おにいちゃん
大量のキラキラを全身に浴びてしまった僕は家に戻るとすぐにシャワーで流した。
一応補足説明をしておくが『キラキラ』とはモンスターから出る赤いアレである。
温かなシャワーですっかりリラックスできた僕は、しばらくソファーで寛いでいた。
小一時間経った頃、シフォンとリズムが戻ってきた。
「ケンタ、これがモンスター肉の売り上げ金だ。私は着替えてくるからまたあとで」
シフォンは僕に集金袋を渡すとすぐに部屋に戻っていった。
中身を確認すると、4万8千円が入っていた。
5人で山分けすると大した額にはならないが……
「今日はチョコと決闘ごっこしたり腕自慢大会をしたりして半日を無駄にしてしまったからなぁ」
僕はソファーにもたれかかり、一人で反省した。
リズムは僕の隣にチョコンと座り、手の平の上に魔法で次々と小さなオブジェのような物を出現させていた。あやとり遊びみたいなものかな? 楽しそうに遊んでいるリズムを見ていると僕自身も何だか楽しくなってきた。
「なあリズム、それ僕にもできるかな?」
「じゃあ、リーダーもこうやって手を開いてみて!」
「あっ、その前にリズムも『リーダー』という呼び方はもう止めてもらっていいかな?」
「じゃあ、何て?」
「チョコは『ケンちゃん』、ミーコは『ケンタさん』、イオリさんは『吉原さん』、シフォンは『ケンタ』と呼ぶが、それとは被らない方がいいぞ」
「ええっ? 被っちゃいけないの?」
目をまん丸に開けて僕の顔を見てくる。
か、可愛い!
「じゃあ、何て呼べば……?」
おろおろしながら訊いてきた。
「――――おにいちゃん…… はどうだ?」
「うん、わかった!」
「えっ? いいの?」
「うん。いいよおにいちゃん!」
「うほーっ、マジィ?」
「じゃあおにいちゃん、手の平を広げてみて」
「よ、よし、こうか?」
リズムの手の平に形成された青白く光るポリゴンCGのような馬が僕の手の平に乗ってきた。
ちゃんと馬の動きまで再現できるとは魔法ってすごい!
しばらくすると、スッと消失した。
「リズムは天才だなぁ。偉いぞー」
猫耳をモフモフしながら撫でてあげた。
「おにいちゃん大好き-」
リズムは僕に抱きついてきた。
「ケ、ケンちゃん! なにやっているの?」
「ケンタさんは新たな次元の扉を開いてしまいました……」
いつの間にか帰ってきていたチョコとミーコに引かれてしまった。
「ぼっ、僕はロリコンじゃないからなー、絶対違うからなー」
僕はそそくさと部屋に戻るのであった。




