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イオリさん。
「はじめまして吉原健太さん。私はあなたのナビゲーターを務めさせていただきます――」
猫耳お姉さんはそこまで言って固まった。
僕が『?』という顔をして待っていると、お姉さんが口をぱくぱくさせて合図してきた。
口を読めと言うことだろうか?
えーと、『な』『ま』『え』『を』『き』……
名前を決めろと言っているようだ。
「僕が決めるの? あなたの名前を?」
猫耳お姉さんが『そうです』と口をぱくぱくして伝えてきた。
この世界には独自のルールが存在しているらしい。
僕は市役所の受付のあの娘を思い浮かべていた。
そう……
「キミは伊織さんだ!」
「私はイオリです。よろしくお願いします!」
と言って、僕の両手を握って握手してくれた。
推定Fカップの胸がぷるんと震えた。
僕は背徳感に襲われた――