新たなメンバーが2人!
『もふもふの町』中央広場近くの酒場兼大衆食堂――
「では、遠征の成功を祝って、乾杯!」
「カンバーイ!」
『もふもふの町』酒場兼大衆食堂では遠征に参加したメンバー総勢2百名程度で祝賀会が開催されていた。遠征リーダーのシフォンを始め、行商人代表のあいさつやら地元有力者のねぎらいの言葉など、この世界の祝賀会も現世とあまり変わらない感じで進んでいった。
皆お堅いお話は不得手らしく、すでに肉や魚を勝手気ままに食べ始めている。
立食パーティー形式のため、あちらこちらで談笑も始まっていた。
僕たち3人も顔を見合わせて『もう食べよっか?』という感じで皿に盛っていく。
チョコは肉が好物のようで、皿はほぼ茶色系で埋まっている。
ミーコは魚か…… 『黄金の皿おかか味』が好きだったもんな!
僕は栄養バランスを考えてちゃんと盛っている。だって人間だもの。
「お前らもちゃんと野菜食べろ! ここでは人間なんだろ?」
「はーい」
2人は生返事だった。
「やあやあ勇者様ご一行、こんな隅っこで何をしておられる?」
スピーチを終えたシフォンがさわやかな笑顔で寄ってきた。
「ケンちゃんはねー、隅っこが大好きなんだよー」
「おいチョコ、人を社会からの脱落者みたいな言い方するな!」
まあ、出世街道からは脱落していたけど……
というか乗ったこともなかったな。
「何を言っておられる、勇者様はこの町の中心にいてもらわねば…… ほら、今回の戦いのように」
シフォンは僕のことを買いかぶっているようだが……
「今回はたまたまうまくいっただけですよ」
「そんなことない…… ケンタさんは頼りになります!」
ミーコが僕を持ち上げてきた。
この娘、最近になって少しずつ積極的になってきたな。良い傾向だ。
「あれ? いつも一緒のリズムは?」
僕がきょろきょろしながら問うと……
「実はそのことで話があるのだが――」
シフォンはリズムを手招きしている。
リズムは珍しくおずおずと恥ずかしがりながら近づいてくる。
「彼女を君たちのパーティーに入れてくれないだろうか?」
「ええっ?」
僕ら3人は一様に驚きの声を上げた。
「パーティーに回復系魔法使いがいると活動範囲が広がって良いぞ!」
シフォンはそう言うが……
「確かにこちらからお願いしたいところだけど、それではシフォンさんのパーティーが困るんじゃないですか?」
するとシフォンはちらっと後ろに視線を送る。
その先には男性猫耳サブリーダー達の集団がある。
「それは残された我々が考えることであって、勇者様が気にすることではない」
「ついでにシフォンも来ちゃいなよー」
チョコが誘う。
「うん…… シフォンも来てくれたら嬉しい……」
ミーコも積極的だ!
「隊長ー……」
リズムは大きな瞳をキラキラさせて懇願する。
「いや…… しかし…… それはさすがに……」
シフォンは困り顔だが満更でもない表情だ。
「そもそもなぜ僕たちのパーティーにリズムを?」
僕は率直に訊いた。
「ほら、我々のパーティーは私とリズム以外は全員男だろう? とにかく男はがさつなのだ。気配りが足りないのだ。すぐに下ネタ系の話題で盛り上がるし、セクハラも甚だしいのだ!」
この場に居合わせた女子全員が『うんうん』と頷いた。
「素晴らしいことです! これで吉原さんのセクハラも収まるかも知れませんね!」
「えっ? イオリさんいつからいたの? それに僕はセクハラなんて……」
イオリさんは僕と目を合わすことなく不気味な笑顔のままだった。




