酔っ払ったかな?
その日僕らは『もふもふの町』中央広場近くの酒場兼大衆食堂で開かれた戦勝パーティーに参加したため、自宅に帰った頃には夜中になっていた。
チョコ、ミーコ、リズムの3人を川の字になって寝かしつけ、大人たちはリビングで二次会を開いている。なお、この世界での大人は18歳以上と定義することにした。猫たちの成長はちょっと早めだからね。
「聖剣を手にしたからには魔王討伐隊の結成もいよいよ本格的始動だな」
シフォンが酒をあおりながら言った。
「マスターがその気なら明日にでも出られますよ、プハー」
トーラが炭酸飲料を一気飲みして威勢のいいことを言った。
彼は酒を飲まない主義らしい。ストイックな男なのだ。
「聖剣って本当に存在したんですね-、ビックリです」
何でも知っていると思っていたイオリさんが意外な反応を見せた。
僕はというと…… 魔王討伐について良からぬ情報を聞いてしまったので躊躇している。
「仮にこの剣を使い魔王を討伐したとする。そうしたらこの世界はリセットされると聞いたのだけれど…… 本当でしょうか?」
僕は隣で酒をぐびぐび飲んでいるイオリさんに尋ねた。
イオリさんはしばらく考え込んでいたが、
「実は私にもよく分からないんです。私は吉原さんのナビゲーター役としてこの世界の創造主に召喚されましたので…… この世界の過去の事例については知らされていないんです……」
「えっ? そうなんですか。イオリさんは何でも知っていると思っていましたよ」
「そんなことありませんよ。私自身のこともよく分かっていませんから。吉原さんが他の女の子とイチャイチャしているとなぜ怒りがこみ上げてくるかも分からないんです……」
……それは迷惑だから今すぐ解明してもらいたい!
「プハーッ、私が思うにその話は眉唾物だ。魔王を倒したら世界がリセットされる? だったらこの世界は6年前にリセットされ、私たちも6年前に誕生したことになるだろう? しかし私には先代の勇者様と共に暮らした何年分もの記憶があるぞ?」
すでに7杯目の酒を飲み干したシフォンが言った。
彼女はトーラ同様ストイックなイメージがあったのだが、今ではすっかり豪快なお姉さんになってしまった。それだけ僕らに打ち解けてくれたということなのだろう。
「シフォンの勇者と共に暮らしたその記憶は何年分なんだ?」
「うーん、何年分かなぁ…… それは思い出せないな。酔っ払ったかな? はははは」
ダメだこりゃ…… 酔っ払いに真剣な話をしても埒があかない。




