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聖剣エクスカリバーの威力

「あーあー、チョコきこえますかー? どうぞー」


『ザッ…… あーケンちゃん、聞こえてるよー……… あれ? もしもーし、どうしたのー?』


 パーティー全員で町から30分ほど歩いた森の中へやってきた。

 新たに入手したアイテム『アマチュア無線機』の実用テストも兼ねて狩りをしているのだが……


『あれー、電池切れかなぁ…… ザッ』


 ようやくチョコの無線機からの送信が切れた。


「おいチョコ、話が終わったら送信ボタンから手を離さないと僕からの電波が受信できないぞ。どうぞ-」


『ザッ…… あーごめんごめん。忘れていたよー ザッ』


『ザッ…… あーこちらトーラ。中型モンスターを多数発見。どーぞ ザッ』


「了解、合図を待て、以上」


『ザッ…… こちらシフォンだが、大型モンスターを2頭発見したがどうする? かなりどう猛なやつだぞ? ザッ』


「ああ、いーよいーよ。全部こちらに誘導して。合図を待て。以上」


 僕とリズムがいるこの場所は森の中でも開けた空間。直径20メートルほどの円形の広場のようになっている。この場所にモンスターを追い込み、一気に仕留める作戦だ。


「この聖剣エクスカリバーの威力を見せつけてやるぜ!!」


 シフォン直伝の斜め構えをとると、リズムが「おにいちゃんかっこいいー」とパチパチ拍手してくれた。


 最近はこんなノリで自分でも調子に乗っている自覚はあるのだが…… 勇者なんだから仕方がない。たとえ大失敗をする前のフラグだとしてもこればかりはどうしようもないのだ。


『ザッ…… あーケンちゃん聞こえますかー、こちらチョコとミーコでーす。中型モンスターを多数発見。ラクダ型だけど20頭ぐらいいるよー ザッ』


「あー了解了解。では作戦を開始する! 各自モンスターをこちらへ追い込んでくれ、以上」


 僕はヘッドセットマイクをOFFにして待機する。


『ドドドドド………』


 大小様々なモンスターの足音が聞こえる。


 やがてそれが地響きのように唸りを上げ……


『ウゴォォォォォォォ!』


 来た! チョコの言っていたラクダ型モンスターが突進してきた。


 まずは2頭同時に! その後ろに更に10数頭!


 僕は聖剣エクスカリバーを斜めに構え、足をグッと踏みしめ――

『ブシュルル――!』

 ――ようとした地面にラクダ型モンスターの唾液がべっとり散布され、ズリッと滑ってしまう。


「あ――――――っ!」


 滑った拍子に聖剣エクスカリバーが僕の手を離れ空中に!


 僕は地面に倒れた状態で手を伸ばすが届くわけがない。


 哀れ聖剣は横から来た恐竜型大型モンスターにパクリと咥えられた。


 更に僕自身はラクダ型モンスターに踏まれてしまいそうになるが、それはリズムのドーム型バリヤーのおかげて九死に一生を得た。


「せ、聖剣が――!」


 バリヤーに守られながら情けない声をあげる僕。


 そこへヒーローのように駆けつけたトーラがジャンプ!


 恐竜型モンスターの鼻先にパンチと回転キックを食らわせ、聖剣を離させる。


「マスター、大丈夫ですか?」


「お、おう。トーラ良くやったぞ!」


 僕は顔を真っ赤にしながら聖剣を受け取る。

 もういっそのことお前が勇者になれよと思ったが、それを言ったら全てが終わるような気がして我慢した。


 聖剣はラクダ型と恐竜型両方の唾液が混じり合ってぬるぬるしている。


 広場にはリズムとトーラのみ。あとはモンスターだらけだ。


「リズム! トーラをバリヤーで守ってやれ!」


 と僕は指示をして――


「エクスカリバァァァァ――――!」


 怒りと恥ずかしさでどうかなりそうな気持ちを込めて、聖剣エクスカリバーを振った。


『ズゴゴゴゴゴゴゴゴ――――ン!』


 強烈な風を伴う電撃のような衝撃が広がり、一瞬にしてモンスターを殲滅した。


 半径50メートルの範囲の木々は大小を問わず全てが根元からなぎ払われている。


「…………やばい、やり過ぎた?」


 遠くの方から「なな、なにが起こったんだこれは?」というシフォンの叫び声。

 更には「うおー、すごいすごいすごい!」というチョコの声。

 一緒にいるはずのミーコもきっと無事だろう。


「マスター、力の加減を覚えてもらわないと肉も装飾品も獲れないぞ」


 トーラが僕の肩をポンと叩いて言った。


 聖剣エクスカリバーの威力は想像を遙かに超えたレベルだった。



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