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魔王討伐隊結成集会

 『もふもふの町』中央広場――


 魔王討伐隊の結成セレモニーが行われていた。

 広場にはこの町の住人が集まっている。僕には勇者として、皆に伝えなければならないことがあった。


「この町に暮らしている皆は元は人に飼われていた猫たちだ。辛いことも悲しいこともあったろう。しかし楽しい思い出も沢山あるはずだ。一方、猫達にとって厳しい社会の中で受け入れられず、人に飼われることもなく命を失った無数の仲間もいることを忘れてはならない。これを人間である僕がそう言うのはおこがましいかもしれない。でも、僕にとっては君たちは仲間なんだ。その仲間の苦しみや悲しみを見過ごすわけにはいかない。今、彼らは怨念の塊『魔王』となってこの世界を滅ぼそうとしている。我々は魔王を討伐し、彼らを悲しみの世界から解放させる。それは同時にこの世界をリセットする…… つまりはこの町が消滅することになるかも知れない…… それでも…… いいだろうか?」


 中央広場の群衆は静まりかえる。


「私は勇者様に賛同しますよ」

 アイテム屋の店主プーニャンが言った。


「私は消えるのは怖いけど…… 勇者様がそう言うならそれがきっと正しい道なんだと思います」

 喫茶店の白猫ウエイトレスが言った。


「勇者様! 戦勝祝いの食材の調達は任せてください!」

 ブルーな目をした肉屋の店主が言った。


 やがて群衆のあちらこちらから賛同の声が上がり、広場は活気にあふれた。


「それともう一つ承諾してもらいたいことがある。魔王討伐には犬耳軍団にも協力を要請しているんだ。皆が宿敵とよぶ犬耳達だが、彼らも立場は我々と同じだ。共に協力して不幸な怨念の塊『魔王』を討伐し、この世界に平穏を取り戻したいと願っている。いいだろうか?」


 再び中央広場が静まりかえる。


 やがてざわざわし始める。


「それはさすがに……」

「我々が犬耳にどれほど酷い目に遭わされてきたかご存じないのか?」

「何かと目の敵にされてきた私たちの立場はどうなるの」


 シフォンが前に出てきて、


「皆の気持ちは痛いほど分かる。私も遠征隊の獲物を幾度となく横取りされた苦い経験もある。しかし私の命は勇者に…… ケンタに預けたからにはその判断を信じる。皆はどうだ?」

 

 胸に手を当ててそう言った。


 どこからともなく拍手が起こり、広場全体が拍手で包まれた。


 ホッとした表情でシフォンが僕に微笑みかける。


「では、明日の出発に備え、各自ができることをしっかり準備してくれ! この聖剣エクスカリバーと共に魔王討伐を絶対に成功させよう!」


 僕が聖剣を高く掲げると、会場は沸きに沸いた。


 その夜、イオリさんは初めて調理台に立ち、僕たちに夕食を振る舞ってくれた。

 この日のために日夜研究してくれていたらしい。肉料理をメインとして、サカナと野菜をバランス良く取り入れた豪華なメニューだった。


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