わんわんワールド
トサカ竜の狩りで成果を上げた遠征隊は、次の目的地に向かっていた。
道中、豊かな町並みが見えた。
「あそこに寄って補給とかしないのか?」
リズムに訊いた。
「面白いことを言いますね勇者様。あの町は『わんわんワールド』。私たちの宿命の敵ですよ?」
「えっ、そうなの? 犬と猫ってそんなに相性悪かった?」
「相性ではありません。ペット人口が犬と猫では均衡していますよね。だから『もふもふの町』と『わんわんワールド』の人口も均衡しているのです」
「二大勢力ということか…… それで対立してるのか?」
「はい。どちらの勇者が魔王を倒すかは死活問題なのです!」
「死活問題とは?」
「さて? 私には分かりませんが、そういうふうに聞いています」
「…………」
遠征から戻ったらイオリさんに訊いてみよう。
それにしても『もふもふの町』以外にも色んな町が存在するとはな……
それぞれの町に僕と同じような『勇者』がいるということだ。
彼らといつか戦うことになるんだろうか――
*****
遠征隊はその後も一週間をかけて各地を巡り、充分な物資の獲得に成功した。
僕たち3人も戦闘に参加し、チームワークを磨く絶好の機会となった。
特にミーコの火炎魔法はメガファイヤーよりも上級のギガファイヤーを習得できたことが大きな収穫だ。ちなみに更に上級のテラファイヤーにもなると魔王と互角に戦えるらしい。まあ、それはまだまだ先の話だ。
僕とチョコの剣術にも磨きがかかってきた。夜な夜な行われていたミーコとリズムの魔法特訓が良い刺激となり、僕らも剣術の練習をしてきたのだ。
個人の成長はチームにとっても素晴らしい効果を発揮してくれる。チーム力は個人能力の足し算ではなくてかけ算なんだ。そんなことをこの遠征から実感することができたのも収穫だ。
そして再び『わんわんワールド』の近くにさしかかった――




