武器ソムリエのいる店
『もふもふの町』近くの森を半壊させてしまった僕は、その後聖剣エクスカリバーの威力をセーブする特訓を積んだもののあまりうまくいかなかった。聖剣はその名の通り聖なる剣。勇者である僕が本当に必要な時に最後の手段として使用するべき剣なのであろう。
というわけで、僕らは武器屋に来ていた。ここは武器ソムリエのいる店。1万5千円払えばその人にピッタリの武器を選んでくれる。もちろん武器代金は別途だ。自分は勇者だから優待価格とかないのかなと言ったらシフォンに「勇者らしくない」と窘められたので正規の値段で我慢することにした。
「いらっしゃいませ勇者様。そろそろ当店においでになるのではと思っておりました」
「いやぁ、前回はお金が足りなくて何も買えなかったからな。今日はちゃんとお金があるから安心して! さあ、僕にピッタリな武器を選んでくれ!」
武器ソムリエの才能をもつ店主が、僕の身体をあちこち触れながら調べ始める。筋肉の付き方からその人の戦闘スタイルからクセまで見抜けるそうだ。
「ふーむ、勇者様は類いまれな素質をお持ちのようで……」
と気になる言葉を言い残し、店主は店の奥の倉庫へと入っていった。
しばらくすると幅40センチぐらいの小さな木箱を持ってきた。
「こちらの品が最も切れ味も良く、お勧め品となりますが……」
「おお、ありがとう。これが僕の…… 包丁か……」
確かに切れ味が良さそうな刺身包丁だ。
シフォンとトーラが口を押さえて『くくくっ』と笑っているようだが――
後でお仕置きをしてやる!
ん? ビックリするほど手になじむぞ!
さすがは武器ソムリエの見立ては狂いがない!
「ありがとう。聖剣と二刀流で使ってみるよ。あとこの子の武器も選んで欲しいのだが」
「えっ? わたし?」
チョコの両肩に手を乗せ、前に押し出す。
チョコの戦闘スタイルだともっと小柄な武器の方が合いそうな感じがするからこの機会に見てもらおうと思ったのだ。
店主はチョコの身体も一通り観察し、
「ふむふむ、この娘さんは近接攻撃が得意ですね。今お使いの長剣では手に余ってしまうでしょうね」
と言って店の奥の倉庫に行き、ごそごそ探し物を始めた。
「私の分のお金もあるの? 大丈夫?」
「ああ任せとけ! その代わり明日の食事当番代わってくれ」
小声で話す僕とチョコの会話を他のメンバーがジト目でみているが気にしない。
パーティーメンバーが6人揃い、それなりに収入もアップしているのだ。まあ、今日の狩りは不調だったのだが……
「これなどはいかがでしょう?」
店主が運んできた武器は、両手両足にそれぞれ装着する、熊手のような三本のかぎ爪がついた武器だった。実際に装着してみると、見るからに戦闘力が高そうだ。
かぎ爪の先端は普段は収納されており、手足を振ると『シャキーン!』と飛び出す仕組み。
「かっ、かっこいいじゃん!」
僕が感動しているとチョコも「えへへ……」とうれしそうな表情を見せた。
「まだ隠し機能があるんですよ。そちらの攻撃型魔法使いの方に『ファイヤー』の呪文をかけていただくと、3分間限定ですが威力が3倍となる魔導具が内蔵されています」
「えっ? マジ?」
店主の言葉に僕のテンションがさらにUPした。
「ミーコ、ちょっとやってみて」
僕がミーコに指示すると、無表情のミーコが……
「ファイヤー」
「うわっ、おまえ僕に向けて火を吐くなよ! なにやってんの!」
無表情のまま僕に向けて小さなファイヤーを仕掛けてきた。
こわっ!
「間違えました…… ファイヤー」
引き続き無表情で今度は間違えることなくチョコの武装にかけた。
「うほぉぉぉぉぉ!」
チョコの手足から炎がメラメラとわき上がり、手足をびゅんと動かすと炎が吹き出した。
これでチーム力が格段にアップしたと満足している僕の隣でミーコは不満そうな顔をしていた。
シフォンとトーラはそんな僕らをあきれ顔で見てきたけど…… なんで?




