トーラを忘れていました!
最初の目的地の『がれき広場』――
草原にボーリングの玉ぐらいの大きさの岩が転々と転がっている。
この一帯にはトサカを付けたダチョウ型モンスター『トサカ竜』が生息している。
トサカ竜のトサカはコラーゲンが豊富で女性に人気の食材らしい。
「ウホォォォー、コラーゲン!」
チョコが興奮しているが……
お前にはまだ必要ないだろ。
胸が大きくなるとか勘違いしているのでは?
そんなこと口が裂けても言わないけど。
僕も成長しているのだ。
「勇者様一行は初戦だからじっくり観察していてくれ。いきなり集団戦では同士討ちの危険もあるからな。まあ、報酬は均等に分けるから安心して見ていてくれ。じゃあ、失敬!」
報酬は均等割とか言われて『はいそうですか』と答える日本人はいないだろう。
しかし今回はその言葉に甘えることにした。
シフォンがお得意のVサインとウインクをビシッと決めて格好良く去って行った。
チョコとミーコは『わぁー』とか相変わらずの反応だ。
猫耳戦士達が一斉にトサカ竜に飛びかかる……
と思いきや、これは……
力のある戦士は次々にモンスターを仕留めていくが……
そうでない者は反撃されていたり……
危うく同士討ちになるところだったり……
これがシフォンの言う『集団戦』なのか?
そう言えば、我が家の猫たちもそうだった。チョコとミーコが遊んでいるときはトーラは見ているだけ。ミーコとトーラが遊びはじめると途端にチョコは見ているだけに…… そんな風に常に一対一の関係性しか持てていなかった。これって、うちの猫だけじゃなかったんだ!
…………
…………
………!
「あ――――! トーラはどうした? トーラをまだ見ていないぞ!」
我が家のもう一匹の猫、トラ猫のトーラの存在をすっかり忘れていた!
「あー、トーラね…… 私たちと一緒にこの世界に来たんだけど……」
チョコがあきれ顔でそう言い、
「ケンタさんの役に立つ男になってやるーって言って、飛び出しました……」
同じくあきれ顔でミーコが続けた。
「男って、本当に勝手な生き物! もう勝手にやってよって感じよね?」
「その通りです……!」
そんなこと僕の前で言われても……




