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きみが生きていてくれさえすれば……

 猫耳軍団のリーダーを集めて緊急会議を行う。


「――というわけで、相手は5人程度のチームで仕掛けてくるので、こちらも同じくチームを組んで対応します。あくまで即席のチームですが大丈夫、スピード勝負ではこちらが絶対的に有利ですから」


 僕が作戦の概要を説明すると、リーダーたちは全員が大きく頷いてくれた。


「さすがはケンタだ。一つ一つの言葉に力強さを感じたぞ!」


 シフォンが肩をポンと叩き褒めてくれた。



 *****



 双方が横一直線の陣形で向かい合い、その中央に僕と篠原さんが立っている。


 100メートル先の篠原さんが手を上げるのを合図に――


「ウオォォォォォォ――――!」


 犬耳軍団が突進してくる。


 一方我ら猫耳軍団は左右に展開し――


 リズムが『メガバリヤー!』と叫び町側に高さ4メートル幅200メートルの壁を形成する。


 同時に『テレボート!』と叫びミーコが――


 相手陣地の背後に移動し――


 『メガファイヤー――――!』


 高さ4メートル幅200メートルの炎の壁を形成した。 


 回復系魔法使いのリズムのバリヤは本来は敵の攻撃から身を守る技だが、バリヤの壁は相手を封じ込める用途にも使える。これはモンスターの群れを囲い込む作戦にて実証済みだ。


 前後を幅200メートルの壁に挟まれた犬耳軍団はパニックになりかけたが篠原さんの声で統制のある動きに戻っている。


 左右に展開済みの猫耳軍団は、その動きに釣られるように動いた犬耳軍団との交戦に入っていた。統制のとれた犬耳軍団に対して即席の猫耳軍団チームは押され気味だが、徐々に狭められていくバリヤと炎の壁によって互角の戦いになりつつある。


 僕はシフォンとミーコと共に中央に残り、戦況が不利なところに行って加勢する。

 後ろに位置するリズムの護衛役も兼ねて……


 …………


 …………!


 リズムの対面にいるミーコには……


 護衛がいない!


「チョコ! ミーコの護衛に付いてくれ!」


「はいっ!」


 チョコがミーコに向かって走る。


 チョコの足では数秒もかからないはず。


 大丈夫! 何事もなく間に合うはず!


 その僕の思いも虚しくボーガンのような武器でミーコを狙う犬耳戦闘員の姿が!


「ミーコ――! 避けろぉぉぉ――――!」


 ミーコに向けて『シャッ』っと矢が放たれる――


 きれいな放物線を描いた矢が――


 ミーコの左肩に突き刺さった。


 その瞬間、ミーコの魔法は解けるがすぐに炎の壁を出現させる。


 その僅かな隙をついて5人の犬耳戦闘員が壁の向こうへ移動。


 一方、チョコは犬耳戦闘員4人の抵抗を受け苦戦中。


 僕はチョコの加勢に到着して、ミーコの護衛に行かせるが間に合わない!


「ミーコ! 火炎魔法を解除して戦線を離脱しろ!」


 しかしミーコに僕の指示は聞こえていない。


 いや、聞こえていた?


 ミーコは僕に向かって何か言葉を伝えようと口を動かして――


 苦しそうな表情を一転させて最後にニコリと笑った―― 


 すでにミーコの間近まで迫った犬耳戦闘員は長剣を振りかざし――


 要らない要らない要らない、ここでそんな強がりも優しさも心遣いも要らない。


 僕は……


 君が生きていてくれたら……


 それで充分なんだ……


 長剣がミーコに向けて振り下ろされる。


「ミーコ! 逃げてくれぇぇぇ!」




『バキィ――――ン!!!!!』




 黒い人影が宙に舞い、長剣を持った犬耳戦闘員を蹴り飛ばし――


 トルネードの回転の様に裏拳、回し蹴り、エルボーを炸裂させ――


『ズザッ………』


 地面に足を着いて構えを解いた。




 一瞬のうちに5人の犬耳戦闘員を無力化したその人物は……


「トーラ、来てくれたんだー!」


 4メートルの炎の壁を飛び越えたチョコが抱きついた。


「待たせてしまったな二人とも」


 その声の主は、茶と黒の髪をなびかせた、筋肉隆々の鍛え上げられた身体のトーラだった。身長は優に180センチはある大柄な男。肩に斜めがけしている長剣は使わずとも充分強そうだった。


 ミーコもホッとした表情で炎の壁を維持した。


 やがて戦闘は、我が猫耳軍の勝利に終わった。

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