ようこそ『もふもふの町』へ!
天にも昇る気分とはこのことを言うんだろう。
僕はイオリさんに抱きしめられたまま目を閉じた――
目を開いたときには……
町並みが広がっていた。
草原の中に作られた小さな町。
一つ一つの建物は、モンゴルのゲルに似ているが少し違う。
六角形の構造体をつなぎ合わせて大小様々な建物が連なっている。
「ようこそ――――」
手を広げて歓迎するかのようなポーズでイオリさんが固まった。
ぱくぱくする口を読むと、町の名前を決めろと言っている。
「町の名前も決めるの? 僕が?」
イオリさんがまた『そうです』とぱくぱくさせて伝えてきた。
「じゃあ…… 『もふもふの町』でいい?」
「ようこそ、もふもふの町へ! あなたはこの町の最初の勇者様です」
「あっ、そういうことか。勇者が代替わりする度に町の名も更新されるシステムか。なるほどなるほど……」
僕が納得していると、ふと一人の少女と目が合った。
身長140センチぐらい、黒髪ショートボブカットの猫耳女子だ。
彼女は『とととと』と近づいてきて、
「ケンちゃん会いたかったよー!」
と、抱きついてきた。