最後の夜
皆が寝静まった夜中、僕はベッドで目を開けていた。
この家での様々な思い出がまぶたの裏に浮かんできて寝付けなかったのだ。
すると、誰かが僕の部屋に入ってくる気配がする。
「あの…… 吉原さんもう眠ってしまいました?」
イオリさんの声だ。
まだ眠っていないことを伝えると、彼女はホッとしたような表情をした。
「私、吉原さんが他の女の子とイチャイチャしているのを見ると『キーッ』となる理由が分かったんです……」
イオリさんはそう言って、僕に微笑みかけてきた。
月明かりに照らされるイオリさんは大人の魅力を感じさせるには充分な体つきだ。
白いワンピースのようなネグリジェを着て、豊かな胸の膨らみを強調するような感じで僕に近づいてくる。
彼女に見とれている僕を意識してか『フフッ……』と濃艶な微笑みを浮かべて僕の顔をのぞき込んできた。
イオリさん…… マズいです! 19歳童貞の僕には刺激が強すぎます!
そして――
「吉原さん…… 私にもなでなでしてください」
と言ってベッドの脇に女の子座りした。
「あ、ああ…… なでなでね……」
僕は少し期待外れだったが、上体を起こし右手でイオリさんの頭をなでなでした。
イオリさんはとても気持ちよさそうに目を閉じた。
調子に乗って耳をもふもふしてみたりもしたが、それも気持ちよさそうにしてくれた。
「ケンタさん…… イオリさんだけにズルいです!」
いつの間にかミーコとチョコ、そしてリズムまで入ってきた。
その夜は代わる代わる、4人の猫耳をなでなでモフモフして過ごした。
あっ、結局イオリさんの『キーッ』の理由は聞けずじまいだった――
*****
翌朝の朝食で、
「シフォンもおにいちゃんの部屋に来ればよかったのにー」
リズムが昨夜のなでなで大会のことをシフォンに話した。すると彼女は、
「いや、私は……」と言ってトーラをちらっと見た。
トーラは口をへの字にして照れている。
ええっ? この2人いつの間にー!?
お前らがくっついたら完璧に姉さん女房じゃん! ……あれ? ちがうのか?
「なあリズム、シフォンは本当は何歳なんだ?」
僕はリズムに耳打ちして聞いた。
「ゴホン!」
シフォンとイオリさんに睨まれてしまった。
朝食後、各自の装備を調え6人そろって家を出る。
いよいよ魔王討伐隊の出発だ!




