魔王の正体
犬耳軍団代表の勇者篠原雪子さんが教えてくれた内容を要約すると次の通りだ――
魔王とは人間に捨てられたり飼われることなく命を落とした不幸な動物たちの怨念の集合体である。大きくなりすぎる前に討伐しなければこの世界が滅びてしまう。現在の魔王は6年目に突入しており、相当大きくなっているらしい。
この世界で猫耳・犬耳人間として暮らしている元ペットたちは、ここでの生を全うすることで再び現世で生まれ変わることができる。しかし魔王が大きくなりすぎた現在では、この世界の『死』は魂の消滅ということになる。
魔王を討伐した種族は優先的に生まれ変わりのルートを確保できるので、この世界では種族間での争いが絶えないということだ。
「つまり、魔王の存在がペットたちの生まれ変わりルートを塞いでしまっていると?」
「そういうことになるわね。あなた若いだけあって理解力があるわね」
なんだか若さだけが取り柄って言われているみたいで喜べない。
「犬や猫の他にもペット動物はいろいろいるけれど、それぞれに『町』が存在するの?」
「私が知る限りではハムスター・ウサギ・カメ・ヘビ・ネズミ・カエルの町がありましてよ。ああ、でも町と言うより集落に近い規模でしたが……」
なるほど、ペット人口に比例しているという訳か。
「もしかして、それらの集落を襲ってきました?」
「私を鬼畜女と誤解していますか? 弱小集落は襲うまでもなく私たちの邪魔はしないでしょうから放っておきますわよ」
「僕らも邪魔しませんから放って置いてください」
「えっ? 邪魔しませんの? それではあなたの大好きな猫たちが生まれ変われませんよ?」
「僕たち、楽しく暮らしていますので生まれ変わりとか必要ないので!」
「え――――!?」
篠原さんの声が『もふもふの町』の外壁に反射してこだました。
「まさか、そんな…… そこまで生きる意欲のない人が勇者だなんて……」
篠原さんがとぼとぼと犬耳軍団へ戻っていく。
「魔王を討伐したらこの世界がリセットされるというのに――」
……。
……えっ?
僕は篠原さんを呼び止めて、宣戦布告を行った――




