漆黒の塊
黒い物体は2つの耳らしき物がちょこんと付いている他は、ただの黒い塊だ。
およそ「魔王」というイメージとはかけ離れている姿。
全長10メートルの巨大なぶよぶよした茄子と表現したら良いのだろうか。
「ケンタ…… あれが魔王なのだろうか。私の想像していたモノとはちょっと違うので戸惑っているのだが……」
「おにいちゃん、なんか気持ち悪いよー。ぶよぶよしているよー」
シフォンとリズムも僕と同じ感想を抱いているようだ。
きっと他のメンバーもそうに違いない。
「マスター、準備は万端だ。いつでも行けるぜ!」
トーラが戸惑う僕らを鼓舞するように言った。
頼りになるぜ、トーラ。やっぱりお前がリーダーになれば良かったと今でも思っているぞ!
「ミーコ魔法をお願い」
「分かりました。ファイヤー」
魔導具内蔵のチョコの装備に魔力が注入された。
「ではみんな、作戦通りに行くぞ! いいですか篠原さん?」
「ええ、これでこの世界が救われるのね。私も全力で行かせていただきます!」
「よし! 行くぞー!」
「ヤァァァァァァァァ!」
最もスピードのあるチョコが先陣を切って突入する。その両サイドをシフォンとトーラが長剣を構えながら突撃する。
魔王の手前でチョコが勢いよくジャンプして、魔王の頭上に迫る。
その時――
魔王が振り向いた。
迂闊だった……
ぶよぶよした黒い塊は、魔王の後ろ姿だったのだ。
振り向いた魔王は赤い大きな目をぎらりと光らせ、
鋭い牙を剥いてチョコに襲いかかる。
「――――っ!」
チョコが手足で防御する姿勢になるが、このままでは丸ごと飲み込まれそうだ。
「え――――い!」
「ヤァァァァァ!」
トーラとシフォンが魔王の足下に斬り込む。
しかし魔王の姿勢は崩れなかった。
チョコの命が危ないことを察した時、すでに僕の手は聖剣をつかんでいた。
そして――――
「エクスカリバー――――――!」
聖剣エクスカリバーをなぎ払った。
『ズババババババ――――――!』
洞窟の壁面の一部をはぎ取りながら、魔王の身体が上下に真っ二つに切断された。




