からこちらを眺めていた。
ミーコは僕が現世で飼っていた三毛猫だ。チョコよりも1歳年上のおとなしい猫だ。寂しがり屋のくせに、僕が近づこうとすると『ツン』とつれないそぶりを見せて、離れていく。
「ミーコはねえ、さっきからずっと『ケンちゃんはまだ? ケンちゃん遅いよー』ってうるさっ―― 痛い痛いー!こめかみをぐりぐりしないでぇー!」
真っ赤な顔をしてミーコが猛ダッシュ、チョコの頭を拳でぐりぐりしている。
ミーコは白、黒、茶の3色の髪で三つ編みにしている。
紫色のマントのようなものを羽織っている。
チョコの可愛らしさに対してこちらは美人さんだな。
胸の膨らみは推定Cカップだ。
「ごほん! ケンタ元気そうでなにより。私はミーコ。16歳の攻撃型魔法使い」
きっと僕はもう死んでいます。
まあ、この世界では現世での死とかは関係ないのかも知れない。
「お前魔法使えるの? やって見せてよ!」
「ファイヤー!」
「うわっ!」
僕は慌てて尻餅をついた。
ミーコは中指をちょっと動かしただけなのに、1メートルぐらいの火柱が僕の顔面に向かって伸びてきた。
「お前なぁ、僕を殺す気か?」
「ケンタなら避けられると信じていました」
そう言って、また部屋の仕切りの陰に戻った。