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使節団

 無線機にシフォンから連絡が入った――


『ザッ…… こちらシフォン、もふもふの町で待機中のケンタ聞こえるか? どうぞ、ザッ』


「あー、こちらケンタだ。良く聞こえるぞ-、どうぞー」


『ザッ…… 犬耳団の勇者篠原女史との交渉が成功したぞ。今本人に代わるから待っていてくれ。ザッ』


 『わんわんワールド』に使節団として向かっていたシフォンとリズムそして護衛役のトーラからの連絡だった。携帯の基地局もネットもないこの世界では、このアマチュア無線機は唯一の通信手段だ。アイテム屋の店主プーニャンに今度会ったら礼を言っておかないと……

  

『ザッ…… 篠原です。吉原君本当にいいの? 魔王討伐の権利はあなた達にあるのだけれど私たちも一緒に行ってもいいの? …………あれ? 吉原君? 壊しちゃった?』


 篠原さんが初めて無線機を扱う人にありがちな戸惑いを見せている。送信ボタンを離さないと受信状態にならないことをトーラが教えている声が聞こえる。そして『ザッ』と切れた。


「こちら『もふもふの町』吉原です。篠原さん協力ありがとうございます。一緒に魔王討伐頑張りましょう! どうぞー」


『ザッ…… 私の方としては嬉しい限りなのだけど…… 魔王討伐の後、私たちの町同様にあなた達の町も無事であるかどうか分からなくなるけれど…… それでもいいの? ザッ』


「こちら吉原。……お心遣いありがとうございます。その件に関しては僕も調べてみましたが、結局この世界の誰も真実が分からないんです。やってみないと分からないというか…… 何しろ前回の魔王討伐から6年、それ以前の記憶は町の住人もあやふやで…… でも10年前に現世で死んだ実家の飼い猫が今でも元気に暮らしていることは事実なわけで…… 篠原さんはその辺りの情報はお持ちですか? どうぞー」


『ザッ…… すまないケンタ…… ザッ…… 電池がきれ…… ザッ……』


 最後はシフォンの声で通信が途絶えた。


 電池切れのようだ。


 クルクル回す充電器は2時間ぐらい回さないとならないので今夜はここまでだな。


 ソファーテーブルに無線機を置き、僕は一息つく。


 隣ではチョコとミーコが五目並べで遊んでいる。4歳年上のミーコが有利と思いきや、チョコもなかなか頭が良いようで勝負は互角のようだ。一般的に猫は多動傾向があると思われがちだが、獲物を狙う猫の集中力は我々人間も脱帽するね。2人は盤面に一点集中状態だった。


 5回目の対戦はミーコの勝ち。3勝2敗で辛うじて年上の威厳を保てたようだ。


 猫時代の名残か、2人は猫耳と頭を手で毛繕いを始めた。


 僕はこの世界でこうしてのんびり暮らしていくのも悪くないと思っていた。しかしそれはこの世界の崩壊を待つだけの日々なのだ。


「チョコ、ミーコ。ここの生活は楽しかったか?」


 2人は毛繕いを中断し、顔を見合わせた。そして2人同時に――


「はい!」と、笑顔で答えてくれた。

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